”働く者の立場に立つ”と唱える政党が実際には必ずしも”働く者”の為になることをしないように、”平和”を唱える政党が必ずしも平和をもたらさないように、
また、”専門の運用チームが個別投資銘柄の選定、投資比率の決定等を行ない、中長期的にわが国株式市場全体のパフォーマンスを上回る投資成果を目指す”と宣伝するアクティブファンドが実際に期待に応えてくれることが稀なように、
”立派な能書き”は必ずしも”期待する結果”にはつながらない。
美辞麗句の”能書き”よりも、事実の積み重ねで真贋を見極めていくことが重要。
今回は、”「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される新しい株価指数”と立派な能書きを掲げる”JPX日経400”が、その美辞麗句に対して実際のところは投資対象としてどうなのか、構成銘柄に分け入って検討してみたい。
(JPX日経400関連の過去の日記)
〇日経400が一人負け状態でメシウマ
〇日経400の哀れな末路を占う
〇日経400売り-TOPIX買いの裁定取引
1.”JPX日経400”の立派な能書き
日本取引所グループのHPには、”JPX日経インデックス400の狙い”として以下の記載がある。
資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした、「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される新しい株価指数を創生します。これにより、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業価値向上を促し、株式市場の活性化を図ります。
実に”立派な能書き”である。
2.具体的な算定方法
では、”立派な能書き”に対して、具体的な指標の算定方法はというと、
同じく日本取引所グループのHPによると、概略以下のとおり。
〇構成銘柄数:400銘柄
〇銘柄選定の母集団:東証上場銘柄 (市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ)
〇銘柄選定・入替方法:
(1)スクリーニング
上場3年未満、3期営業または最終赤字などの企業を除いて、売買代金・時価総額の上位1000銘柄を選定。
(2)定量的スコアリング
上記1000銘柄を対象にスコアリング
・3年平均ROE(項目のウェイト40%)
・3年累積営業利益(項目のウェイト40%)
・選定基準日の時価総額(項目のウェイト20%)
(3)定性的な要素による加点
・独立した2人以上の社外取締役
・IFRS(国際会計基準)の採用(または採用決定)
・決算情報英文資料開示
(4)構成銘柄の決定
スコアの高い順に400銘柄を選定(ただし前年度採用銘柄は440位以内であれば継続採用)
〇銘柄入替
毎年6月最終営業日を選定基準日とし、毎年8月第5営業日に入替銘柄を公表のうえ、毎年8月最終営業日に銘柄定期入替を実施。
〇算出方法:浮動株調整時価総額加重型(1.5%キャップ付き)
ROEを選定基準に入れているというようなことが特徴として取り上げられることが多いけれど、
上記を総体的に見ると、
・会社の規模が大きい企業が選ばれやすい
・業績が好調な企業が選ばれやすい
・株価が好調な企業が選ばれやすい
といった特徴を有することが分かる。
基本的に、”過去3年好調だった企業は今後も好調だろう”という考えに立つ順張り投資。
一方の指数算定上の大きな特徴として押さえておきたいのは、
・時価総額加重型
・1.5%キャップ付き(6月末のデータで8月にリバランス)
1.5%のキャップがあることで、時価総額上位銘柄については相対的に株価好調の銘柄はウェイトの下方修正があり、株価不調の銘柄はウェイトの上方修正が年1回行われる。この部分だけは逆張り投資的。
また、時価総額加重型なので、基本的に時価総額の大きな銘柄のウェイトが高くなる。
そのため、同じく時価総額加重型のTOPIXとほぼ同様の動きとなることが宿命づけられている。”TOPIXを基本に若干のアレンジをした指標がJPX日経400”と考えておけば理解の助けになる。
これで、最初に取り上げた”立派な能書き”を実現する指標となっているものだろうか?(私は大いに懐疑的であるが、ひとまず置いておいて)
3.具体の構成銘柄とウェイト
次に、実際にどのような銘柄が選定されていて、どのようなウェイトとなっているのか、最も肝心なところを見てみたい。
日本取引所グループのHPに2015年6月末時点の構成銘柄とウェイトが掲載されている。
これをもとに、ウェイト順に並べなおしたのが以下の一覧表である。
ちなみに、”★”を打っている銘柄は、1.5%のキャップでウェイトが抑えられている銘柄(毎年8月にリバランス)。
全体で399銘柄なのは、スターバックスが上場廃止で除外されたため(8月に改めて400銘柄選定)。
これを見ると、例えば、JPX日経400のETFを6月末に100万円分買うと、
その中には、三菱UFJFGが17,278円、KDDIが17,203円、NTTが16,095円・・・・ニューフレアテクノロジーが46円含まれていることが分かる。
上位100銘柄までで72%、200銘柄までで89%、300銘柄までで97%のウェイトを占めている。
下位100銘柄のウェイトは合計3%程度しかなく、指数に与える影響は軽微。
ちょっと長くなったので、結論的なところにはたどり着いていないけれども、本日はここまでにして、
次回は、不動のベンチマークである”TOPIX”との差異について整理してみたい。