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カテゴリ:へそまがり流投資手法
ㅤ今回は、前回の日記(EB債でエゲツナク稼ぐ証券会社)で予告した話題を。
ㅤ先週は、中小型株を中心に少し株価が下がりました。JASDAQや地方市場などを中心に、なんだか魅力的な株価まで下がってきたように感じる銘柄もあり、借金(信用買い)を増やしてでも買ってみようという気になります。 だけど、割安に見える株を借金までして買おうとしているのに、お金の貸し手から、 ”お金を貸すから株を買いなよ。買った株が横ばいか下がれば現金で返してね。株が上がったら株で返してね。” と条件を付けられたらどうでしょう。 普通の判断能力のある人なら、こんな条件の借金は絶対にしませんよね。この株は今が割安だと思うから買うのに、株価が上がったらせっかく買った株で返さなきゃならない。 だけど、こんな条件の借金をして自社株を買う人たちがいるんですね。しかも、企業価値を上げていると得意げに。それは、上場企業に巣食うROE教徒たち。 (ROE教を嗤う関連の日記) ・ROEは役立たず ・ROEは役立たず(その2) ・ROEは役立たず(その3) ・ROEは役立たず(その4) ・自社株買いは愚策-ROEは役立たず(その5) ・ROE教が蝕む日本の未来 1.リキャップCBという愚策 リキャップCBとは、CB(転換社債型新株予約権付社債)発行と自社株買いを組み合わせたスキーム。 偏屈たぬき流に要約すると、 証券会社側からの視点では、 ”お金を貸すから自社株を買いなよ。買った株が横ばいか下がれば現金で返してね。株が上がったら株で返してね。” 事業会社側からの視点では、 ”お金を借りて自社株を買うよ。買った株が横ばいか下がれば現金で返す。株が上がったら株で返すよ。” いやもう、一目見ただけで、ダメなスキームということが直感できる。 CB発行と自社株買いの組み合わせというのは、最凶最悪の組み合わせだと思うんです。 まず、そもそも事業会社にとって、CB(転換社債型新株予約権付社債)というのが、筋の悪い資金調達。 以前の日記(トヨタ自動車種類株の謎 企業価値を毀損? )との繰り返しになるけれども、 将来業績が低迷して資金が必要な状況に陥った場合には、株価が低迷しているだろうから株式転換が進まず、現金で返済する必要が生じる。 逆に、業績絶好調で資金に余裕が出るだろう場合には、株価が大きく上昇しているだろうけど事前に決めた(その時点となってみれば)割安な価格で株式を発行することとなる。資金は不要なのに割安な価格での資本調達を強制される形。 よく銀行が、”晴れたときに傘を差し掛け、雨の日に取り上げる”と評されるけど、 転換社債発行というのは、まさに自ら進んでそういう状況に陥っている。 仮に自社株買いをする決断(財務面に不安が無く、かつ自社の株式が割安だと自信を持てる時だけにしてほしいものだけど、)をしたとして、 もし、その資本が必要無いなら手持ち資金で自社株買いだけ(または普通社債、銀行借り入れとの組み合わせを)すれば良いし、 もし、その資本が必要になる可能性があるなら自社株買いなどしなければ良い。 素直に見て、リキャップCB(CB発行と自社株買いの組み合わせ)なんて矛盾に満ち満ちた愚策。 2.ROE教徒を魅了するリキャップCB 事業会社にとって、またその会社の既存株主にとって愚劣な選択肢であるリキャップCBなんだけど、 ことROE教徒にとっては、魅力的に映るらしい。 ROE = 純利益/自己資本×100(%) = 1株利益/1株純資産×100(%) ”株主から預かった資産をどれだけ効率的に回しているか” と解釈できる指標であるため、株式会社または株式投資の真髄を体現する指標のように見える(実際は、分母の自己資本を小さくするという大抵の場合には意味のない裏技があるので欠陥指標なんだけど)。 このROEを高めることを至上命題と信じているのがROE教徒。最近ROE教が蔓延していて、上場会社の一部にも巣食っています。 事例を見てみましょう。 〇日本ハムによる2度目のリキャップCB ・「第三者割当による2018年満期ユーロ円建転換社債型 新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」 に関する補足資料(日本ハム、2014年3月7日) 2010年に行ったリキャップCBによってROEが改善していたけど、株価上昇でCBの株式への転換が進んでROEが低下。なので、ROEを上げるためにもう一度リキャップCBを行う。という内容。 いやー、資本の部をいじっているだけで、稼ぐ力なんて少しもついてないじゃない。証券会社を儲けさせているだけじゃん。 私は幸いにして日本ハムの株主ではないけど、こんなROEを高くすれば良い経営だと短絡して考えるROE教徒の巣食っている会社の株など買いたくないと切に思う。 だけど、この日本ハムの2度目のリキャップCBも、ROE教徒には受けが良く、 例えば、ROE教の機関誌の日経新聞では、 ・日ハム4年ぶりCB発行 300億円、調達資金で自社株買い と好意的に報じ、 さらに、こちらもROE教徒の巣食う東京証券取引所も、2016年1月発表の”第4回 企業価値向上表彰”にて、日本ハムを優秀賞に選んでいる。 ・第4回企業価値向上表彰の表彰会社の決定について(東京証券取引所、2016年1月12日) ピジョン株式会社、日本ハム株式会社及びカシオ計算機株式会社は、いずれも資本コストを上回る企業価値の創造を目指す「企業価値向上経営」を高いレベルで実践してると認められました。 とのこと。同じく優秀賞のカシオもリキャップCBを実施している。 ちなみに、この表彰の選定委員会座長は、ROE教の司教である伊藤レポートの伊藤邦雄。ROE教の司教も底が浅かった。リキャップCBでのROE上昇でも企業価値向上と見なすんですね。 と、このあたりまでが、リキャップCB全盛の時期。 だけど、ROE教徒でない者にとってありがたかったのは、このリキャップCBのあまりの愚劣さ。ROEを向上させる以外に何の価値も生み出さない。 世の多くの良識人が、リキャップCBの愚劣さに気付き警鐘を鳴らしていく。また、さらにはROE至上主義の下らなさに気付いていくんですね。 長くなったので、そのあたりのことは次回に。 ※同様の分野のランキング。優良ブログが見つかるかも。 にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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