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カテゴリ:株主優待
ㅤ前回の日記で、株の引渡しの遅延というのに巻き込まれ、取ったはずの3月末の権利が無いという異常事態に遭遇している件について書きました。
今回は、その続きです。 (前回の日記) ○南海電鉄優待権利日に証券事故発生 0.前回のおさらい (1)3月末の権利最終日(3月27日)に南海電鉄株を200株買ったので、以下が得られるはず だったのだけど、 ・議決権 ・配当 15円×200株=3,000円 ・株主優待 南海電鉄線6回乗車カード 1枚 「みさき公園」入園割引券(50%割引) 3枚 株主優待チケット(グループ施設等を優待料金で利用可) (2)株の引渡しの遅延でまさかの権利無し 証券会社から以下の趣旨の連絡。。。 ・売り手側の証券会社が株を調達できなくて、引き渡しが遅延。こういうことは、たまに有って、市場慣行として許容されてるんだよね。 ・だから悪いけど、あなたの南海電鉄の期末の株主権利等は無くなっちゃったんだ。 ・売り手側の証券会社との話し合いで、配当相当はもらえることになったけど、配当所得でなく雑所得ね。 ・議決権は無しということで。 ・それから、優待については売り手側の証券会社と協議中でなんとも言えない。決まったらお知らせするね。 (3)まるで納得できない ・日本は4日目引き渡しと余裕取ってるのに、遅延が起こることがまず納得できない。 ・最低限、顧客が損害を被らないようにしていただかないと。 優待 議決権 1.証券の受渡し遅延-フェイルという市場慣行 こういう異常事態、私自身の30年近い株式投資歴の中でも初めてのことだし、株式ブログ界隈で見たことがありません。 なので、自分の利害の問題に加え客観的にも興味深い話だと思うので、せっかくだから色々調べてみました。 証券受け渡し遅延については”フェイル”と称するらしく、 証券の決済をつかさどる日本証券クリアリング機構の説明では以下のとおりです。 ○フェイル(証券決済未了) (日本証券クリアリング機構Web) 簡潔には、例えば東海東京証券Webの証券用語集では、以下のように解説されてます。 フェイル(ふぇいる):フェイルとは、証券取引の決済に関して、当初予定していた決済日が過ぎたにも関わらず証券の受け渡しが行われていない状態のことを言います。受け渡しが行われていない理由は取引当事者の信用力とは異なります。フェイル慣行とは、当初の決済予定日が過ぎた時点で証券の受け渡しが行われていなくても、そのことのみをもって債務不履行とはせずに、これを容認する市場慣行のことを言います。この市場慣行は、わが国では2001年に導入されました。 どうやら、2001年にフェイルが導入されるまでは、日本では受渡し日には必ず決済するという前提で市場が成り立っていたようです。だけど、どうしても遅延する会社がある。そうであれば、予め遅延することも織り込んだシステムにしておこうというようなことらしいです。 だけど、当たり前のようにフェイルが起こって良いわけではなく、市場参加者には回避義務が定められています(当然のことです)。 (参考) ○株式等におけるフェイルに関する留意事項(日本証券業協会) (上記抜粋) Ⅶ.フェイル回避策 市場参加者は、フェイルを回避するため、以下の対応をとることとする。 1.約定段階での決済情報の確認 市場参加者は、フロント部門等の約定に係る関係部門、関係先への注意喚起、システムによる補助及び運用の見直し等を行い、約定の段階から、市場参加者にて管理している決済に係る情報(いわゆるSSI情報をいう。)及び決済照合項目の確認を徹底するよう努める。 (略) 4.決済日の行動指針 決済日において、市場参加者は、必要に応じ約定当事者へ確認等を行うとともに、その権限・裁量の範囲内で以下の対応を行うよう努める。 (1) 非居住者取引における決済照合に係る行動指針 ① 未照合・照合不一致となっている非居住者取引に係る決済照合について、約定当事者間の合意がある場合を除き、照合カットオフ・タイムまでに決済照合を完了する。 ② 非居住者取引におけるすくみにより、照合は一致したがリリース実行不可となっているものを解消するため、可能な範囲で相対で対応する。 (2) 決済(一般振替等DVP等)に係る行動指針 ① ほふりクリアリングにおけるリスク管理上の差引支払限度額の上限と余裕値の不足を意識し、決済が滞ることがないようにする。 ② 仮にリスク管理上の差引支払限度額の上限を超える場合又は余裕値が不足する場合は、速やかに決済促進送金を行う等の方法により早期の解消を図る。 ③ 当日振替請求だけでなく、前日振替請求を効果的に利用して処理する。 ④ 特に非居住者取引における未決済分については、市場全体の決済への影響を鑑み、渡し方参加者はできる限り早いタイミングで借株による調達といったフェイル回避策を行う等、決済時限(マーケット慣行)までに決済を完了するようにする。 2.権利日のフェイルは極力回避する さらに加えて、通常の日ならともかく、権利日にフェイルが生じると影響が大きすぎますよね。 だから、前記の文書には”権利確定日のフェイルを回避するための行動指針”という項目が特別に設けられています。 (参考) ○株式等におけるフェイルに関する留意事項(日本証券業協会) 関連部分を抜粋すると。 5.権利確定日のフェイルを回避するための行動指針 市場参加者は、権利確定日の一般振替におけるフェイルを発生させないよう、必要に応じ約定当事者へ確認等を行うとともに、権限・裁量の範囲内で以下の対応を行うよう努める。 ① 権利確定日間際の取引では、受注時に残高があることを確認してから約定する等、残高の所在について特に注意を払う。 ② 当日の借株調達等フェイル回避策により、できる限りフェイル解消を図る。 ③ 株式会社日本証券クリアリング機構(以下「JSCC」という。)の定めるフェイル禁止銘柄についてはJSCCへ連鎖するおそれがあるため、一般振替でもフェイルしないようにする。 ④ 決済日の13時にJSCCにおけるフェイルが確定した後、15時30分の一般振替時限までにフェイル解消4を行う。 ⑤ 決済日の15時30分の一般振替時限までに株式等の手当てが行われなかった場合であって、「振替元に残高があること」等、一定の条件を満たしたときは、可能な範囲で追加振替による引渡しができないか検討する。 残高の確認徹底というような基本的なことさえやっていただいていれば、フェイルという事態は起こりえないし、 仮に残高の確認ミスみたいなことがあって誤発注したとしても、借株調達とかフェイル回避策はいくらでもあるわけです。 また、パブリックコメントなどのやり取りを見ていると、複雑な優待が絡む場合などでは顧客の不利益を回避するため(売り手側が対応しない時でも)買い手側の証券会社で証券を工面する場合もあるようです。 だから、今回みたいな権利確定日のフェイル発生で、顧客の株主権利が無いなどという事態は、あるにはあるだろうけどめったに起こらないことのようです。 3.権利確定日のフェイル発生時における清算 やむを得ずフェイルが発生した場合には、その影響が清算される必要があります。 基本的には、売り手側の証券会社と買い手側の証券会社の個別協議ということらしいのですが、 日本証券クリアリング機構において、”権利確定日のフェイル発生時における清算参加者の対応指針”といものを定めているようです。 以下の文章の中段以下に載っています。 ○株式等の決済期間短縮化( 株式等の決済期間短縮化( T+2T化)に伴う制度改正について(日本証券クリアリング機構) (抜粋) 権利確定日のフェイル発生時における清算参加者の対応指針 1.本指針について 本指針は、権利確定日1に株式等の証券決済未了(フェイル)が発生した場合において、当該証券決済未了に係る渡方現物清算参加者(以下「フェイル参加者」という。)が証券決済未了の場合及びバイインの取扱いに関する規則第5条に基づき、当該証券決済未了に係る受方清算参加者(以下「被フェイル参加者」という。)のために権利調整処理を行うにあたって対応の指針とすべき考え方について定める。 なお、権利調整については、同規則に定めるとおり、最終的には清算参加者間における個別協議事項であるため、フェイル参加者は、被フェイル参加者の求めに応じた柔軟な対応を行うことが期待されるが、被フェイル参加者側から個別事例に応じた特別の求めが無い場合においては、フェイル参加者は可能な限り本指針に基づいて権利処理を行うことが求められる。 (略) 3.権利確定日のフェイルに係る権利調整をフェイル参加者と被フェイル参加者が事後的に処理する場合の指針 前2.(1)(2)に掲げる株式等振替制度における直接的な権利取得のための対応が不可であり、フェイル参加者が被フェイル参加者との間で権利確定日のフェイルに係る権利調整を事後的に処理する場合、フェイル参加者は、以下に掲げるコーポレート・アクションごとの方法により権利処理を行うことが求められる。また、これらの方法により処理するための手続き等のために要する金銭等については、原則としてフェイル参加者の負担とすることが求められる。 ただし、被フェイル参加者が合意した場合においてはこの限りではない。 (1)配当金(剰余金配当)・分配金 フェイル参加者は、発行会社の配当金4支払開始日以降、被フェイル参加者が得られた配当金を遺失しないと考えられる程度の額(「フェイル株式数×配当金単価」を上限とする。)を被フェイル参加者の指定する口座等に対して遅滞なく支払う。 (2)株主優待 フェイル参加者は、被フェイル参加者が株主優待の授受等を希望する場合には、フェイルが発生しなかった場合に被フェイル参加者又はその顧客が得られたであろう株主優待物の種類及び個数を被フェイル参加者に確認のうえ、以下のいずれかの方法により遅滞なく株主優待物又は株主優待物相当額の金銭の授受を行うよう努めることとする。 ①フェイル参加者は、他株主や市場又はその他の方法にて当該株主優待物を代替的に調達することにより、同一の現品を被フェイル参加者の指定する方法・場所等において受渡を行う。 ②前①が困難な場合において、フェイル参加者と被フェイル参加者の合意に基づき、被フェイル参加者が当該株主優待物を自主的に代替調達する場合には、フェイル参加者は被フェイル参加者が当該代替調達及び顧客への引渡しに要した実費相当額を被フェイル参加者の指定する口座等に対して支払う。 ③株主優待物の総数に制限がある場合、記念品又は株主限定品であり市場等での調達が困難な場合等で同一の現品の調達が困難な場合、フェイル参加者は被フェイル参加者の合意に基づき、当該株主優待物の代替に相当する金品等により権利処理する。 上記からすると、配当と株主優待については、しっかりと処置がなされるんだろうなと期待します。 さて、問題は議決権です。 長くなりましたので、今回はここまでにして、次回は議決権について。 ※同様の分野のランキング。優良ブログが見つかるかも。 にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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