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カテゴリ:へそまがり流投資手法
ㅤ私が、日本株はとてつもなく割安だと思う理由を5回に分けて書いてみるシリーズの4回目です。
※そうはいっても、私はここのところ20年ほどずっと強気の買い豚なので話半分にお付き合いいただければと思います。 4回目は、会計基準を手掛かりに。 (日本株が超割安だと思う4つ目の理由) ○手堅く分かりやすい日本会計基準のもとで投資を判断できる幸せ! (関連の日記) 〇日本株が超割安だと思う5つの理由(その3)配当・優待 ○日本株が超割安だと思う5つの理由(その2)脱デフレ ○日本株が超割安だと思う5つの理由(その1)株式益回り 0.地雷原の米国会計基準 以前、米国の著名バリュー投資家のクリストファー・H・ブラウン氏が一般投資家向けに書いた ”The Little Book of Value Investing”の翻訳本「バリュー投資」という本を読みました。 (関連の日記) 〇バリュー投資 バリュー投資の基礎が分かりやすく書かれていて読み応えのある本だったのですが、 中には、米国会計基準であるが故の苦労もあるようで、米国で米国会計基準で投資をするのは大変だなー、という感想も持ちました。 著者流のバリュー投資の解説から、米国会計基準ならでは苦労だなと私が思った部分を少し抜粋しますと、 ・資産を見るときは、流動性が確保されていることが重要、流動資産と流動負債の比率などをチェック。借り入れに頼る経営は、業績悪化時の生き残りを貸し手の判断に委ねることになるので危険、負債比率の小さい会社の方が良い。 ”のれん”のような無形資産は資産価値を測るのが難しいので除外して考える。また、過剰在庫が有れば割り引いて考えることが必要。 ・利益を見るときは、子会社や土地の売却で利益が嵩上げされていないか、工場の閉鎖など一時的な費用が入ってないかなどをチェックし、会社の本来の力を見極める。また、ストックオプションなど将来の株数増加が見込まれるときは、希薄化後の値で見ておく。また、成長企業は指標面で見劣りがしても将来の成長で補える。 ・米国企業は、経営陣のボーナスを正当化し、ストックオプションの価値を増やすために、株主に良い顔(利益を大きく計算)しようとする いやー、米国会計基準で投資を行うのは地雷原を歩くようなものだなー、と思いましたね。国際会計基準(IFRS)も同様だと思います。 これが日本会計基準なら、、、、 1.手堅い日本会計基準 日本会計基準は、基本的に手堅くできている、と私は思います。ことに、今のように経済が順調な時には手堅さが際立っているかなと。 (1)のれんの償却 日本会計基準の大きな特徴として、まずは、のれんの償却です。 (関連の日記) 〇国際会計基準で利益を水増しする会社 企業買収時の買収価格と帳簿上の純資産の差である”のれん”について、 日本基準だと20年以内の期間を定めて毎年機械的に償却(毎年の費用に算入)していくのに対して、 国際会計基準や米国会計基準だと基本的に償却しなくてよいこととなっています。 ポイントを整理すると、 ・日本会計基準は、のれんの償却が毎年の費用に算入されるので毎年の利益が小さめに計算される。 その代り、利益が出なくなった時の減損処理の傷が小さくなる。 ・国際会計基準や米国会計基準では、のれんの償却が不要なので毎年の利益が大きめに計算される。 その代り、利益が出なくなれば一気に減損処理、利益が無くなれば資産も無くなる。 特に、今のように経済が順調な時には、日本会計基準でのれんを毎年機械的に償却する方が手堅く、将来の嵐への備えがなされている感じです。 なお最近は、国際会計基準や米国会計基準でものれんの償却を導入すべきではとの議論がなされているようです。 (参考の記事) 〇米FASB、のれん償却の是非議論へ 投資家・企業から意見募集(日経新聞Web) 記事によると、米国企業の計上するのれんは毎年拡大していて、今では主要500社で341兆円に達し、仮に10年で償却するなら年30兆円超の利益の引き下げ要因になるとのこと。 視点を変えれば、仮に米国企業が日本会計基準を適用するなら毎年の利益がそれだけ小さくなるということです。 いかに、日本会計基準が手堅く、米国会計基準や国際会計基準がユルユルかが分かると思います。 (2)日本の企業会計は税務と一体 それから、日本の企業会計が税務会計と基本的には一体になっているという点も、日本企業の決算が手堅くなる要因だと思います。 会計処理の方法に複数の選択肢がある場合、日本では企業会計でも税務会計でも基本的に同じ方法を選択する必要があるようです(時期にずれがあったり、一部に違いがあるという程度)。 賢明な経営者なら、当面支払う税金を小さくしようと考えるはずで、利益を小さく見せるインセンティブが働きます。 一方、米国や英国では、企業会計と税務会計は別物で、異なる会計手法を選択しても良いことになっているようです。 そうなれば、経営者の立場では、企業会計上の利益は極大化させ、税務会計上の利益は極小化させるようなインセンティブが働きます。 この観点は注目されることは少ないと思いますが、税務との関係でも、日本企業の決算は米国企業などの決算より手堅くなる傾向があると思います。 2.会社の実力が分かりやすい日本会計基準 上に紹介した、クリストファーさんの著書で、 ・利益を見るときは、子会社や土地の売却で利益が嵩上げされていないか、工場の閉鎖など一時的な費用が入ってないかなどをチェックし、会社の本来の力を見極める。 という項目があります。 米国会計基準や国際会計基準なら、子会社や土地の売却益も、一時的な費用も、営業利益に含めて表示されますから、会社本来の力を見極めるの作業は大変だと思います。 一方、日本会計基準には経常利益という概念があって、一時的な利益や費用は除外して表示されます(一時的な利益は特別利益、一時的な費用は特別損失となり、経常利益とは別の項目となります)。 会社本来の実力を見極める作業は、日本会計基準のもとでは、他の会計基準よりはるかに容易なのです。 整理すると、 日本会計基準は、 ・のれんの機械的償却により、毎年の利益が小さく計算される ・のれんの機械的償却により、利益が出なくなった時の減損処理の傷が小さくなる ・税務会計と基本的に一体であることから、会計手法が複数ある場合には利益を小さくするインセンティブが働く ・経常利益という概念があることで、会社本来の実力を見極める作業が容易 今回のような株価急落時でも、私が安心して株を持っていられるのも、日本に住んで日本会計基準の日本企業に投資している安心感が大きいと思っています。 3.蛇足 近年、東京証券取引所などが企業に国際会計基準導入を促していますが、個人投資家としてほんとうに迷惑なことだと思います。 米国会計基準や国際会計基準の決算資料を見ても、会社の本来の実力は良く分かりません、少なくとも私にとっては。 分かる人はどれだけいるんでしょうかね。 分かったふりをしているだけなんじゃないでしょうか。 欧米の投資家が、欧米の企業に投資をする際も同様で、きっと会社の本来の実力を本当には分からずに投資しているんだろうなと思います。 なので、株式投資のリスクプレミアムが5%は必要、なんてことになるのだろうな。 手堅く、かつ分かりやすい日本会計基準の日本企業に投資するなら、リスクプレミアムはもっともっと小さくても良い(=今の日本株はとても割安)と、私は思います。 ※同様の分野のランキング。優良ブログが見つかるかも。 にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 4, 2018 05:53:05 AM
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