いつだったか、クミ姐さんのカレシ斉藤君が家に遊びに来た。
隣に住んでいるお姑さまに
「クミのカレシが来たから、今すぐ来て下さい」と
インターフォンで緊急連絡した。
「すぐお化粧して行くわね」と
数分で見事に化けて、
いえ、
化粧して
「隣のおばあちゃんです」と
お姑さまは、ニコニコ顔でやって来た。
「ハンサムで感じの良い子ねえ」と
韓国ドラマのイケメン好きの義母は
斉藤君を、すっかり気に入ったようだった。
あれから約一ヶ月後。
「この間、クミちゃんによく似た子を
近所で見かけたわ。
男の子と一緒に歩いていたけど、
私を見ても知らん振りしてたから
クミちゃんじゃないのかしら?
でもよ~く似てたのよ。
その女の子、眼鏡を掛けていて
黒っぽいハイソックスを履いて、短い赤いスカート穿いて
膝小僧出してた。」
す、すごい観察力。まだボケてはいないようだ。
「う~ん、クミは眼鏡は持ってないし、
ハイソックスを履いてるのも見たことがないけど。
高校生の時は履いてたけど、
今は持ってないですよ。
その男の子は、この前来た斉藤君でしたか?」
「ううん、違う子だった。
クミちゃん、また違うボーイフレンドができたのかと思ったわ。
あっはははは。
クミちゃんは気性が激しいから、
将来必ず離婚すると思う。
斉藤君に、きつい事を言わないように、
よく言っておきなさいよ。
それから離婚しても困らないように、難しい資格を取るとか、
大学でしっかり勉強するように言っておきなさいよ」
お義母さん、それは明らかにクミじゃないでしょ。
心配のあまり、同じ年頃の女の子を見ると
クミに見えちゃうのかにゃ。
「親の言うことを素直に聞くような子じゃないから
言っても無駄だと思いますよ。
自分で考えて納得しないと、他人から何を言われても
聞く耳持たないから。
高校に入学してから
カレシと遊びまくって、全然勉強しなかった。
『3年になって泣くのは自分だからね』
と言っても聞かなかった。
3年の夏休み頃から、や~っと勉強スイッチが入って、
睡眠時間2,3時間で焦って勉強して、
パニック状態になってたじゃないですか。
あの時は、友達が次々に推薦で大学が決まったり
自分の模試の成績を見て、愕然として目が覚めたんじゃないですか?
言ったところで、
クミの耳に念仏。クミに論語。
クミに念仏クミに経ですって。
わっはは」
「ははは、そうよねー。
ウチの主人もそうだった。
言っても無駄だから、最後は私も何も言わなかった。
主人と性格がよく似てるのね」
お姑さま、
まだ結婚もしてないのに、もう離婚の心配ですか。
あまり悩むと頭禿げちゃう。ふふっ