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2020.01.16
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カテゴリ:知識

年を取っても記憶力がいい人と低下する人の差。記憶力に不安が出始めた大人のための勉強法

 2019-1-3  池田 義博(2019年度記憶力日本選手権大会優勝者)   東洋経済オンライン

 新年の目標を立てる人も多いこの時期。語学やビジネススキル、検定試験など「今年は勉強するぞ」と決意を新たにしている人も多いと思います。しかしいざ勉強を始めると「昔のように覚えられない」「この前覚えたはずなのに思い出せない」など、以前より落ちた記憶力にショックを受け始める人もいるかもしれません。今回は、決意と頑張りを無駄にしない、大人のための勉強法を『見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル2』の著者で、記憶力日本一の池田義博氏がご紹介いたします。

 

年齢を重ねても記憶力は維持できる

 

お察しのとおり、加齢で脳が衰えるのは残念ながら避けられません。しかし筋肉と同様、トレーニングすれば何歳からでも脳を鍛えることができます。

 

手前味噌ですが、私は40代半ばから記憶力日本選手権大会に参加し、1020代の若い選手たちをおさえて、出場した6回すべて優勝しました。しかし、これは私が特別な才能を持ち合わせているからではありません。

 

私の知り合いには、50代で試験を受けて大学院に入った方も60代で司法試験に合格した方もいます。

つまり記憶力とは才能以外の影響がとても大きい能力なのです。そして記憶力の維持に大事なのは誰でもできる3つの心がけを守ることだけ。

 

1つ目は「覚える意志」いわば意欲を持つこと。偽の薬でも効くと信じて服用すると本当に効果が出ることがある「プラセボ(偽薬)効果」をご存じでしょうか?これと同様に「覚えられない」「無理だ」というネガティブな思い込みは記憶スイッチをオフにしてしまいます。

 

記憶力が衰えない人は皆「年だから覚えられない」とは考えません。低下するのは記憶力ではなく意欲です。意欲の低下や苦手意識をなくすことが記憶力維持の第一歩になってくれます。

 

2つ目は「回数」、つまり復習です。何度も復習するとより強い記憶になるという脳の性質があります。そのイメージは壁のペンキ塗りに似ています。ペンキ塗りは何度も塗り重ねて完成しますが、記憶も同様。薄い記憶を何度も重ねて厚くするほうが強い記憶となっていつまでも覚えていられるのです。

 

  にもかかわらず、1度や2度見たり書いたりしただけで、覚えられないと諦めてはいませんか。1度で覚えられなければ2度、2度で駄目なら3度、と復習を繰り返して記憶を強くしましょう。

 

3つ目は「感情」すなわち感受性です。脳の中で記憶をつかさどっている場所を「海馬」といいます。この海馬のすぐ隣には「扁桃体」という場所があり、喜怒哀楽といった感情に反応します。つまり、何らかの感情が動いて扁桃体が反応するとそれによって隣り合った海馬が刺激を受け記憶が強化される仕組みになっているのです。

 

  そのような理由から、感情が伴った記憶は長く頭の中に残ります。年々、心から感動したり喜んだりすることが減ってきてはいませんか。大きなことでなくても構いません。おしゃべりを楽しんだり咲いている花を愛でたりご飯を味わったりと、いつまでも感受性豊かにワクワクした日々を送ることが扁桃体を活性化させ同時に記憶力アップにもつながるのです。

 

■メモやノートを使いこなす! 

 

  試験勉強や語学の勉強する際には、メモやノートといったツールを使いこなしましょう。ここでは脳の記憶の司令塔「海馬」を刺激し、効率的に記憶をするメモ術をご紹介します。

 

  記憶がどのように失われていくかを調べた研究結果では、記憶というのは徐々になくなるのではなく、初期の段階で急激に失われることが明らかになっています。だからメモにいちばん大事なのは新鮮さであるといえます。メモをとるときは時間がないことが多いものです。そのため書き込みも最小限になりがちですから、その場では書き込めない情報もあるはずです。

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 早いうちにメモを見返せば、それを書いたときの意識を呼び起こし、書き込めなかった情報まで思い出せます。ところが時間が経つと記憶がどんどん消えていってしまい、メモとしての価値は下がります。

 

最終的にはなぜそのメモを書いたのかさえ忘れることも。そうならないため、なるべくメモをとった日に目を通して、書き込めなかった情報まで追記することをおすすめします。

 

  同じくノート術についてもよく質問をいただきます。ノートをとる本来の目的は、内容を頭に入れることです。カラフルなペンでノートをつくる人もいますが、記憶力と色の多さはあまり関係がありません。

 

それよりも自分で工夫しながら書くほうが強く記憶に残ります。枠で囲む、線でつなぐ、それから「!」「?」「☆」「◎」「↑」などイラストを描く。このように自分の意思で工夫した過程はすべて「エピソード」になります。自分で考えてつくったという「エピソード」が海馬を刺激するから、強く記憶に残ってくれるのです。

 

  ツールを使いこなす以外に大切にしたいのが睡眠です。睡眠と記憶には切っても切れない関係があります。なぜなら記憶を定着させるには必ず睡眠をとらなければならないからです。

 

学生時代に試験の前日、徹夜で勉強した経験のある方はいないでしょうか。一夜漬けで入れた知識はその日の試験までは持つのですが、試験が終わった途端どこかに消え去ってしまいます。これは睡眠をとっていないため、きちんと記憶が定着しなかったことを示しています。

 

 睡眠中も脳は働いていて、記憶を管理している海馬はとくに大忙し。なぜなら海馬にとっての睡眠は、昼間のうちに頭に入った情報を整理する時間だからです。寝ているときに見る夢はわけがわからないものが多くありませんか。あれは海馬が、バラバラになっている記憶の断片を組み合わせて再生する過程で起こる現象と一説にはいわれています。

 

  例えるならば昼間頭に入った情報はバラバラ状態のジグソーパズルのピース。それらが睡眠中に組み合わされて正しい形に整理されているのです。こうして、完成したパズルだけが記憶として脳に保管されます。

 

 では記憶に最適な睡眠時間はどのぐらいでしょう。ハーバード大学の研究によれば新しい知識や技法を習得するには、覚えたその日に6時間以上の睡眠が必要とのことです。

ですから睡眠時間を削って試験勉強を行うなど愚の骨頂。睡眠時間を十分確保して勉強するほうが、結局はたくさんのことを身に付けられます。

 

■発想力や精神面まで向上させられる

 

 ここまで、スキルアップを目指す方に向けて記憶力アップ法をお伝えしてきました。しかし記憶力を鍛えるメリットはスキルアップ以外にもたくさんあります。その1つが集中力の向上です。

 

実は集中力と記憶力のどちらか一方だけ高いということはほとんどありません。記憶力=集中力といえるほど、記憶力が高いと集中力も高いという関係性があります。つまり記憶力が高くなると集中力まで高くなるというおまけがついてくるのです。

 

  私も記憶力を鍛え始めてから、いい変化がたくさんありました。その1つは精神面の強さ。昔はとても緊張しやすく、あがりやすい性格だったのですが、今ではテレビ番組の収録で多くの人やカメラに囲まれても平気になりました。記憶力につられて集中力がアップした結果、周りに惑わされず、すべきことだけに全力を注げるようになったようなのです。

 

 さらにアイデア出しの能力まで飛躍的にアップしました。拙著『見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル2』に情報を関連づけるドリルがありますが、これを応用すると、思いもよらぬものが結び付いて新しいアイデアを生み出すことができるのです。

 

  その脳の使い方を身に付けることができればどんどんアイデアが湧いてきて、アイデア出しに苦労することも激減します。このようにたくさんの副次的効果も期待できる、記憶力の維持・向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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池田 義博 :2019年度記憶力日本選手権大会優勝者






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最終更新日  2020.01.16 00:00:20
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