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夫婦同姓は日本だけ? 主流は選択型、原則別姓の国も(今さら聞けない世界) 2019-3-28 高田正幸 朝日新聞 日本では、夫婦が同じ姓を名乗るように法律で義務づけられています。でも、世界を見渡すとこのルール、かなり珍しいのをご存じでしたか?
「夫婦同姓」は合憲
今月25日、東京都の男性ら4人が「夫婦別姓を選べないのは違憲だ」として、国に慰謝料を求めた訴訟で、東京地裁が訴えを棄却する判決を出しました。
判断の根拠になったのは2015年12月、「夫婦同姓」を定めた民法の規定について、最高裁大法廷が「合憲」とした判決です。「夫婦同姓」が「社会に定着しており、家族の姓を一つに定めることには合理性がある」というのが理由でした。
一方、政府は最高裁判決に先立つ15年9月、ある答弁書を閣議決定していました。結婚すると、夫婦が同姓を名乗るよう法律で義務づけている国があるかどうかという問いに対し、「現在把握している限りでは、我が国のほかには承知していない」というものです。
では、世界の夫婦はどのように姓を選んでいるのでしょうか。世界の結婚制度に詳しい大阪大学の床谷文雄教授(家族法)に聞きました。
かつては欧米も「夫の姓」
床谷教授によると、いま世界で最も主流なのは「同姓でも別姓でも選べる」という国です。
ただ、これは最近の考え方。欧米でも以前は、結婚したら、夫の姓に変える同姓が一般的だったそうです。ドイツやオーストリアでは以前、夫の姓に変えることが法律で決まっていました。そうした法律はなかった英国や米国でも、慣習により夫婦は夫の姓を名乗ることが一般的でした。
例えば、クリントン元米大統領の夫人ヒラリー氏は、最初は旧姓である「ヒラリー・ロダム」を名乗っていました。しかし、夫が1980年の州知事選に落選した後から「ヒラリー・クリントン」を名乗り始めました。夫婦別姓では保守層の票が減る、という考えがあったと言われているそうです。
そうした潮流に変化があったのは、20世紀後半からでした。1979年に採択された国連の「女子差別撤廃条約」の影響もあり、「女性が結婚したら男性の姓に合わせなければならないのは、おかしい」という機運が高まりました。
男女平等の観点から90年代になって、結婚後にどちらの姓を使うかを夫婦それぞれが選べる「選択的夫婦別姓」が、ドイツやオーストリア、スイスなどの国で法制化されていったのです。
「山田鈴木太郎」もあり?
同時に、法的に結婚後の姓について決まりがなかった英国や米国、フランスなどでも、夫婦別姓を選ぶ人が増えてきました。英国やフランスの植民地を経験した東南アジアの国々でも、欧州の影響から選択制をとっている国が多いようです。
今では、夫婦双方の姓を合わせた「結合姓」を選べる国も少なくありません。
日本に当てはめて考えてみた場合、例えば山田太郎さんが鈴木花子さんと結婚した場合、「山田鈴木太郎」と名乗るようなイメージです。
「夫婦別姓が原則である」という国は、実は東アジアに多くあります。お隣の韓国や中国では、結婚後も姓を変えないのが一般的です。
床谷教授は「キリスト教の影響で夫婦の一体性を重視した欧米に比べ、自分の出自を表す『家』を大事にしたのがアジアの文化だったのではないか」と話しています。
日本では「同じ姓になることで家族の一体感ができる」といった考え方から、「夫婦別姓」に反対する声はかなりあります。
でも、日本もかつては「別姓」が基本でした。武家社会では、嫁いだ後も妻が実家の姓を名乗ることが普通だったそうです。多くの国民が姓を持つことが許された1870(明治3)年当時でも、政府は結婚後も実家の姓を名乗るように指示しています。
その後、1898(明治31)年に施行された明治民法が「家族は同じ家の姓を名乗る」と規定し、現在の制度を形づくっていったのです。
増える事実婚
さて、再び世界に目を向けると、「結婚」という制度に縛られない仕組みづくりも進んでいます。
フランスでは1999年、共同生活を営んでいるカップルに対し、結婚しているのとほぼ同等の法的権利を与えるPACS(連帯市民協約)を認める法律が施行されました。18歳以上が結べる「パートナー契約」で、結婚より手続きが簡単。片方の求めがあれば、解消できます。一方で、税制や社会保障では、結婚に近い権利が与えられ、負債の連帯責任など義務も伴います。
スウェーデンでもカップルに結婚しているのに近い権利を認めるサムボ(事実婚)法があります。日本の内閣府経済社会総合研究所の調べによると、スウェーデンでは法律婚をするカップルの9割がサムボを経験しているそうです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.01.31 00:00:20
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