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カテゴリ:山歩き
当初の予定では、上高地から紅葉真っ盛りの涸沢カールまで歩きテントで2泊、
そこをベースキャンプにして、登れたら奥穂高かザイテングラートに行こうという予定でした。 天気予報では最初の日は朝のうちは雨。午後から晴れで、あとの2日は晴天!の予報でした。 タクシーのおじさんもそう言っていたし、ほとんど疑っていなかったのです。 ところが雨は降り止むことなく、最終的には吹雪という過酷な天候に見舞われてしまいました。 こんなのは初めてで、やっぱり山は侮れないのだということを痛感しました。 晴れの予報だったので用具の用意もぎりぎりで、しかも雨の中を長時間歩いてきたため、いくつかの防寒具は雨で濡れてしまっていました。 9時間かかって涸沢カールにたどり着いたのは日没近く。 このときには雨はごうごうと吹き荒れる雪に変わっていました。 濡れた体が寒くて仕方がなかったけれど、とにかく暗くなる前にテントを設営しなくてはなりません。 でも到着が遅かったためか、連休の涸沢はもうすでにテントでいっぱいで ごつごつとした石だらけで斜めになっている場所しか見つけられず、 でもとにかくそこにしようと、吹雪が吹き荒れる中なんとかテントを設営しました。 ほんとうに寒かった! テントの中にもぐりこんで、子どもたちの濡れた服を脱がそうとするけれど 手は震えてうまく使えず、歯は音を立てて鳴りやみません。 やっとわずかにある乾いた服に着替えさせ、ごつごつした石の上に膨らませたマットを敷き、 シュラフに潜り込ませ安心した顔を見たときにはこちらも安心しました。 そして狭いながらも風をよけ、わずかな暖をとれるテントに感謝。 そのテントの張り出した風の当たらない外のわずかなスペースで夫がちゃんこ鍋をつくってくれました。(具材を切って持って行きました) それをみんなでつついて体が温まっていくのを実感できる幸せ。人心地つくって、こんなときですね。 感想を言い合って少し緩んだ暖かな気分になって眠りにつきました。 でも、ありたけの服を着てシュラフにもぐっているのに寒い! 夫は半袖Tシャツにダウン、腰から下だけ子どものシュラフという格好でやはり寒そう。(それしかもう服がなかったのです) こうなると周りも気になって、マットからずり落ちている下の子を引っ張ったり(でも夫の温かいシュラフで冬眠中の動物のように熟睡してました)、 斜めになっているため下にずり落ちてゆく上の子を引っ張ったり、(テントの壁面は結露のため、くっつくと、びしょびしょになるのです) ごうごうとすさまじく揺れるたび、すごいねと確認し合ったり、そうこうしながらも眠りにおちてはまた覚め、の繰り返しでした。 そして朝起きたら、実は夜中は雨なのだと思っていたのは雪だったようで 一面が雪景色になっていました。 紅葉がひろがっているはずの山の斜面は雪が覆い被さり、真っ白。 昨日到着したときは山の斜面を見れたはずなのにその余裕さえなかったので、 結局は見ることができずじまいになってしまいました。 もう夫の頭からもザイテングラートに登るだとか、奥穂高とかいう考えは消えてなくなっていたようで、 実は私はもう一泊して晴れるかもしれない涸沢カールの紅葉を見てから帰りたいという気持ちがあったのですが、そのときも吹雪。天気回復の予報はでているものの、これからもこの天候が続いたら閉じこめられて帰れなくなるかもしれない、早く帰ろう!それが夫の考えでした。 でもレインスーツは濡れていて着ることができません。 ふと、歩いて10分くらいのところの山小屋に宿泊者用の乾燥室があったことを思い出し、 暖房代を払って使わせてもらうことにしました。幸いにも私のレインスーツだけ着ることができたので、干しに行くことができたのです。 すっかり乾いたレインスーツを着てお昼すぎに涸沢を出発しました。 ちなみに息子は登っているときも元気。朝も雪だるまを作りたいと喜び、帰りも乾いた服を着てご機嫌でした。 娘は、もうとにかく家に帰りたい。なにがなんでも家に帰りたい。 降りている最中も「家に帰りたいよぅ。」と半泣きのように言っていました。 でも行きで9時間かかった道のりをお昼過ぎにでたのでは到底無理。 当初は途中の山小屋で一泊する予定だったのですが、娘の頑張る!という決意に押されてみんなでとにかくハイピッチで歩き続けました。 こんなときに感心するのはこどもたちの健脚ぶり。息子にはどんなに追いつこうとしても角を曲がるともう遠くにいるという感じでなかなか追いつくことができませんでした。 そしてお昼もとらずに歩き続けて、6時間15分。やっとのことで上高地に着いたのです。 時刻は6時半。途中で真っ暗になりヘッドランプをつけて、前を行く足だけを見て進みました。 ゲートが閉まるぎりぎりの時間に到着し、タクシーに乗り込みました。 ほんとうにみんなよく頑張った。 息子に関しては不思議なくらい元気で、行きじゃないのよ、というくらい歌ったり、クイズを出したり・・・。 娘はやっとの思いで。 夫は何十キロもあるザックを担ぎ、相当ばてたようでした。 私は・・・重いザックで肩が痛し、両足のマメはつぶれそうで、もう痛みのピークも越えてへろへろでした。 温泉につかって、12時間ぶりの食事をとり、車で家に帰り着いたのは夜中の2時半でした。 起きだした私たちは運転してきた夫をねぎらうとともに今回の感想を喋っているうちに、気がつけば4時半になっていました。 そして平なところで眠れること。 動き回れること。 トイレに気軽に行けること。 乾いた服が豊富にあること。 そんないろんなことを、ほんとうに有り難く感じたのでした。 そして不思議なのは非常に過酷な経験だったけれど、のど元過ぎれば・・・じゃないけれど、けっして嫌な経験ではなかったこと。 けっこうぎりぎりのところで無事だったけれど、頑張った、頑張れたという気持ちがあって 、 自然の怖い一面を身をもって経験できたことも貴重な経験だったと思います。 それにみんなのそれぞれの頑張りを見て、自分も頑張りたいと思い、家族を思いやる気持ちが増し、絆が強くなった気がします。 今日もどろどろになったキャンプ道具や衣類の後かたづけなど、 自分も含めてみんなよく頑張りました。 そしてこの日は各地で大荒れの天候だったようで、遭難者もでているのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.10.10 01:14:27
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