『レベッカ』4月30日(金)マチネ
<『レベッカ』4月30日(金)午後1:30開演 @帝劇>いや~、今日の公演は熱くてとても素晴らしかった!4月の最終日として締めくくるのにふさわしい出来でした。もちろん、みなさん連日の公演で、喉が御疲れの部分もあり、ときどき割れそうになる声を力ずくで1本に纏めて・・(笑)という感じの部分(ビーとか・・祐一郎さんもたまに・・)もありましたが、それぞれの人の心情がびんびんとダイレクトに伝わってきた!席が10列目前後のセンターということもあり、場所がよかったのか、また音響の調整でもあったのか、とても音の響きが深くてバランスもよかった!とくに祐一郎マキシムの切れのよい、ちょっと硬質に響く声には終始うっとり・・。偶然前の列にのんさんが、その前の列にはやまりんさんが。お隣さんも祐さんファンらしく、オペラ上げ下げがわたしと合ってました(笑)ので心強かった(?)です(^^)。また、いつもあまりにも完璧で素晴らしくて可愛いので、つい褒めるのも忘れてしまって、空気のようなあたりまえな存在になっている大塚さん。安定はしているのに、毎回せつない心がよく届きます。声がよかったり強かったり存在感があったり綺麗なだけの舞台女優さんはいるかもしれないけれど、上手さ誇示での憎々しさなどもまったくなく、観ている者の気持ちをしっかりと掴んで共感させる、この持ち前の素直さ、まっすぐでピュアなところ、ほんとに舞台女優さんとして素晴らしいなあ、と毎回感心させられます。声もはずみがあるのに情感もこめられて凄いです。大塚さんのイッヒがここまで素晴らしいから、ほかの役者さんも相乗的によくなるんだな、と最近思います。最初はおどおどと猫背気味に歩き、爪噛みをしたりスカートの裾をひっぱったり、どこか自信のなさをまとっていた彼女、マキシムの苦悩を共有し、彼を支えるという使命感のような気持ちを覚えてからの変化が実に素晴らしい!なぜ警察に届けなかった?というイッヒの質問に対して、「わからない、わからない、もうお仕舞いだ!」と嘆くマキシムの姿は、母親の胸に頭をうずめてなきじゃくる、三歳児坊やのように見えました(笑)。初見の方も多かったのか、あるいはヴァンホッパーさん(寿さん)の「ちょっと見てっ!!」とマキシムを呼び止める声が迫力あふれていたせいか、客席は結構笑い声で沸きました。そういえば、今日は珍しく男子高校生の団体が1F後方にずらっと座っていたせいか、新鮮な拍手が後ろから厚く聞こえてきて、頼もしかった!ウィーンミューを観る企画をしてくれる高校って素敵!そういう学校に通いたかったわ(笑)。幸せの風景♪(新曲)は今日は多少ブツギリ気味に戻っていた気もするけれど、声が甘くてソフトで愛といっても父性的なものがあふれていて、この抑えた声の魅力もなかなか聞きなれてくるといいものです!「家族も無い・・一人っきりだ・・」のところ、ほんとうに絵を描いてあげたくなるほど、寂しげで、きゅんときます(笑)。結婚を申し込む台詞は相変わらず間がなくて早すぎかな。御花を受け取ったちひろちゃんの頬は今日はそれほど涙で濡れてなかったので、マキシムはぬぐわず、ぬぐう振りだけして、今日は手をちひろちゃんのセーターの腕で拭く事はなかったです(笑)(いつもはぜったいに拭いてますよね~!)ビンに詰めて~♪と歌うイッヒをそっと見守るマキシムの表情もとっても暖かでそれでいて、真面目な感じもでていて、とても素敵でした。こんな素敵なら、ビンの中身が悪魔でも許せますよね~!(笑)しかしどうして祐一郎さんは、「朝食」というのを、「ちょぉーーしょく」って伸ばしていうんでしょう?愛しています!とちひろちゃんに言われて振り返るときの顔も好き。シルビアダンヴァース登場!今回はWキャストのせいか、声が枯れてくることもなく絶好調!それでいて髪形がひっつめ+軽いウェーブも加わったことやメイクの変化もあって、ほんのり女らしい色気が初演より増し、観ていて美しいなと。張りのある朗々とした声で歌い上げるこの声はやはり誰にも真似できないでしょうね。やはりこの方あってのバリエーションなんだな、この人がスタンダードなんだあ、としみじみ感じた今日でした。まるでどんな場所もブルドーザーでガガガガといやおうな掘り返しちゃうようなスーパーパワフルな地声でうぉおおおお!!!となると、聴いていてスカーっとくるものがある。「どんなぁ~!!男もひれ~伏す~♪」とか・・・聴いていてこちらもひれ伏しそうになります(笑)最後の「あの方のものよぉーー」も声割れしてなかったと思う。ほんと、完璧な出来栄えでした。カテコの拍手も今日はシルビアが一番大きかったような気がしました。カトレアの歌も涼風さんの影響があるかどうか分からないけれど、しっとり感がどんどん増している気がする。涼風さんは歌のあとカトレアにうっとりとしているときにイッヒが入ってくると、ハッ!と恥ずかしそうに身を正しますが、シルビアは平然としています。こういう違いも面白いですね。マキシムの祐一郎さん、すごくメイクがしっかり入っていて、ちょっと浅黒く凛凛しくて、なんだかときどき横顔がレット・バトラーみたいな雰囲気も入ってたような・・。鬘がまさか同じじゃないでしょうね・・?(笑)ときどき、光が当たってマキシムの横顔のシルエットが後ろに映るのですが、そのときの鼻筋の角度の美しさといったら・・本人よりシルエットに惚れ惚れしてました(笑)。わたしって結構な鼻筋フェチかもしれない・・。モンテカルロとマンダレイとで確かに新聞は違っているように見えるけれど、マンダレイ以降は表紙がなくて、なんだか最初のObserverという新聞の上の1枚を剥ぎ取っただけだったりして・・なーんてね。どんどん新聞が薄くなっていくような気がして。チェスのシーンのおでこチュっ!は今日は控えめで奥ゆかしいキスでした。「きみのやりたいようにやりなさい」はとっても優しい声なのに、そのあとダンヴァースが来るから声がこわばってしまって残念(って、役だから仕方ないけれど)でも、涼風さんのときと違って、わりとクールを保った声です。甲走った声さえも、素敵な今季の祐一郎さん。「逮捕監禁」などという言葉も歯切れよくって、今日はどこだったか、「○○して、いる」という切るようにいう言い方が、あ、やっぱりちょこっと四季っぽいな、と感じました。そうそう新聞といえば、悪い噂という言葉に反応して切れてしまってイッヒに「わたしにそれを聞くな!」と新聞を読むポーズをするところだったかな?新聞が上下逆向きになっていて、祐一郎さんは、冷静にすばやく上下を正してました。娘が彼氏を連れてきて動揺し、新聞を読む振りするけど「おとーさん、新聞が逆さですよ」と言われてあわてて直す、そんなおとーさんのでてくるドラマなどを思い出して、なんだか可笑しくなってしまいました。「こんな夜こそ」はほんとにマキシムも「わたし」も丁寧で心を吐露するようにせつなく歌っていて、デュエットもばっちりですね。2幕最後の「夜を越えて」よりもずっと音楽としては素敵に感じる。デュエットはいいけれど、ユニゾン部分になるとちょっとぶつかり合う声質同士なのかな?やっぱり声の相性でいうと祐一郎さんと保坂さんが最高だったなあ、とPQをなつかしく思い出したりも。ファヴェールのシーンになるとこの前の東京會舘のイベントで、吉野さんが「ファヴェールっていつでも、すぐ「出てって!」って言われちゃうんです。シルビアさんとの最初のシーンも「出てって、ファヴェール!」だもん」とユーモアたっぷりに話していたことを思い出していました。マキシムにも出てけ!って言われるし・って(笑)。「神よなぜ」もすごいアップテンポになってますよね。でもシャープで硬質で切れのよい祐一郎さんの声だと魔法のように吸い込まれてしまう。音程もリズムも難しい曲です。刻むようなメロディーなので、途中の「けなげな瞳が希望に見えた~♪」のあたりの歌い上げの声が伸びやかで嬉しい。1幕最後舞踏会での衣装の披露の前、マキシムは寸前までは結構なご機嫌で、「ふーむ、妻はどーんな姿でくるのかにゃ?」みたいなことを考えていそうな表情をしていてキュートでした。だからこそ、その後の豹変が初演以上に怖いです。2幕の「凍りつく微笑」1編のストーリーを凝縮したかのようなこの曲、レベッカとの甘いはずがすっぱく辛く苦く終わった日々を薄皮をめくりながら思い出すように痛々しく、そして劇的に語りまさに一人芝居!彼の場合は演技だけでなく、声の張りや表情やニュアンスを変えていくことでの一人芝居でもあり、複雑な心境を載せて聞くものを誘導し、レベッカがマキシムに対する導きのように、そのままの流れであちこちに連れていかれるのがすでに痛みを伴う快感に近い。受け継ぐマンダレイ!!の響きの広がりはそのままマンダレイの広さを思わせ、その劇的なこと!マキシムは歌い終わってうなだれ、まだ私を愛していると言ってくれるのか?とイッヒに問うとき、自分の爪が自分の膝に食い込まんばかりにギュっと力を入れており、そのあとイッヒに腕を廻すのですが、膝の手が離れた瞬間が今まで自分を縛りにかけていたものからの解放とシンクロするように見えたんです。なんだか今までにない感動を覚えました。しかし憎まれても死に至らしめられても、レベッカはマキシムに何度も名前を連呼(笑)されるんですね。イッヒは名前を呼ばれることがない。このことは愛ではないかも・・だけれど、情念の深さ、感じていた気持ちの触れ幅はやはりレベッカに対するものは尋常でなかったことを感じさせますね。夜明けじゃない!あれは、マンダレイだ!というマキシムの表情は、やけに嬉しそう。ちょっと早すぎかな?って(笑)禅さんが歌い、そしてさあ、俺の歌う番だ!と周りを避難させるようにどかせ(笑)、一気にマンダレイの燃え上がる炎のように歌い上げるこの瞬間からだにもロケットが突き抜けるようです。消えてしまえ~!!今季最大の迫力の歌い上げですかーっとしました!(笑)待ち受ける、試練にも・・と途切れたように歌いイッヒに寄り添うマキシム。この祐一郎さんの歩いてくる時間が楽しみでなりません。「絆」とはなんだろう?難しいです。