『ノートルダムの鐘』(劇団四季)12/22 ソワレ
今週のキャスト情報(四季公式サイトより)(2016/12/19 更新)カジモド 海宝直人 (20日,22日,24日(昼),25日)飯田達郎 (21日,23日,24日(夜))フロロー 芝 清道 (20日~21日)野中万寿夫 (22日~25日)エスメラルダ 岡村美南 (20日~21日)宮田 愛 (22日~25日)フィーバス 清水大星クロパン 阿部よしつぐ【12/22のキャスト表】フロローの野中さん、エスメラルダの宮田さんのデビュー日を観ることができてラッキーでした。Wキャストまったく違って面白いです。芝フロローは、生真面目で論理的に相手を追い詰めたり、自分を責めたりするタイプ。声も硬質で甘さがなく、低音がよく響き、大きく爆発しないけれどいつもせめぎあいがひたひたと内面にあるような、そんな感じ。野中フロローは一見飄々とした感じもあるけれど、実は切れると怖いものをもっている声はまろやかであまり緩急つけないけれど、唐突に爆発し、内面の葛藤がいきなり現れる。そんな感じがしました。宮田エスメラルダは岡村さんに比べると最初は大人しめで、華がすくないかなと思いましたが、動きにキレがあり、内面に秘めた強さが2幕でぐっと生きてくる、そんな感じでしょうか。歌や目つきにも負けん気の強さや鋭さが現れます。岡村さんは、手足が長く背も高いため、目立ちますし、声もまろやかさがあり、大人の女性、母性のようなものを強く感じます。どちらもそれぞれの個性がある素晴らしいダブルキャストですね。本日は海宝さんのカジモドでした。前の週は開幕まもなくだったため、最初のソロである日差しの中へ(Out there)の喉の切り替え~カジモドらしい声から開放された伸び伸びした地声への切り替え~に苦労されている感じがしましたが、22日は、さっと歌になると声帯を合わせて、響きのある歌声がすぐに戻っていました。もちろん、曲の途中で、カジモドらしい歓びの表現音(言葉でいい表しにくいんです)が入り、顔も歪めたままなので、凄い大変なことをされているなあ、とそして、体中で自分が自由にここから飛び出せたらどんなに素晴らしいことか!!と心から振り絞るように歌う曲は、闇の中にあって、そこから光を求めて新しい世界に飛び出そうとする、祐バルジャンを思い出し、やはりある役をその時に演じられるというのは、目に見えないギフトであり、ご縁みたいなものがあるからだな、と感じました。このソロの前に、親代わりに自分を育ててくれたフロローとのやりとりがありますが、そこで、お前は怪物だから、外へでてはいけない、醜いから・・・という言葉のあとに、カジモドが悲しそうに「怪物・・」「醜い・・・」と繰り返し、フロローに守ってください・・とすがるところ、胸が痛くなります。ジプシーも自由に行動できるお祭りの日。いちばん醜い顔をしたものを王様にするという催しで、おもちゃの王冠をかぶらされ、町の好奇の目にさらされ、ついには、「こんなもんで醜いっていえるのか?」と物を投げつけられるカジモド。出て見たら?と勧めたエスメラルダが、ひどいことをしてしまった、と謝り水を与えますが深い傷を心に負ってしまったカジモドは、あ・・り・・が・・とう、というのが精いっぱい。このときのカジモドを守るはずのフロローのずるい感じの立ち振る舞いも、ぞっとします。実際の人間社会にも多くあるのではないか、見て見ぬふりをする。というのは。そのあと、ノートルダム寺院に入り、見放され差別されている者たちを救いたまえと神に祈るエスメラルダのソロは、本当に心にしみます。ジプシーの頭であるクロパンを演じる阿部よしつぐさん、ますますノリノリのいい空気を出しています。後半、フィーバスが体を高いところから乗り出すようにして歌うシーンがあり、そのシーンにクロパンもいるのですが、フィーバスはバリケードで歌う、アンジョルラスのようで、そういえば阿部さんも一時アンジョを演じていたっけ・・・でもこのクロパンのほうが似合っているような気がしました。隊長のフィーバスは先週と同じキャストでしたが、なんだか自分が慣れてきて、見た目はあまり好みではないにせよ、内面の包容力が出てきたような気がして、そして、宮田エルメラルダととても似合っていて、よかったです。(といいつつ、もう一人のフィーバスも早くみたいです)1幕ラストに近くに、地獄の炎(hell fire)という曲があり、フロローの独白というかすごい聞かせどころなのですが、野中フロローはあまりせっぱつまっているようにはみえず、これからどんどん深化していくのだろう、と思いました。1幕ラストはフィーバスとエルメラルダ、そしてカジモドも含め、それぞれの心情のほとばしる重唱が聴け、このような構成はレミゼのOne day moreや、コゼットに惹かれ自分のもとには決して来ないことがわかっているエポニーヌの気持ちだな、これは、と、なぜかレミゼのあれこれのシーンが思い浮かんだりしました。2幕のカジモドも愛のためなら怖いものがなくなっていき、欲望のために酷い嘘までつき、堕落していく偉かったはずのフロローとは対照的にどんどん愛のエネルギー、そして純粋でありながら、どこかクールで頭の良さをみせるカジモドにはエールを送りたくなってきます。しかしエスメラルダを助けるためにした行動が実は罠で、かえって大変なことをまねいてしまう。そのことにより、自分の心を深く閉ざしてしまおうとする、おまえたち(唯一の友達であるガーゴイルの石たち)の言うことはもう聞かない、こんな自分はもういっそ石になってしまいたい!!そう叫ぶように歌うMade of Stone の「おまえらは石のくせに!!」という部分で、ミュージカルMozart!で、狂気に陥りアマデにひどくあたるシーンで「子供のくせに!!」と叫ぶように歌うシーンをふと思い出したりしました。このシーンだけでなく、人間のもつ愚かさや不安、バランスを欠いたときの悲しさ・・・不信に満ちてしまったときのどうしようもなさ・・。人間の本質を問う作品なのですね。だからこそ、What makes a monster, what makes a man!?というフレーズも英語版にはあるのですね。誰が怪物であり、誰が人間なのか、それは誰にも区別しがたいこと。エンディングはアニメと違って完全なるハッピーエンドではないけれど、胸にせまる感動があります。あまり細かくは書きませんが、2幕フィナーレはほんとに心を揺さぶられるようにできていて、そのフレーズどおり、あの方たちがあんなことをし、カジモドもあのようになる・・・そのあたり・・音楽の美しさもあり、絶対に泣いてしまうシーンです。周りの女性たちもみなハンカチで顔をぬぐっていました。カテコの海宝さんは頬が濡れて光っていて、とてもきれいでした。アンサンブルさん+別にちゃんと聖歌隊(クワイヤ)が存在していることも重厚な音楽の響きに身をゆだねることができ、より心がゆすぶられるのですね。カーテンコールは何回も続き、拍手も大きく、ほんとに凄い作品ができたな、と胸いっぱいにして劇場を去りました。なんだか思い出して書いてるだけで、心がぐわーんとなります。さて、大阪でがんばっている祐一郎さんを応援しに、いよいよ明日と明後日の大阪での『貴婦人の訪問』を観てまいります!再再演がないとすれば、ほんとうの見納めになります。ドキドキして眠れないかも・・・・。