♪ 行け行けの歓声の中逃げを打つ騎手は孤独の弓矢(きゅうし)とならん
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昨日は天皇誕生日ということもあって、平成最後の有馬記念ということが頭に浮かんでいた。誠心誠意、国民の幸せを願って行動をし続けて来られた天皇皇后両陛下。「象徴」という難しい立場を、ご自身の意思をもってあるべき姿として実践され、あくまでも庶民に近ずこうとされてきた偉大な平成天皇。何か記念になることをと思った。しかし、それも大袈裟なものではなく、美しく水面に浮かんでいる月を愛でるような気分とでも言おうか。
そういうわけでもないが、何十年ぶりかに有馬記念の馬券を買いに行った。何時だったか、13倍ほどの万馬券が出たレースで、5点買いしてズバリ当てたことのある思い出深いレースだ。一年最後の競馬ファンなら見逃せない年末を飾る重賞レース。
以前なら、数日前からスポーツ新聞を隅から隅まで読み込んで馬券を決めていたものだが、今回は全くの思い付き。その日の朝のスポーツ紙を、1時間程じっくり読んで決めた。
馬券を買うのは、一体何年振りだろうか。若い頃は、ジャンボ宝くじを買うのと同じような感覚でおもだったレースだけは買っていた。中京競馬開催のレースは一度やって、散々な結果で懲りてしまた。それ以来行っていないが、重賞レースの馬券だけは、人に頼んだりして買っていた。
しかし、それも買わなくなって久しい。
第63回の有馬記念。どうも展開からして中穴が出そうな気配があり、的中させるのはけっこう難しそうだった。買うのを止めようかと迷っているうちに時間が押してきた。せっかくの天皇誕生日だ、意を決して午後2時半すこし前になって家を出た。
ところがところが、大渋滞に嵌ってしまった。大高イオンの駐車場に入る車が延々と繋がって、全く動かない。時間はどんどん過ぎてゆく。「オーい、早くしろー!」「時間がないゾー。」「間に合わん、くそー。」そりゃあ色々叫びましたよ。
やっとそこを抜けて国1へで出るも、ことごとく信号が赤になる。イライラし、間に合うかどうか心臓も高鳴って来た。やっとの思いで競馬場に入る信号を左折。時間がないので車を遠くに停めるわけにはいかない。第二駐車場(有料)を素通りし正門前の駐車場(無料)へ。当然のように「満車」の看板。ええいっ、困った。
そこをスルーすると、駐車場に接する横道が目に入った。何も考えずにそこへスッと入って行った。何と! 神のご加護か、運よく路肩に停めるスペースがあるじゃないか。こりゃあツイてる。
そこへ停めて、走った。結構距離がある。雨もチラついていて下が濡れているが、とに角走った。正門を入ると屋根付きのプロムナードがあり、そこへの階段を駆け上がる。遊歩道にも階段が続く。キツイ。息が切れる。70直前のジジイが走っている。本人はしっかり走っているつもりでも、傍からは結構みっともない恰好なんじゃないか。
そこから先がまだ遠い。「こんなに遠かったっけー?」と思いつつ走る。が、腿が言うことを聞かなくなってきて、足が止まる。息が上がる。
やっとの思いで券売場の入り口に到着。投票用のマークシートが置いてあるコーナーで、「ええと、どれだ」と、一瞬迷うとすかさず女性係り員が、「有馬記念ですね。」と言ってサッと出してくれ、「早くしないと買えませんよー!」と。「買うものは決まっていますか?」と言うので、メモを出した。それを見ながら「ここにチェック、ここにチェック」と次々に指示をしてくれ、迷うことなく書き終えることが出来た。一見して素人と見抜くんだから凄い、などと思いつつ券売機へ。
結構な人が並んでいる、ヤバイかも。中山と阪神競馬の分も発券しているので、混むわけだ。係員がメガホンで何か言っている。傍へ行って確認すると「向うが空いてます。」「向うってどこ?」「反対側です。」そうか、入り口近いところは混んでいるが、裏え回れば空いているという訳か。
慌てて走って裏側へ回ると、確かに込み具合が違う。一人しかいないところへ行き、漸く買うことが出来た。息を整えながら先ず無料のお茶をゲットして、馬場のほうへ向かう。大画面にちょうどスタートの合図をする係員が登場するところだった。ギリギリもいいところ、「滑り込みセーフだったなあ」と安堵しながらその大画面を見る。
それにしても凄い人だ。中山の競馬場はどうなってるのだろうとか思っていると、ファンファーレが鳴った。いよいよとなってワーと歓声が上がり、熱気が凄い。拍手も起こった。
一頭だけの先行馬オジュウチョウサン(武豊)が、予想通り逃げを打った。前残りを願っての声援が凄い。直線残り100mあたりでブラストワンピースが抜け出てきた。叩き合いの末、背走して来たレイデオロを従えて、差し切っての勝利。
「獲ったー!」「当てたぞー!」
結果は、3-6、4-6、4-7、6-7、6-6 の5点買い。そのうちの一枚がズバリ的中。小市民のギャンブルは、大枚を注ぎこむなんてことはしないが、かと言って100円券では面白くない。買うのは当然1000円券だ。
群雄割拠の有馬記念だが、今年は去年のキタサンブラックのような絶対的強者がいなかったので、ガチガチの本命という訳にはいかず、票が割れた。その分だけいい配当となり970円はまずまずだった。硬い目だった割にはいい配当となったと思うのは、中日スポーツの黒柳という記者の予想通りの結果だったからだ。
今年のGⅠの馬連を13レース的中させている回収率142.9%という驚異の成績を残している。昨年の有馬記念は、キタサンブラックに本命◎、2着の8番人気クイーンズリングに穴馬△、3着のシュバルグランに対抗の〇を付けて、馬連3,170円、3連単25,040をゲットしている。
今回は、枠連④⑥と馬連複⑫⑧を当てている。
彼の予想がたまたま自分と一致したわけで、それが当たったわけだから自信を持っていい。ラッキーカラーの黄色いハンカチを首に巻いて行ったのが良かったのか。的中して気分は上々。
展開を読み、渋滞に耐え、走って肉体も使い、際どい時間にも勝って、そして勝負にも勝った。これで運を使い果たしたなんてことは思わない。まだ楽しみは残っている。
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