♪ 一年の末に眺める年賀状儀礼と義理と嘘っぽいこと
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N氏は、「顔が広いんですねー!」と言われていた時代もあるが、ある時期からどんどんその幅を狭めていって、今では必要最小限のものとなっている。理由を聞けば「その必要がなくなったから」という。
きっかけは、ノイローゼというか軽い鬱病状態なってから人と会うのが苦痛になり、創作活動も滞ったことがあって、その時に考えた事に起因しているとか。
苦しい状態から脱出することが出来て、悟ったことが三つあるという。それは、*人と比べないこと。*見返りを期待しないこと。*見栄を張らないこと。
そうして楽になった彼は、自然体で自分の自由に生きることを第一義に考えるようになった。交友は楽しい反面、齟齬と軋轢も生む。気の合わない人やそういう人のいる組織に身を置いていると、自分の心を狭くし卑屈になったりもする。そんな事が面倒臭くなった彼は、無理して他人に合わせる必要性を感じなくなったというのだ。
束縛されずに自由に生きる。まさにボヘミアンの心境だ。フレディー・マーキュリーの歌を聴いていると泣けてくるのは、心の奥にある琴線が共振・共鳴するからなのだろう。
年賀状も随分減らしているものの惰性で出している部分もまだあって、昨近の伝達手段が発達している状況の中で、年賀状のやり取りに疑問を抱いたりもしている。必要最小限にして、いるのが現状のようだ。
年賀状は単なる伝達手段にとどまらず、生真面目な日本人の間に定着した文化。文化は無駄の塊でもある。無駄を楽しむのが人生とも言えるが、何事にも経費も要る。
彼が生まれた昭和24年(1949)は郵便葉書は2円だった。それが、昭和26年(1951)5円、昭和41年(1966)7円 、
昭和47年(1972)10円 、昭和51年(1976)20円 、昭和56年(1981)30円、平成元年(1989)41円、平成6年(1994))50円 、平成26年(2014)52円、平成29年(2017)からは62円となっている。
20円の頃から出し始めているわけだが今やその3倍、出す年賀状も年々増えていくわけで、経費も馬鹿にならない。
最近は個人情報保護の意識が高まって、学校では名簿や連絡網が作られず住所がわからなくなり、インターネットが普及し、年賀状に否定的な意見も目立つようになった。
無駄とも思える年賀状を手間ひまかけて送りたいと思う人もまだまだ居るにはいるが、その数はぐぐぐーんと右肩下がり。
「年賀状は元日に届かなくてもいいから、出したければ出し続け、しんどくなったらやめたらいい。正月から神経質になって目くじらを立てる必要はないし、もっと気楽に考えて、文化の一つとして楽しめばいい。」という意見もある。
最近は「終活年賀状」といって「今回を持って廃止します」と書き添える人が増えているらしい。葬儀サービス会社が、昨年末に65歳以上の約200人を対象に行った調査では、「終活年賀状を受け取ったことがある」が57%で、「出したことがある」は6%だったとか。
終活年賀状にたいする意見(朝日新聞) ●「年賀状を作る気力が衰えてきたので、昨年から付き合いの少ない知人には『年賀状を最後にする』と書き添えて送りました。心の負担が少なくなるのを実感しています」(愛知県・70代男性)
●「私の親も昨年、終活年賀状を出して今年から書かないと決めました。親から相談を受け、私が文章を考えて『今年限りで……』というような内容で出しました。やはり高齢になると書くのもおっくうになりますよね」(愛知県・50代女性)
●「年長者に辞退は言い出しづらいです。今年書く年賀状では、年下には『辞退』を書き添えようと思っています」(神奈川県・70代男性)
●「学校を卒業してから一度も会っていない人にいつまで年賀状を出し続けようか考えてしまいますが、今年も年賀状をもらったので、来年の年始のごあいさつ状も出すと思います。終活年賀状の記事を読んで『なるほど』とも思いましたが、新年早々、先方をしんみりした気分にさせるのもどうかと思ってしまいます」(広島県・40代女性)
●「終活年賀状を受け取ったことがありますが、年明け早々、気分が良いものではなかったです。事情は理解できますが、丁寧に書かれていても、どこか身勝手で一方的に感じました。終活年賀状を宣言するなら、年内のうちに届けてほしいです。そしたら、こちらからも年賀状を出さないので収まりがよいです」(大阪府・40代女性)
●「数年前から、終活年賀状を何枚か受け取りましたが、毎回結構なショックを受けました。私とは関わりを持ちたくないんだなと、見捨てられたような気持ちになってしまいました。それぞれに考えがあることはわかりますが、やはり寂しさを感じてます」(東京都・50代女性)
●「毎年やめようかと思いつつ、毎年いただいた年賀状に我が家からの年賀状を『楽しみにしている』と書いてくれる人がいるので、旦那が張り切って続けています。ただ、終活年賀状をいただいた人に出していいのか、毎年悩みます。どうなのでしょうか?」(東京都・50代女性) | 受け取った側には「新年早々、絶縁状をもらいたくない」(東京都・40代女性)との否定的な声もあり、年賀状ではなく暑中見舞いなどで事前に辞退宣言すべきだとの声も。
N氏が考えるカットする年賀状の対象は、全部プリントで手描きの部分が全くないもの。儀礼と惰性と義理の何物でもない。相手の無駄を省いてやることにもなり、一石二鳥というもの。こちらから出さなければ来なくなるのは目に見えている。
今年は60枚ほどだが、来年は半分まで減らせるかなと思いつつ、今年貰った年賀状を眺めている。1年前の年賀状を見るのも案外面白い。
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