♪ 非日常を味わうために出かけゆくホールに響く弦百二本
知人がビオラをやっていて参加している楽団の定期演奏会があるというので聴きに行ってきた。ビオラを聴く機会などないし弦楽合奏というのも初めてなので、興味津々で電気文化会館のコンサートホールへいそいそと。
楽団員がMC役も務めていて、冒頭、手短に曲の解説や作曲者のエピソードなどをしてくれる。かなりのベテランが担当しているだけあって慣れたものだ。
先ずは、モ-ツァルト「セレナード題番二長調『モレナータ・ノットゥルナ』」から。43回目の定期演奏会とあってさすがに堂々たるもの。その総勢26人の奏でる弦楽器の迫力はなかなかのもの。ティンパニーが入って一層迫力が増して冒頭から圧倒されてしまった。
4人の独奏楽器(ヴァイオリン2、ヴィオラ1、コントラバス1)が前に出て、全体との合奏という形式になっていて、その変化にとんだ構成も面白かった。
二曲目は、芥川也寸志「弦楽のための三楽章(トリプティーク)」。かなり技巧を凝らした曲で、演奏も難しそうな部分がたくさんあって変化に富んでいる。フォルテシモの部分ではかなりの音量で、ホール全体がうなりを上げるように共鳴しその迫力は生ならでは体感だ。
三曲目は、エルガー「セレナードホ短調 作品20」。全体に穏やかな旋律と曲調で、指や体がリラックスしてきたのか、伸び伸びとした演奏が心地いい。
ここで何の前触れもなく休憩が入った。コロナ対策で、グループは席を詰めてその他は一つ空けて座るようになっていて、それを加味してほぼ満席という感じ。愛好家にとって1000円でセミプロ?の弦楽合奏が堪能できるのは有難いこと。
再開したステージの中央にマイクが用意されて、一人のメンバーが説明を始めた。いつもならここで歌を歌うことになっているという。緊急事態宣言も解除されて、直前まで歌えることになっていたのにやっぱり許可が出なかったと。
でも、「夜明けの歌」をやる枠が取ってあるので、無しにするわけにもいかない。合図するから、その時は声を出さずに心の中で歌ってくださいとの前振りが入る。
アレンジを変えて4ー5コーラス繰り返えされたその間、合図のあったコーラスに口を開けず鼻歌風に息を思いきり吐いて歌う。少し気分が変わったところで、最後の曲、レスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲」に入った。
変化にとんだ曲で、楽器群ごとに奏でる部分も構成されてあり、メンバー全員が紹介されるように展開されていく。弦楽合奏という同種の楽器だけで編成された最大公約数的演奏は、その難しさも垣間見せてくる。かなり弾きごたえのある曲のようでありまた、聴きごたえのある曲だ。
管楽器の入らない宮廷音楽のような雅やかな音の世界に、外の暑さを忘れて(名古屋は31度を超えたらしい)聴き入っていた。反響のバランスのいい電気文化会館のホールは、小編成のアンサンブルには最適だろう。しらかわホールよりもいいような気がする。
それにしてもコントラバスの音はいいねえ。大きいだけに音量が豊かでその低音が腹の底まで響いてくる。コンボのダブルベースも好きだけれど、ホールにひときわ重く大きく響く2台のコントラバスは、弦楽器の中で特別な存在と言える。他は4本なのに対して、弦が5本あるというのも意味深い。
ジャズのオーケストラとは違ってソロパートなどはない。ビオラの音は6人の合奏部分で聴いただけなので何とも言えないが、ソロには向いていない大人しい音だ。独奏用の曲もあまりないらしい。人の声に一番近いらしいが、却って音程の狂いなどが目立つ気がする。
何故、知人がこの楽器をやるようになったのか知らないが、この楽団で同じビオラをやっている女性と出会い結ばれたのが今の奥さんだということは聞いている。一番後ろの列なので良くは見えなかったが、隣同士で並んでいたようだ。夫婦が同じ楽器をやっているというのはどういう感じなのか。
ビオラ同士では合奏というわけにもいかないだろうし、練習はどうしたって伴奏が必要になる。両方がピアノも弾けて、お互いの伴奏をし合いっこしているなら別だけど、どうなんだろう。
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* ウクライナ応援の思いを込めて、背景を国旗の色にしています。