♪ 胸の奥に仕舞われている蒼インク真夜に浮き出て夢を染めゆく
ゾッとする夢を見た。どこか知らない国に置いてきぼりになっていて、何が何だかさっぱり分からない。言葉も分からないし、文字もアラビア文字のようなマレー文字のようなもので、何が書いてあるのか見当もつかない。アジアの何処からしい。日本に帰りたいが、どう対処するか何をするべきなのか、ただただ途方に暮れている。
街とは呼べない発展途上国特有の雑多な集落で、ポンコツトラックが何やら積んで行き来している。
何故か日本語が聞こえてきて、その人を捕まえて「大きな町へ行くにはどうしたらいいか?」と聞いてみると、「大きな町なんかない」という。日本に帰りたいと言うと「〇〇へ行けば」という。騒音が酷くてよく聞き取れない。忙しく働いている最中でゆっくり話など出来ず、車に乗って行ってしまった。
大使館と言ったのか?そうだ大使館に行けばいい。そう思ったところで言葉が分からない。英語が出来るわけでもないので、例え英語表記のものがあったとしてもダメだ。しかし、外交関係があれば別だが、なければ大使館なんかあるはずもない。
食事は?寝るところは?水は? 現地のお金など持っていないし、店らしいものもない。拠り所になるようなものがまったくない。俺はここで野垂れ死にするのか? 何か、し様がないものか?
ジョン万次郎は無人島に漂着し、食料の調達に偶然やって来た捕鯨船の船長に、仲間と共に助けられ、船に乗ることが出来た。自分はただ一人漂着して、助け舟も来ない陸の孤島で途方に暮れているようなもの。一蓮托生の船の上にいるわけでもない。
夢とは不思議なもので、夢の中では自分の意識が働いていて、その夢の意味などを考えたりしている。何で俺はこんな夢を見ている?
そうか、俺ってこの状態と同じような環境にいるんじゃないか。自分は世間から隔絶した生活をしているんじゃないか。自分の価値観だけで他を寄せ付けず、狭い世界に身を置いて孤絶した状態にいるんじゃないか?
確かにそうだ。苦手なものを遠ざけて価値観の合わないものを切り捨て、気位とプライドばかりがシミの様にへばりついている。そんな雁字搦めの状態を自分から作り上げて満足している。まるで片輪だ。バカ者だ。世間知らずの巌窟王。ガラパゴスの亀みたいなものだ。
そんなやるせない気持ちを伴って、つぎつぎと不遜な自分の姿を忌む気持ちが湧き上がって来る。“孤独を愛する人はさみしがり屋なのだ” なんて言葉がふと浮かぶ。
啓示を受けたような複雑な気分になったところで目が覚めた。
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* ウクライナ応援の思いを込めて、背景を国旗の色にしています。