♪ 柿食いて前歯の欠けし年の暮れ米寿卒寿の人数多なり
隣家から頂いた、熟していてとても美味しい柿を食べていた。種のない次郎柿だったがその柿だけ、種が1個入っていた。剥いて小さく切って食べていた。その種のあるやつを前歯で咥えて取ろうとしたら、歯がぽろっと欠け。あまり力を入れていなかったんで、ショック。
歯そのものが脆くなっていたらしい。歯茎の根元がすり減って補修のプラスチックが貼ってあった歯だ。
一週間ほどそのままにしていたら、カミさんが「麻酔の注射が入荷しにくくなっていて、医院によっては在庫切れの心配があるらしいよ」と言って来た。コロナワクチンの製造過程でゴムか何かの小片が混入し製造が滞ってしまい、他の注射液にも影響が出ているというのだ。歯科助手をしているのでそんな情報が入って来る。
歯医者に行くのが遅れたのは、今まで通っていた歯科医がどうにも嫌いになってその歯医者に行く気がしなかくなっていた。じゃあ代わりをどこにするか。カミさんがお世話になっている歯科医院が良いがちょっと遠いし、何故か私が行くのを嫌がる。それで迷っていた。
いろいろ考えた挙句、家からたった3分の一番近い歯科医院に行くことに。ずいぶん昔に向かい側の小さなビルにあったころに一度行ったことがある。大変わりして場所を変えて立派な歯科医院になってからは行ったことが無かった。
歯科医院はコンビニよりも多い過当競争の業界で、評判が悪いと患者は寄り付かないし、ちょっとでも悪いうわさが立つと閑古鳥が鳴くことになる。幸い評判は悪くなさそうで、繁盛しているらしいので行ってみることに。
常勤の医師2人と非常勤1人でやっているらしい。若い細身の先生が担当で、物腰柔らかく丁寧な対応。初診なので顔を一周するレントゲンを撮り、口内の写真を数枚撮影。鏡を使って撮るというのは初めてだった。全体の歯茎の状態をチェック。
データの説明と治療方針の説明などあり、予約もたくさん入っているのか、それぞれに待ち時間がけっこうあった。
40~50分経って、もうこの日はやらないのかと思っていたら、「欠けた前歯を今から治します」と。削って被せることもできるが、削ってしまうのはもったいないのでプラスチックの板で形を整えるとの説明は最初に聞いていた。「半分ほど欠けているのであまり強くはないですが、当面はこれで様子を見ましょう」。下の歯が当たる部分が、欠けた少し上なのでぎりぎりセーフなんだとか。「もし欠けたら、その時また考えましょう」と。
神経に近いので注射をするという。カミさんの、麻酔薬が無いと困るというのはこのこととだった。一瞬で終わると思ったがけっこう時間をかけての注入。麻酔が効くまで1分半ほど待ったが、その後は思ったよりも早く作業は済んだ。
診察室は狭く、逆にそれがアットホームな空間になっていて、先生、スタッフがとても身近に感じらるのがいい。
この日の会計は2,980円。家に戻ったら13時近く、1時間以上かかったことになる。
今まで掛かっていた歯科医が丁寧な治療がしてあり、それに準じて治療していきますと言う。歯周ポケットは問題ないし、部分入れ歯もうまくできている。下の部分入れ歯も、折れた金具を取り換えれば良い。ほんの小さな虫歯がいくつかあるし、歯石除などの歯のメンテもやることになる。
2日間出ていた不整脈がピタリと止まった。歯医者のことが無意識に心に負担になっていたのだろうか。そんな気弱なはずはないと思っていても、対人恐怖症的な性向を持っているので案外そうなのかもしれない。写真を見ても、なんて小さな口だこと。口が小さいのは人相学的に小心者と言われている。まさにそういう事なのだろう。
若い頃は、そんな自分を変えたくていろいろ頑張っていたが、年を取ってきて気弱になって行くのは人の常でもある。そんな自分を肯定して、十分に愛してやって自分を慈しんで死んでいきたい。
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