♪ 蟻んこをひねもす見てる変人の分からないのがまた分からない
「分からない」と「知らない」は、まったく意味が違う。知識として知っているつもりでも、本当のことが分かっているとは限らない。新聞の見出しを読んでああそうかと分かったつもりになる。表面的なことに終始してしまえば、本当のことが分からないまま置き去りにされてしまう。
他人に話すときにちゃんと理解していないと話が出来ない。いざ話し始めて途中からしどろもどろになる。最初からそれが分かって話すのを止めてしまうこともある。
自分も何度もそういう経験をしている。そのたびに “分かってないなあ” と自分に嫌気がさし、自己嫌悪になったりもした。
知ったかぶりをしていると、結局は自分を窮屈にして忌憚のない意見など言えなくなっていく。分からないものは分からないといってしまった方が、先が開けていくように思う。
「分からない」のは悪い事じゃないといっているわけだ。誰だって何だって最初はわかないところからスタートしている。分からないものに出会ったら、 “最初なのだからしょうがない” と思えれば気が楽というもの。
私は何でもやりたがりなのに教えを乞うことをしない。何をやるにしても分からない状態で始めるので、そういう風に思うことには慣れている。
「新しい空気を吸えるまでの潜水」とは良い表現だ。知識とは厄介なもので、「物識りですねぇ」なんて言われるのが曲者。ついその気になって知ったかぶりをしてしまう。
いつも初心者の気持ちでいれば、知ったかぶりもないだろう。
知識欲と探求心はまず疑問あって、分からないから調べてみる。「見晴らしのいい場所」を探しに行くわけだ。
「JSEC(ジェイセック)2022(第20回高校生・高専生科学技術チャレンジ)」で「ソニー賞」を受賞した箕浦祐璃さん、光吉音葉さん(文京学院大女子高2年、東京)。
江戸時代の人々を魅了した化粧術「笹紅(ささべに)」に興味を持った。笹紅は赤い紅を塗り重ねたはずの唇に、つややかな緑の光沢が宿る技法だ。でも高価な紅は高嶺(たかね)の花。当時の庶民が身近な物を使って、笹紅の緑をまねていた「裏技」を復元し、幻想的な謎を解き明かすことに成功。
墨と紅で再現した緑色は、実際とは違う色を認識してしまう「錯視」の効果で、人間の目には機械で判別できない緑の光沢が見えると結論付けた。
箕浦祐璃さん、光吉音葉さん(朝日新聞)
世界の高校生らが科学技術の自由研究の成果を競う「リジェネロン国際学生科学技術フェア(ISEF)2023」64の国・地域から1638人が参加し、日本からは11組18人が参加。日本代表の3組4人が各研究部門の優秀賞(2~4等)を受賞し、その1組(材料科学部門4等)に選ばれている。
「ああでもないこうでもないと思い迷う権利」を行使し、果敢に挑んだ結果、「見晴らしのいい場所」にたどり着いた。素晴らしいことです。おまけに賞金500ドル獲得だ。
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