♪ ペット猫が野生本能見せつけて野鼠喰いおる月の無い夜
アランが、だだだッと駆け込んできて、ちょこまかと走り回っている。さては、また何かを捕まえて来たか。何か小さな生き物。蜥蜴? 捕まえては放しまた捕まえては逃がす。
テレビの後ろに入り込んで出てこないのか、見つからない風で、きょろきょろしている。染色場の戸が少し開いていたのでそこへ入り込んだのかもしれない。しばらく探していたが、諦めてまたすぐ外に出て行った。
しばらくすると、また何かを咥えて戻って来た。小さな鼠だ。
動かない。死んでしまったのかと触ってみると、足をぴくぴくやっていて、まだ息があるようだった。
パクッと咥えた、と思ったら、ぐしゃ、ぐしゃ、ぐしゃッと食べ始めた。いつもは遊んで、死んでしまえばそれでお終いなのに・・。
一気に喰ってしまうのかと思ったが、尻尾のついた半身が口からポトリ。一息ついている。
そしてまたパクッと咥えて、むしゃむしゃと食べ始めた。
とうとう全部喰ってしまった。その間2分ほど。
普段はキャットフードしか食べないので、生の獲物は食べ慣れていない。歯に伝わる肉と骨の感触、舌で味わう生肉のジューシーな味。こんな小さな鼠でも、アランにとってはそりゃあ新鮮な味なのだろう。
最初に逃げられてから2度、このイベントは繰り返された。いつもは食べずに放置するのに、どういうわけかこの日は違った。今年生まれた子どものネズミだったのか。巣の周辺にまだ何匹かいて、そこへ行っては2度3度と捕まえてきたのだろうか。
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人間に依存し、エサも寝場所も安全も与えられて、ぬくぬくと生きている猫。そんな猫でも野生の本能は持っている。時としてその本能が顔を出し、血が騒ぐのだろう。狼なら満月の夜に遠吠えをしているイメージが出来上がっているが、猫族のそれは、あまり語られることがない。
念のために月齢を調べてみると、前日の14日が月齢0.7(新月)でその翌日のこと。無月の夜だったことが判明。
暦のページより
カミさんは、エサをもらっているのに・・・“鼠が可哀そう” と、浮かぬ顔をしている。アランは今までの猫の中でも野生の血を多く持っている猫のようだ。何かにつけ敏感で、警戒心が非常に強い。他の猫も野鳥を良く捕まえてきてはいたが、鼠を食べたりはしなかった。
家の中で逃がしたネズミはどこへ行った? 以前、ネズミの糞やせっけんを齧られたりしていた問題が解決して、落ち着いていたところなのに・・・。
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