我が家には、今週の木曜日まで、
もう16年目になるという日産スカイラインGTーRがあった。
今から16年前。私たちが結婚したその年。
職場の一泊旅行で金沢から帰った私に夫は興奮しながら言った。
「スカイラインGT-R買ったから。」
色は「ガンメタ」と呼ぶ濃いグレーで種類は「32R」ということがあとでわかった。
夫はもちろん、同居の今は亡きお姑さんも、興奮気味だった。
日産から、その年のクリスマスには、焼いた七面鳥が届いた。
お姑さんが苦労して取り分けてくれた。
はじめて食べる料理だった。
買ったまんまのまったく改造していない純正そのままだった。
ほとんど家族を乗せない、夫が今日も、この時間も、今なお心から愛する車だ。
バッテリーや部品の交換はメンテナンスでお願いしたが、
ひたすら、買った姿のままを夫は頑なに維持した。
夫が手放す日。
「最後の日の姿をデジカメに残したら?」
とデジカメを貸そうかと言ったら、夫は断った。
夫から、「・・・最後にGT-Rに乗りたい?」と聞かれたが、
「木曜日は遅くなるから、無理。」と断った。
今我が家は、家の建替え中で、
ガレージの中にもそうとう埃や泥水が入った。
洗車もできていない埃まみれの姿を
最後の姿として残したくないという気持ちがすぐに分かった。
木曜日、夫は仕事を一日休んだ。