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カテゴリ:紅影オリジナル詩!!
夜眠る前に、君と電話で幾つもの言葉を交わすとき、
彼はよく理想みたいなことを口にする。 少なくともそれは、 ”自分はこう在りたいんだ” っていう表明であるだろうし、 走り続けるためのゴール地点に立てた旗のようなものだと思っていた。 彼は言う。 ”理想とは、そこに完璧には辿り着けないことを知りながらも、 必死で喰らいついていく、人間のあがきみたいなものだ” 過去何人もの偉人たちが、神を目指し、愛を目指して破れていったように、 諦めを知りつつも本気でたどり着けると信じているような、 どこまでも矛盾した思考回路が、彼の生き方には必要だった。 ううん、 ホントはそんな格好のいいものでもない。 理想を口にすることで、 小さな自分を隠したかっただけなのかもしれない。 ちっぽけな自分を守るために。 俺はいつも君を愛していたいけれど、 君を傷つけてばかりいるよね。 たとえば、夕べ、 君との小さな約束を、ふとしたことで破ってしまって、 俺は君にとって理想の男になるはずが、 結果的には、最低の男なんだ。 愛なんかよりも、 信頼とか、そういったものが、 現実的にはよっぽどリアルなんだろうね。 君はただ、最低だね、って。 俺はただ、ごめんね、って。 そんな言葉のやりとりを、 反射的に繰り返している。 彼には、譲れないものがあった。 でも、そんなもの捨ててしまえばいいと思った。 現実がいつも思考を追い越してくれる。 俺は、きっとね…、 君を幸せにするために生まれてきたんだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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