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会社を辞めてから 半年ぶりに支店に遊びに行った 入り口に僕が作ったポスターがまだ貼ってあって ちょっとだけ苦笑した エレベーターに乗り 受付に行くと 変わらない顔があった ただ 人数が少なくなっていた 受付の子といろいろ雑談をする 「なんだか 人が少なくて寂しいね」と僕が言う 「ええ・・・ この支店も 来月で閉店なんですよ・・・」とポツリという 「え・・・ そうなの? このエリアの中心だったのに?」 「そうなんですよ・・ 私もどうなるのかわからなくて・・ 首になっちゃうのかも」と言って寂しく笑った 「大丈夫だよ これ以上人を減らしたら やっていけないだろうし・・」 「そうですね・・・」 「ちょっと 部屋見せてもらうね」 僕がメインで仕事をしていた部屋のドアを開ける 夕暮れの日差しが差し込んでいて 床に陰を作っていた 僕が居たときと あまり変わっていなかった 椅子に座り ぼんやりと 部屋を眺めた あの場所に立って 隠れて夏と抱き合ったり キスをした このパソコンで 夏とチャットで話した あのテーブルに座り 手を握って 愛している と言った 二人で 窓の外を眺めながら どうしようもない現実に 涙した この部屋は 思い出が多すぎる 壁にはあの頃と変わらないシミがあって 目をつぶれば 夏の髪の感触や匂いを思い出すことが出来る 今にも 夏がドアから覗いて 「ゴハン食べないの?」 「帰れないの?」 と言う気がする この部屋に来れば いつでも彼女を感じることが出来た 窓の外の空は 彼女へと続いているだろう でも その下では 新しい人生を歩んでいる彼女がいる 両手で顔を覆う 床に 新しいシミが出来る 僕たちが存在していた場所は もうすぐなくなる 椅子を戻し ため息をつく 後ろを振り返ることなく ドアを静かに閉めた お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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