カテゴリ:文・ことば
私の座っている場所から店の外がみえた。 眩しさが増した日射しの下を緑の髪をした 透明なひとがたがすっと動く。 うすい羽衣とでもいうのか きれいに透き通る衣装をまとって。 瞬間 目があった。 確かに新緑色の目がこちらを見た。 思わずどきりとし、 遠くの景色に目を向けてしまう。 今のは何だったのかーーー 人かそれともーー そんな思考は一瞬だった。 すぐさま視線をもどす。 と 澄んだ風が私をつつみ、急にとおりすぎていった。 一服の紅茶の湯気がかき消され 使い込んだ品物のリストがふっと風に乗る。 店の外は相変わらずの眩しさ。 だが 夏の香りは まだ おぼろげで 春の草木の残り香がした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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