《人世间》下巻
や~っと読み終わりました!《人世间》下。上中下合わせて約1,500ページ。長ぇよ!(;゚Д゚)/気になる部分やツッコミどころに貼った大量のふせん。昼休みに会社のデスクで読んでいる時には仕事用のふせんも使っちゃいました。しおりは市内の書店のレジでもらった三笠書房の「知的になるには読むシカない!」。というわけで、《人世间》下巻は2001年から2016年くらいまでのお話。中巻のラストは、主人公周秉昆が骆士宾という悪役の人とつかみ合いの喧嘩になるところで終わるのですが、下巻の最初ではいきなり12年が経過していますよ。つかみ合いの喧嘩の末、骆士宾が亡くなり、周秉昆は過失致死(別の罪状かも?)の罪で12年間服役していたことになっているんですね。その間は空白です。この《人世间》。内容は・・・何なんだろうね?大ざっぱに言うと中国のA市という市にある光字片という貧民街(←この言葉使っていいの?)出身の周家の三兄弟と、周家の末っ子周秉昆の幼馴染たちを通して、文革から現代中国社会の変遷を描いたお話です。下巻はそのうち2001年以後のお話。①周家の長男周秉义は品行方正で優秀な人物で、高考復活後北京大学に進み、幹部の娘と結婚し中央政府の役人となる。②周家の長女周蓉は文革中に北京の詩人と結婚し、娘を出産。文革終了後に離婚。離婚した夫が娘をフランスに連れて行ったのを追いかけて自分もフランスに行き、そのまま娘と12年フランスで生活する。フランス帰り。母娘そろって結構イケイケ。③周家の末っ子周秉昆は文革中にわけありのシングルマザー郑娟と結婚し、彼女との生活を優先させて高考が復活しても大学には行かず、兄のコネも利用することなくずーっとずーっと底辺の労働者として真面目に働く。④光字片に住む周秉昆の幼馴染と木材工場や醬油工場で周秉昆と知り合った仲間たちは文革後、大学に行く者もありましたが、大半は以前と変わらない労働者階級。①~④の人物たちとその家族や関係者のお話。主人公は周秉昆(のはず)ですが、章によっては周秉义が主役になったり周蓉が主役になったり。まるで「文化大革命とその後の中国のあゆみ」という教科書を読んでいるようでした。周秉昆の息子楠楠がアメリカ留学中に銃乱射事件に巻き込まれて亡くなったり、周蓉の娘周玥がお金持ちの社長と不倫関係になったりと現代っぽいエピソードも入れつつ、教科書で読むような中国の出来事やそれによって発生する問題を①~④の人物を通して描写していました。特に396ページから400ページの周蓉とその夫(再婚した2番目の夫ね)蔡晓光の会話はまるで「中国の医療制度の問題点」という社会の教科書の一単元でした。「ひぃ~!教科書やん!」と思ってなんだか恥ずかしくなっちゃった(←なぜ?)。というわけで、この《人世间》、しっかり読めば文革中から現代までの中国の変遷がよく理解できると思います。本当にNHKのドキュメンタリーを見ているみたい。周家の三兄弟が長男周秉义:北京大学卒の支配階級(政府の役人)長女周蓉 :ちょっと進んだフランス帰り次男周秉昆:限りなく底辺に近い肉体労働者と三人三様の社会階層の人間となるのも中国社会を隅々まで取り上げたいという作者の考えでしょうか?また、中国社会の変遷を詳細に描いている割には1976年の第一次天安門事件ははっきり描かず「匂わせ」で表現したり(わかる人には分かる描き方)1989年の第二次天安門事件は周秉昆が服役中に起こって小説中では全くなかったことになっています。その点では本当に「優等生」な小説だなと思ったり。とりあえず、文革中から現代までの約50年間を小説中の登場人物と一緒に過ごしました。あと、《人世间》を読んでいると、日本人の私から見たら中国人は信じられないくらいコネに頼る民族みたいに思えるんですけど、これがオーバーに描写しているのではなく真実ならちょっと驚きですね。ほんとなの?