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カテゴリ:HASIRA生活日誌
第二話
懐疑心を心の中に沈めて、僕はKを待つ。一人車の中でKを待つ。 煙草の代わりの缶珈琲はもうぬるくなっていて、僕はアスファルトに黒いつばを吐く。みるみるうちにその染みが僕の気持ちを暗転させる。 慌てて僕は薬を飲んで、気分を安定させ、そして作り笑顔を鏡でチェック。連日の会議と企画書の作成で、パッとした顔つきではないが、無精ひげだけは剃られている。 完璧だ。僕は満足する。 しばらくしてKがくる。仕事だというのに、紙袋一杯の荷物を持っている。 コテ、タオル、雑誌…長旅になるんだから、これくらいは必要でしょう?と上目遣いで僕を見る。 「参ったな…」 僕は頭を掻いて対応する。そんなKにますます惹かれていく自分が情けない。 僕たちは30分遅れで、目的地へと向かう。 僕は可能な限り、彼女を見ないように努める。 運転に支障があるとか、ではない。僕の想いに気づかれたくないだけだ。 何百キロもの長い長い時間。僕たちはたあいもない話を繰り返す。 彼女が寝息を立てている間も、僕は、僕たちを運ぶマシーンとなって、走り続ける。しかしそれは出口のない道のりでしかない。 袋小路の奥に、希望はありえない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/11/10 01:12:42 PM
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