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カテゴリ:HASIRA生活日誌
第十一話
冬物のコートを着て、車を磨いて。 彼女が乗るのをジッと待つ。 ぬるい珈琲が、どんどんと冷えていく。 僕はもうこうして何度も彼女を待つ。 僕の思いなど伺い知らぬ彼女は、 僕の事もすっかり忘れて仕事に没頭している。 僕は、かじかむ手をさすりながら、彼女の姿を目で追う。 それが倖せであると、感じてしまうことが哀しい。 いつもの会議室で、僕は彼女に気取られまいと役に立たない煙幕を張り続け、言葉につまればこっそりと部屋を抜け出す。 そんな風にしか切り抜けることができない。 狂人ができることはそんな程度だ。 しかしそんな宝物を、せっせと磨く僕は、やはり狂っているに違いない。 きっとそうだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/11/19 12:07:28 AM
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