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カテゴリ:HASIRA生活日誌
第十六話
電話が止まっているので、見聞きできない。やれやれいい言い訳ができた。と思っていたら、そんなことはない。神の御加護…というよりは、もはやお節介としかいいようのないそれは、パソコンの電子郵便を残しておいたので、相変わらず仕事の連絡は入ってくる。 とうとう諦めて、友人たちをかきあつめ電話代を手にした僕は、電話代を払いに車を飛ばす。 そして見事開通した暁には、僕はいの一番に彼女へと電話をかける。 「君の声が聞きたかったからに決まっているじゃあないか」 国道沿いで僕は本音まじりの冗談を言う。神様。どうか僕の真意に気づきませんように。 今日は某俳優さんのシャンソンショーがあるので、節野とともに訪れる。 彼女は「怪しい」を連発していたが、僕の気持ちはそれどころではない。 ショーが終わってから、僕は節野を連れて彼女の職場へと訪れる。 なんでそんなことをしているのかよく判らない。 ただ彼女に近付き過ぎた僕は、必死にそこから抜け出そうとしていることは事実である。 とにかく僕は彼女とこれ以上深くなることを望んではいない、と思う。 いや望んでいるからこそ、望んではいけない。 我ながら判らない論理だ。 判らない。そもそも判りたくない。狂人の思考なんて。 節野は、そんな僕を年老いたと言う。 「昔のあなたはそんな人じゃあなかったでしょう?」 そうだな…と僕はグチる。 テレビ塔が頷くように何度も瞬いている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/11/27 01:08:24 AM
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