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カテゴリ:HASIRA生活日誌
白い矢が、愛車目掛けて飛んでくる。
慌ててライトを下向きにしても、どんどん、どんどん。 高速道路にふる雪は、僕の顔を凍てつかせる。 「幻覚の割には寒いすね。」 助手席の大志が細い身体を震わせて舌打ちをする。 それでも「くるんじゃあなかった」と言わないところが、彼のいいところかも知れない。 思えば昨夜のパーティではいろいろなことがあった。ゲストできていたZZTOPのBilly F.Gibbonsに、あそこまで無理難題を言ったのは、狂人の強みか。 その場面を思い出すと、口の端が持ち上がる。 「気持ち悪いな。また女の子とをかんがえていたんでしょ。」 大志が笑う。 そりゃあそうだ。いまや僕は彼女無しには語れない。 今回も道中、大志には散々とこの話を聞かせた。1時間に30分の分量だ。 それでも「くるんじゃあなかった」と言わないところが、彼のいいところかも知れない。 深夜になって、僕は彼女の勤め先の近くを通りかかる。 すると彼女からの電子郵便だ。 「ごはんを一緒にたべない?」 羽根の生えた僕は、助手席で眠り込んでいる大志をいいことに、彼女の指定する店へとハンドルを切り返す。 「こうして逢わなければ、火曜日迄逢うことはなかったのに。逢わなかった最長記録になったかも知れないのに。」 もちろんそんなことが耐えられる訳がない。昨日会えなかっただけで、僕は今回の仕事を請け負ったことを後悔していた程だ。 道中いくつも現われる観覧車。僕は君にそれを見せたかった。 道中いくつも現われる大きな橋。僕は君にそれを見せたかった。 道中いくつも現われる巨大なビルディング。僕は君にそれを見せたかった。 道中いくつも現われる愛らしいネオンサイン。僕は君にそれを見せたかった。 僕は彼女がいない空虚を、彼女にどう伝えたらいいのか判らない。 だから「疲れた」を連発し、カウンターに顔をうずめて話をする。 僕は、彼女のことを愛し過ぎている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/12/05 11:53:35 AM
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