世界は永遠ではない。
世界は永遠ではない。
世界は永遠ではない。
その癖、僕は「また明日」と言って、彼女と別れる。
夕暮れが僕たちの膚を冷やし、あと数時間もすれば、この町は闇に包まれる。
帰り道、僕の車はスリップ事故を起こし、見事に大破。運転手は即死。
あるいは不意に立ち寄ったコンビニエンスストアーが強盗に襲われ、巻き込まれて包丁で刺殺。
あるいは彼女とて、無事でいられる保証はない。
それとも何万人規模の殉礼者を伴って、災害に巻き込まれてみようか。

何も悲観している訳ではない。ただ僕は、仕事で世界中を駆け回り、ほんのちょっと見聞がある。そこで世界が永遠ではない事実を知っている。それだけのことだ。
夜道で2mちかくある黒人に不意に殴られた時もある。
ピザ屋を装った爆弾魔を見たこともある。
映画館で日本人バッシングにあったことも、ホモの中年男性に札束で叩かれたことも、タクシー運転手にナイフで脅されたこともある。
日本国内でも同様だ。
もう随分前になるが、地下鉄テロが起こった時、僕は成田にいた。
成田が血の海と化さなかったのは、のんびり屋の日本警察が、成田の閉鎖までに時間がかかったからだ。…いやフライトに支障がなかったから閉鎖までにかなりの時間をかけたことになる。

つまり、そういうことなのだ。
僕は神を信じていないし、死ぬことやモノが壊れることに何の感慨も持っていない。
そして世界がいともたやすく壊れることを知っている。
いや、壊れているのは僕の方なのか。