若さま捕物手帖 「地獄の皿屋敷」前篇・・・(1)
「若様侍捕物手帖 地獄の皿屋敷」前篇1956年2月 封切 若さま侍捕物帖シリーズ1作品目ですそしてデビュー三作品目での初シリーズもの、そして大川橋蔵初主演ものになります。若さま侍の第1,2作には吉田正さん作曲の「若さま侍」の歌(テーマ曲とでもいいましょうか)が流れます。第3作にはこの歌を小畑実さんが歌っています。 花の大江戸 八百八町 おいら天下の 若さまだ 伊達にゃ見せない べらんめえ堅気 腰の大小の 落とし差し 若さま侍 江戸姿 江戸姿 若さま、ご出馬の途中 「若さま侍」のテーマ歌で始まり始まり。楽しい明るい歌なのでこの映画本当に事件物なの?・・と思ってしまいます。深夜屋台の蕎麦屋で、怪しそうな男が蕎麦をすすっていると遠くで「ギャー!」という叫び声がする。遠州屋小吉ととん平が慌ててやってくると、宗十郎頭巾で般若面をつけた男の姿があり、追いかけるが取りにがしてしまう。(そばを食べていた男は遠州屋小吉を知っているのか見られたくないようだ。)倒れている男の顔を見た蕎麦屋が、布袋屋の番頭の豊五郎だと言う。気を失っているだけのようだった。昨夜も、布袋屋では一番蔵が狙われたのだが、何も盗られていないので奉行所には届けていないという。とん平が蔵を調べて血相を変えて遠州屋のところにやってきたが今日も「何も盗られてない」らしい。布袋屋は主人が亡くなっていて妻が取り仕切っているようだ。困ったあげく、遠州屋小吉ととん平がやってきたのは船宿「喜仙」。夕べのいきさつを話している相手は、扇子で顔を覆って横になっている着流しの御武家様である。小吉 「時に、若さま・・・いってぇ、この謎は・・」すると、「解けねえな」 扇子をはずし 若さま「小吉(しょうきち)親分にはさ」(スクリーンいっぱいのアップで橋蔵若さま、皆様に初お目見えです。今までに見たこともないような美しい歌舞伎役者から映画俳優になった大川橋蔵という人が目の前に映し出されているのですから、女性客は虜になったでしょう。わかりますわかります。声もすごい、「謎の決闘状」のつむじ風の半次の時から間もないのに、努力しましたね・・橋蔵さまの声が出来てきました、素敵な声です。台詞まわしも、テンポいい江戸っ子弁、べらんめえですけれど、とても品がよい。見ている側は引きずり込まれます。まだ、ちょっと歌舞伎的な化粧ですけれども、モノクロの映画ですからこの位であっても大丈夫。)若さま起き上がり、お銚子を持ち上げ空なので、 ポンポンと手をたき誰かを呼びます。 小吉 「じぁ、若さまには何か」そこへおいとちゃんが入ってきます。おいと「ごめんください」「お呼びで ございますか」若さま「酒がないぞ」そういわれても出す酒がないと言うおいとちゃん、お銚子を袂の下に隠している。若さま「酒屋の勘定、大分溜まったとみえるな」おいと「ええ、若さまがお神輿を据えてから急に」若さま「そいつは気の毒だなぁ、じゃ、よそへ行って飲むとしょう」と立ちかけたのでおいとちゃん慌てて「嘘です、はい」と隠しているお銚子を出す。若さまが差し出したお猪口に、おいとがお酌をすると、若さま「意地悪娘でも、酌は美人にかぎるな」 おいと「まぁ、存じません」若さま「はっはっはっ」 酒を一口飲み干すと、 若さま急に真面目な顔つきになり、お猪口を投げ出し若さま「遠州屋、出かけよう」 遠州屋ととん平を引き連れて外に出る。(おいてけぼりなおいとちゃんです。若さまを好きなおいとちゃんですが・・・若さまを好きだと思っている女の人にはつれない素振りの若さまです・・そこがいいのですけれどもね。)若さまたち三人が町を歩いていきます。バックには「若さま」の歌が流れています。行きかう人は若さまだ、と言うように足を止めます。 花の大江戸 八百八町 おいら天下の 若さまだ 伊達にゃ見せない べらんめぃ堅気 腰の大小の 落とし差し わかさま侍 江戸姿 江戸姿小吉 「ねえ、ねえ若さま、河岸を変えて飲むのも結構ですが、夕べの 一件を何とか・・・」若さま「だから今、ご出馬の途中じゃねえか」 小吉 「いってえ何処へ」若さま「三番蔵だよ。賊は何か布袋屋の蔵にある特別な何かを探して るんだ」 賊は布袋屋の蔵にある特別な品を探している。一番蔵、二番蔵になかった。 あとは三番蔵だけと言う若さまである。さあ、若さまがご出馬、布袋屋にのり込みます。どんな展開が待っているのでしょうか、興味深々です。橋蔵さまの品位は持って生まれたものなのですね。鼻筋が通った顔立ちがとてもよい。これだけのアップに堪えられる俳優はいないのじゃないかしら。綺麗で溜息が出てしまいますね。若さまは、橋蔵さまの明るくてさっぱりした江戸っ子らしさを引出してくれた作品でしたから、人気は確実なものになりましたね。続きます。