江戸三国志・完結迅雷篇・・・②
ちょっと今の回は長くなってしまいますが、一挙に最後まで書きますね。やがては、わしのことも・・幸せでな(大広間での万太郎と吉宗の会話のやりとりから入っていきま。ここは、これからの作品の流れに大切な一コマになっていると思いますので、長い会話になりますが、その様子を感じとってみてください。))万太郎、思うところがあって、吉宗に会いに江戸城へ参ります。大広間に万太郎が、「お成り~」の声が。吉宗 「万太郎、久しいのう」万太郎「将軍の座の座り具合はいかがでござりましょう」吉宗、窮屈で、万太郎の自由の身が羨ましいと。吉宗はお庭番から手に取るように報告を受けていたので、万太郎が高麗郷へ行っていたことは耳に入っていました。万太郎「将軍家にそれほどご配慮をかたじけのうするとは、万太郎家宝ものです」いつまでも部屋住まいではいられまい、養子の話がきていることを、吉宗が持ちかけますと、万太郎「養子の口などはまっぴらですなぁ。不肖ですが万太郎、いささか志も ござりますれば」吉宗 「志ともうすと・・」万太郎「羅馬へ渡ろうと思っております」吉宗 「羅馬へ」万太郎「さよう」万太郎のような自由人には、吉宗が引く政治の日本は窮屈でいたたまれないだろう、と吉宗が言います。万太郎「そこで本日は、折入ってお願いに上がったのでござりまする」吉宗は、羅馬に行く手配のお願いと思って、手配をしてやると言うと、万太郎「その前に、当江戸城のお庭を拝見させていただきたいのです」吉宗 「なに、庭? それはいと安いが、庭ともうしても山あり谷あり、とても 一日や二日では見きれまいぞ」万太郎「暫く、お数寄屋でも拝借して、滞在の予定です」吉宗 「面白かろう。あっはっは、吹き上げの庭の方へまいると、茶座敷など ぼつぼつとある」万太郎「居候なれしている万太郎です。その辺は如才なく手ごろな貸家を探して まいります」吉宗 「あっはっはっ、江戸城の中で貸家探しか、あっははは、いや神君家康公も さぞ地下で驚いていられることであろう」万太郎「家主は新将軍吉宗公、たまり家賃のご催促もありますまい」吉宗、万太郎、大いに笑います。(相手をはばからない自由奔放な万太郎、"尾張の三男坊"で知れ渡っているのですから相当なもので、かないません。)万太郎、滞在する屋敷を何処にするか見て回っています。万太郎「なるほど広い、全く深山幽谷の趣きがある。これが江戸の真ん中とは どうしても思えんなぁ。うん、気に入った。当分ここに滞在すること にする」 (京都二条城を使っての広々とした中での撮影箇所がふんだんに出てきます。行ったことある人、城内を知っている人は、何処の場所を使っているか万太郎と一緒に歩いてみてください。)万太郎は金吾と共に絵図面の半分を頼りに、夜になると江戸城内の庭からの抜け穴、けいけつ草の場所を探し始めます。金吾がお堂を見つけました「あんな所にお堂が・・」、万太郎「石上堂」と呟きます。中に入ってみると仏像が何体もあるだけ?のようでしたが、万太郎その中の一つの像に目がとまりました。しかしそのまま他を探しに出て行きます。その頃、日本左エ門もそっ八と絵図面の一片を頼りに城内に忍び込んでいました。お堂の裏にたどり着き中に入ります。目をつけたのは、そうです、さっき万太郎も目がいった像です。左エ門も今日はここまでで帰っていきす・・と、家にはお蝶が待っていました。心を決めて日本左エ門の所に来たというお蝶、俺も孤独だからお蝶のような薄命の女を探していたという左エ門。左エ門が気を許したすきに、お蝶は絵図面と黒装束を持って・・・?何処へ行くのでしょう。場所は江戸城全体を見渡せるお堀の石垣の上・・二つの影が小さく見えます。万太郎と金吾が今夜も捜索に走り回っています。その時、堀の向こうから黒い影が走ってくるのを見つけます。我らの他に夜半歩いている人間がいるはずはない、人だとすれば怪しい奴。(入り込んでいたのはお蝶なのですが)石段を降りてきた時、黒装束の者を見つけます。 相手も気がつき逃げたので追いかけます。(お蝶は先を走って逃げていますので・・映っていなくてすみません。) 黒装束の曲者を見失ってしまい、うしろを振り返った時、日本左エ門の姿があり、邪魔をしてきました。投げて来た手裏剣をかわし、今度は日本左エ門を追います。 その様子を何故か高台から吉宗が見ていました・・何を思ったのでしょう。(お堀周り全体を見渡せるところ、京都二条城の天守閣跡のところからお堀づたいの高い石垣づたいを、西櫓のところをと走り回ったりと、二条城をふんだんに使っての場面が展開していきます。橋蔵さま、千原さん、伏見さんが走ります、若さですね。)完結迅雷篇になると面白くなってきました。橋蔵さまの二条城の天守台から石垣の上を走ったり、西櫓のところを走ったり、いくらカットが入ってもカメラテスト等で何回かは走りますから大変です。千原しのぶさんは足が速くかけることは得意だったようです。伏見扇太郎さんは、こんなにマラソン?した作品は初めてだと言ってフウフウ言っていたそうです。橋蔵さまはこのくらいなんでもありません。(ここからは、万太郎と金吾の会話になります。若殿と家臣の考え、思い、の違いが吹き出していきます。)江戸城内にどうして異相の曲者が出入りする隙があるのか、謎だと不思議がる万太郎です。金吾が20日余りくまなく探したが、ピオの軌跡は何一つ見つからない、といいます。万太郎「うーん、今のところでは、ほとんど何も得るところがない」恐らく徒労に終わるのではないか、と金吾はいいます。万太郎「何故じゃ」千蛾老人の言うことが偽りだと言うのではなく、ピオがこの城内で刑罰を受けても、死骸を埋めたあとに記しを残しておくことはないというのです。万太郎「だから、どうせいともうすのだ」金吾 「将軍家のご不審を求め、またまたご本家へ迷惑を及ぼさぬうちに 断念なされた方が、賢明ではないかと心得ます」万太郎「金吾、そちは精が切れたと見える。いやなら去れ、わしは突き止めるまで ここを去らぬ」精が切れたとは憎い言葉・・そのような金吾ではないと万太郎に反発します。万太郎「ならば、何故さような事を言いだした。わしの捜索に励みをつけぬか」将軍家のご不審があると尾張家にためによくない、それが案じられると金吾は言います。それに対して、万太郎は、何かにつけて将軍家将軍家と言うが、吉宗とは部屋住み時代からの竹馬の友だと。金児 「いや、その心持は違います」万太郎「大事はない、前もって彼の了解を得てあることだ」金児 「是非もないこと、若輩者の小利口な勇だとお聞き流し願います。・・・ もう、ご諫言はいたしませぬ」万太郎「するな、万太郎は思い立ったことを貫かずには済ませぬたちじゃ」と言って背をひるがえすのです。(万太郎と金吾の関係はどうなってしまうのでしょう。自分の思いどおりを貫く万太郎、若殿の気性を知りながらも尾張家のことも考える家臣金吾。いつの世にもある光景です。この大事な時に、仲違いをしてはいけません。そこまで日本左エ門が来ているのです。先に夜光の短剣を探さないと。)道中師伊兵ヱはお蝶が黒装束で江戸城内に忍び込んでいること、日本左エ門より早く夜光の短刀を手に入れたいことを知っている、見方であり、日本左エ門の鼻を明かしたいだけだ、とお蝶を待ち伏せして言います。その時、「雑魚一匹と目こぼしてやりてえが今日は許さん。動くな」日本左エ門は抜いた刀で伊兵ヱを斬り、裏切ったお蝶を睨みつけるのでした。江戸城大広間、新井白石が復元した切支丹調書が吉宗の手元にきました。目を通して吉宗にんまりとして、「これで、万太郎の目当てが分かった」と。金吾とはあのような事があり、万太郎は一人で捜索をしている時、またしても怪しい影が走って行くのを見つけます。万太郎「曲者」捕まえて見ると、「あっ、お蝶さん」 お蝶「若様」 万太郎「やはり、夜光の短刀が欲しかったんだな」お蝶は、違う、日本左エ門に取られたくなかったのだ・・一日も早くと捜索絵図の半分を万太郎に渡すのです。万太郎「かたじけない」絵図面は復元でき、二人が行きついた所の扉を開けた庭の奥に見つけました。万太郎「あっ、けいけつ草」 お蝶「あの鼻の下に夜光の短刀が」 (ここの場面は、えっ、とても早い展開、どういうルートで探したかは分からないうちに、けいけつ草の咲く場所にきてしまいましたね。)けいけつ草に二人が近づこうとした時、「裏切り者待て」とまたもや日本左エ門が登場、邪魔をします。万太郎「またしても日本左エ門め」「折角ここまで運んだ夜光の短刀を、貴様らに渡しては日本左エ門、末代までの名折れだ」と勝負を挑んできました。最後の勝負です・・いよいよ本当に最後の対決です・・万太郎かまえます。 万太郎の危ないところをお蝶の投げた手裏剣で助けを得たところで、日本左エ門を倒しました。万太郎に駆け寄るお蝶「若様」 万太郎「お蝶さん」そこへ、あの金吾も駆けつけてきました。 (第一部と疾風篇での立回りは音楽からも冒険物という感じでしたが、この最後の対決は違います。ただ、橋蔵さまの、のちの殺陣を知っている目で見てしまうと、少し物足りないのは仕方ありません。危なくなった時にお蝶の手裏剣が飛んで・・はいいのだけれどですね、折角二人の対決でと見いっていた期待をちょっと裏切られた気持ちが私には残ったの。でも、これも今の目線で見るからですよね。こども達をも考慮しての作品ですからこれでいいのです。メデタシ・・当時私は小学低学年でしたわ。)江戸城大広間、万太郎とお蝶が控えています。吉宗の前に夜光の短刀があります。吉宗 「万太郎、そなたの望み通りこの短刀を持って羅馬へ渡がよい」万太郎「はっ、では」 と受け取り、お蝶の前に行きます。万太郎「この短刀はもともとお前の先祖の物。羅馬へ渡り幸せに暮らすがよい」吉宗 「万太郎、羅馬行きの望みは捨てられたのか」万太郎「はい、私は今まで通りの三男坊で」お蝶 「若様、私は一生あなた様のおそばに使えさせていただきとうございます」万太郎、首を横に振り、万太郎「父の国へ帰れば、やがては、わしのことも日本のことも忘れる時が来る」お蝶 「若様」万太郎「幸せでな」 (お蝶は万太郎が好きだから、おそばにいたいといっているのですね。その心内を分かっていながら羅馬へ帰れと言う万太郎の本当の気持ちはどうだったのかしら。連れなく言う万太郎ですが。)そう言えば、これで橋蔵さま8作品目なのですが、作品の中に恋人のようなお互いが好きだという場面があるものは、ひばりさんとの共演の作品だけです。羅馬へ向かうお蝶を載せた船を見送る、清々しい万太郎の姿がありました。 (浜辺で風が強く吹いているところでの撮影のため、万太郎の髪がちょっと風にあおられてしまっていますが、笑顔が素敵なので何のそのです。)この作品はモノクロなので、東映ウィークリー表紙からの写真を載せておきます。(こんな感じの色合いなのかな。雑誌に載っているものを見ると地が水色ぽっく帯が黄色いものがあるのですが、こちらを載せてみました。)場面によって橋蔵さまの目のお化粧の違いが分かるところがあります。映画の撮影は順番に撮っているわけではないので、この場面とあの場面は同じ時とかね。モノクロ時代の映画ですから、カラ―になってのお化粧法とは違うときでした。クランクインして最初の方で撮っているところでは歌舞伎の雰囲気がちょっとありました。あとの方で撮っている場面の橋蔵さまには、「おっ!」と思う良さが出てきました。橋蔵さまとしても、まだご自分の魅力を出す化粧法に試行錯誤をしている時期ではなかったかと思います。万太郎の髪型ははじめてですし。江戸三国志第一部・疾風篇・完結迅雷篇 長かったですが、皆様の有難うございました。 (完)