若さま侍捕物帖「鮮血の晴着」・・・(2)
上物だよ、水府らしいな喜仙二階、のんびり本を読んでいる若さまのところに、小吉が慌ててやってきます。若さま「盗人どもの手掛かりでもあったのかい」小吉 「いえ、別口でございます」若さま「別口⤴ 」若さま起き上がります。 小吉 「殺しなんで それがあいにくお寺の境内でございまして」若さま「寺?どこだい」小吉 「へっ、西光寺というお寺でございます」 若さま「なに⤴、西光寺」 いよいよ若さまのご出馬とあいなります。お堂の中、うつ伏せになっている仏をあおむけにした時の顔を見て、若さま一瞬ニヤリとします。 そして、小吉に、新堀端まで誰かを走らせ、阿波屋という質屋の者にすぐ来るように、と言うのです。殺された仏のそばには、血に染まった綸子地模様の武家娘の晴着がありました。若さまが細かい所に目をつけたのは、第一にたばこの吸い殻、仏は煙草入れは持っていませんでした。若さま「これは誰の吸い殻かなぁ。上物だよ、水府らしいな。この分量からみると 大分長い間いたようだ」若さま、次に仏についている綿ぼこりと草履の土にも目をつます。小吉 「綿ぼこりでございますねぇ。気が付かなかったけれど、どうしてこんなに 綿ぼこりがついているんでござんしょう」 そこに、阿波屋の番頭ら2人がやって来ました。番頭の重蔵が、主人六左衛門が留守なので自分たちが来たと言います。 若さま「いいとも。親分、この二人に仏を拝ましてやんな」 お堂の中に入った二人は仏を見ても何の反応も見せません。若さま「誰だか知らねえかい」 という、若さまの言葉に、もう一度仏を覗きこみますが、知らないという返事をする二人です。 若さま「じゃ、もう一度見なおしてくれ」 といって仏が変装していた眉、髭を外しますとびっくり、阿波屋の主人六左衛門でした。合口の鞘を確認させますと、主人六左衛門の物だと言います。そうすると、自分の 合口で頃れたことになる、と小吉が言います。 阿波屋の探索に土蔵の中を案内させますと。土蔵の奥に鍵のかかっているところがあるのに若さま直ぐに気がつきます。 若さま「おい、重の字、ありゃ何だ」 重蔵 「あれは・・」 若さま「あっはっはっは、土蔵の中に別口の蔵があるとは念がいったものだ」 重蔵 「あれは、旦那が特別に」 若さま「なーるほど、主人専用か」 鍵がかかっている。 若さま「鍵はねえのかい」 重蔵 「はい、それが・・いつも旦那が持っておりましたので」 若さま「六左衛門が鍵をねぇ」六左衛門がなくなった後阿波屋を継ぐのは重蔵だということらしい。また六左衛門には池之端で春月という小料理屋をやらせているお春という囲い女がいたと聞きだします。 池之端の春月二階に侍達が集まっています。「どうもこの家ではないらしい。とすると他を探さなければならない」と話をしています。 若さまと小吉がこの時、春月の玄関に来ていました。どうぞあがってくださいというお春の言葉に、若さまはおかまいなしの様子で部屋に入り、主人が据わる方にちゃっかりと座ってしまいます。(お春はあきれ顔をしています) 若さまは呑気な顔をして、火箸で灰をいじりながら小吉とお春の話をきいていないような態度をとっていますが、時々動かしている手が止まり、お春の方をグッと見ています。 六左衛門のことをおしゅんに聞くと4~5日来ていない、来るのは重蔵ばっかりというお春。小吉がなんで来るんだと聞きますと、お春の様子を見ていて 若さま「口説きに通うんだろう。よせばいいのに」お春が六左衛門には、自分で時期を見て話すから内緒にしておいてくれと言います。若さま「殺されたぜ、旦那は」 二階に集まって話をしている侍の数人が下りてきました。二階に戻る時、小吉が腰に差していた十手が目に入ったようです。 若さまがお春に訊ねます・・六左衛門は酒は飲んだがたばこはからっきし、とお春。2階で馬鹿騒ぎをしている客が妻恋稲荷の御家人愛甲新七と聞き、何か気になったのか 若さま「親分、どうでい、こっちも派手にやろうぜ」 小吉 「えっ、へっ、たまには結構なことで」 2階に上がって行くと、侍達が出てきて何しにきたと、若さま「何しにきたとは、無粋な。料理屋に論語を読みに来る奴はいねえよ」 侍の一人が愛甲に何か耳打ちをしが、若さま愛甲ににらみをきかし、愛甲が立ち上がり刀を・・との瞬間 若さま「邪魔はせん、わしたちにかまわず、派手にやることだな、おっ」小吉 「へい」 部屋に入り、障子を開けてみるとあの時六左衛門をつけていた編み笠の侍が春月の様子を伺っていました。 小吉 「おっ、あいつは」 若さま「親分、折角2階に上がったんだが」 小吉 「なあに、またという日がございますよ」 若さま「じぁ、悟られねえように後をつけて洗ってくれ。 俺は喜仙に帰って待って るぜ」 (橋蔵若さま綺麗で素敵です。ほんと、自信がついてきたのがわかります。) 続きます。