炎の城・・・(7)
もっともっと苦しめなければ復讐にはならない師景は、正人は気違いではない。なるべく早い機会に正人を倒そう・・・。自分の野望を妨げになる者はすべて打倒すというのです。祐吾が捕らえて来た百姓一揆の首謀者たる12名を領内の者達の見せしめのためにも死刑にすることに決ります。海に突き出た岩場に二人が一組に縛られ立っています。まずは一組に弓矢が放たれ二人の百姓は胸を射抜かれ海へ落ちて行きます。次は火縄銃が狙いをつけて引き金が引かれようとしたとき、「やめろ、散れ、その人達の縄をとけ」馬を飛ばし駈けつけたのは正人でした。「やっぱり正人様が助けに来てくれた」と大喜びする宗恵達です。復讐のためにも、領民を救うためにも、師景を討つこと、手段はそれ以外ないと、城に戻った正人は、出迎える庄司に目をやると、一目散に師景の寝所に足を向けます。庄司は黙ってその様子を見守ります。寝所近くまで行くと、ゆっくりと剣を抜き寝所に踏み込み剣を振り上げます。そのとき菩薩像が目に入り、師景を亡き者とする振り上げた剣は宙に止まったままになっていました。 正人は心で静かに叫びます。『ほとけに見守られた彼奴の眠りは極楽、さきに熟睡するこの極悪人をこのまま一瞬の苦痛であの世にやっていいのか、父上それであなたのこの世の妄執ははれるのでしょうか・・・そして、・・・』 正人は振り上げていた剣を静かに降ろしながら、『・・・この俺は仏の前で、この手を悪事にまぎらす卑怯な騙し討ちと人にはそしられ、王見正人の武士道は地に落ちる・・・それでいいのか』 正人が力なく師景の寝所から出てしばらく立止まって、離れて見守っていた庄司の前を黙って通り過ぎて行きます。その正人に庄司が「何故?」と、「もっともっと苦しめなければ復讐にはならない」と正人。正人が落ち着いたところで、先ほどから何度も奥方様から使いがあり、「お部屋の方へおいで願いたい」と申されているというと、正人の気持ちには動揺がありましたが、「母上が」・・・・・「いつかはあなたに・・・」・・・「・・・そのときが・・・」・・・「とうとう来ました」 母時子のところへ出向く決心をしました。 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)炎の城・・・(3)炎の城・・・(4)炎の城・・・(5)炎の城・・・(6)