テーマ:華麗・大川橋蔵の時代劇(450)
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今度こそ立派な剣士になります
剣の修業のやり直しのため、大台ケ原に帰って来た新吾は、雪の中多門の墓の前で、真崎備前と庄三郎を前に稽古に励んでいる新吾に、備前が「止めい」と言ってきます。 新吾は何故止められたのか合点がいかぬような顔で備前の前に。すると 備前「先は遠いぞ」 新吾は、どういうことか、というような顔をします。 備前「わからんか」 新吾「・・・わかりません」 すると、備前はゆっくりと立ち上がり、 備前「見せてやろう」 新吾「えっ、老先生が」 備前「諸国流浪の垢を払い落してやる、参れ」 新吾は「はい」と言い、立ち上がると真剣を鞘におさめようとすると、 備前「そのまま、真剣のままでよい」 新吾「えっ・・・はい。・・・では、御免」 新吾が構えると、備前がゆっくりと杖をかざします。新吾の表情が険しくなります。備前は杖を簡単に構えているようなのですが、新吾は入りこむことができません。・・・それぞれに心で呟きます。(備前)「新吾、剣の深さが分かったか」(新吾)「情けない、これが新吾の腕か、これほどまでに、自分の腕は未熟だったのか」・・・ 備前の「新吾」と言う声に、力なく新吾が「はい」と言うと、備前の「参れ」と鋭い声が響きます。 その声に、新吾は「御免」と備前にかかったところを、杖で突かれ気を失い倒れ込んでしまいます。「手当をしてやれ」と庄三郎に頼み備前は帰って行きます。 気がついた新吾の「老先生は?」に、「老先生は、あなたに剣の道の厳しさが教えたかったのです」と庄三郎の言うことに「分かっています」と新吾。 庄三郎が、最近老先生の言葉が理解でき、あらゆる雑念を忘れて剣一筋に打ち込めるようになったことを新吾に話すと、 新吾「庄三郎先生、・・・私の母のことも、あなたの恋人を奪った私の父吉宗のこ とも忘れることができましたか」 新吾の問いに、長い間苦しんだ、新吾を愛することで忘れようとした、だがそれも、老先生のおかげで、遠くから眺められるようになった、と庄三郎は答えます。そして、剣の道は、そのようなわき目も許さないほど、激しく厳しいのだと。それを聞いていた新吾は、 新吾「庄三郎先生。私も剣の道に生きます」。母のことも、父のことも、女のこと も全て忘れて、剣一筋に精進いたします。・・・私は剣に生きると言って流 浪の旅に出ました。それも今から考えるとあまかったような気がいたしま す。弱い相手に打ち勝って邁進し、あるときは女に心惑わされ、あるときは 母を恋い、父を慕い、剣に生きんと心がけながら修業を怠り、いまから思え ば恥ずかしい限りです。・・・だが、今老先生に打たれて初めて迷いの夢か ら覚めたような気がいたします」 新吾「庄三郎先生、新吾は今度こそ立派な剣士になりますぞ」 そう言い、多門の墓にもその決意を報告するのです。 続きます。
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最終更新日
2022年10月22日 10時13分58秒
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