< 新しい記事
新着記事一覧(全451件)
過去の記事 >
門に刻まれたキズを懐かしそうさわる 半次郎が立ちはだかります。「野郎、どうする気だ」といわれ、 半次郎「別にどうともしねえが、ここは天下のおおれいだから、通してせいおくん なさりゃ」 というと、やくざ達を払うように前へ進みます。 やくざ達がドスを抜いて半次郎にかかっていきますが、かなわないため逃げ帰っていきます。 助けた娘に礼をいわれ、その場を去ろうとしたとき、「あの、もし・・・」と 半次郎を呼び止め、挨拶してきたのは、平田屋の女主人おとくでした。 おとく「私は、浜津賀の網元平田屋の本家の者でございますが、とんだお世話を」 と丁寧にあいさつをしてきたので、半次郎も笠をとりながら「いやあ、なに・・・」と返します。
しかし、その丁寧な挨拶のあとに、娘を助けた半次郎に対して、「尋常なれば、今夜はお泊りを願って、何はなくてもおもてなしをさしていただくのが順当でございましょうが、このうえ事がもつれましては、あなた様もお困りでしょうし、村の者達も思わぬ迷惑をいたします。恐れ入りますが、少しも早く・・・」という思いもかけぬ言葉が返ってくるのです。 それを聞いていた分家のおこよが、それはあまりにもというように言葉をはさむと、「村のことは本家の私が仕切ります」というと、半次郎に向かって「さあ、どうぞお早く」と頭を下げてきます。 それには、半次郎も頭にきたのでしょう、言葉も発せずプイッとした表情で去っていきます。
その様子を見ていたあの浪人は「お前さんの言葉は、はなはだ丁重だが、そこにゾッとする冷たいものがあるぞ。聞く者にとっちゃあまり愉快でないぞ」とおとくに言い、半次郎の姿を追って行きます。おとくの養女おけいと分家のおこよは、半次郎のことが気になっていました。 半次郎を追ってきた浪人が話しかけてきます。 中富「俺は、中富十兵衛という男だが、おぬしの名は?」 半次郎「権兵衛だよ」 中富「権兵衛?」 半次郎「種をまきゃ、烏がほじくる、あの権兵衛さ」 中富「こいつ、人をこけ扱いにしおって」 半次郎は、中富十兵衛を邪険にしてしまいます。 半次郎「されてお腹が立つんなら、護摩のハエのような真似は止しにして、何処へ なりと消えなせい」 先を急ぐように行く半次郎に、中富が「いよいよもって、気に入らんぞ」と笑みを浮かべていると、半次郎を追ってきたおこよの笑い声がします。 村に入った半次郎の足がある家の前で止まりました。そこは先ほど浜辺で会った平田屋の本家の前でした。想い出すことがあったのでしょうか、門に刻まれたキズを懐かしそうにさわり、とても柔らかな笑みがこぼれます。そうしたところを中富十兵衛が見ていたので、また逃げるように行ってしまいます。
が、やはり気になるのでしょうか・・・分家の門の前で立ち止まったとき、おこよが「お待ちなさいまし」と半次郎に声をかけます。 おこよ「間もなく日が暮れますよ。よろしかったらこちら様とご一緒に、この平田 屋の分家で・・・」 半次郎「お言葉ではごぜいますが、もしご迷惑になっちゃいけやせんから、へえ」 おこよの言葉をふりきり半次郎はその場を去ります。中富十兵衛はそんな半次郎を見て笑っています。
続きます。
PR
日記/記事の投稿
カテゴリ
カレンダー
バックナンバー
フリーページ
サイド自由欄
コメント新着