復讐侠艶録・・・③
「田沼の首」・・といったら凌雲院の小姓をする錦は、田沼意次の眼に留まり田沼の屋敷に奉公することになり、その夜には田沼の屋敷にいき、部屋を用意されます。今日は遅いのでゆっくり休むようにいわれます。一人になった錦は・・何をするつもりでしょう・・部屋の様子を見回しました。 (何かするような雰囲気です。)夜が更けた頃、腰元の文江が動き出しました。見廻りの者が来たので慌てて錦が与えられた部屋の前の物陰に隠れていたのですが、近づいて来るのでどうしようか困っていると、部屋の障子が開いて、黒装束姿の男が部屋に引きずり込みます。文江が何か言おうとした時、大八「待った」小さな声で言い、文江をかばうようにして、見廻りの者が通りすぎるのを待つのですが、この時文江のかんざしが落ちてしまいます。音がしたため見廻りの者が錦の部屋の前でいったん立止まりますが、そのまま通り過ぎていきます。ほっとして胸をなでおろした時、文江が慌てて大八の腕の中から離れます。 文江「あなたは、この前の」大八「またお目にかかりましたね」文江「そのお声は、あの、もしや昼間の」大八「昼間の?へっへっへ、冗談で。あっしはおめえさんに会うのはこれで まだ2度目ですよ」 (この時、文江が落したかんざしを大八が手に持っています。)大八「それよりおめえさん、何を探して夜中に歩きなさる。もし、お差支え なかったら話していただけませんか。あっしはこんな男だが、もし お役に立つなら、と思いましてね」文江「あなたこそ、何を狙ってたびたび忍びこむのです」大八「・・(文江の顔色を見るように)田沼意次の首、といったら驚きますか」 文江「何のために」大八「仔細のことはちょっと言えませんが、これも人助けになると思っているん ですがねえ」(大八、手に持っていたかんざしを、話をしながら懐に締まってしまいます。)文江「あたくしは、山縣大弐の入門控を探しています」大八「えっ、山縣大弐の・・・」文江「あのぅ、お名前だけでも・・」大八それには答えず、大八「どうやら、大丈夫のようだ。さっ、今のうちに早く・・きっとまたお会い できますぜ」(何回も言ってしまいますが、橋蔵さまは鼻掛けが本当に似合います。顔のバランスと輪郭がよく、すっーととおった鼻でしょう、バッチリですよね。体の線も綺麗で、筋肉質で細く綺麗な足、お尻の形もよい、といい所ばかり。)田沼の屋敷では宴会が開かれています。山口屋がお礼のお返しの贈り物だと差出したおかんという女の人形ぶりを見ていて満足な様子の田沼です。その最中、金色堂では、見張りの者たちが大八にやられ、三日月お才の率いる狐の面一味が大介の手引きで財宝をいただきに金色堂に入ります。大八「不浄の財宝だ。遠慮はいらねえ、残らず頂戴するがいい」引き上げる時、お才が大八に心配そうに聞きます。お才「あんたの方は、いつやるつもり」大八「それが、悔しいが、なかなか隙がありそうじゃねえ。それに実は、探し物が 一つ増えましてね」お才「探し物?」大八「まだ検討はつかねえが、田沼の居間にあることは間違いねえ。なあに、 2,3日中には手を入れてみせますよ。あっ、気をつけてけえんなせい」 お才は小兵ヱに、錦のことが気になるのでもう少し様子を見てから帰る、というと田沼の屋敷に戻って行きます。お才たちを見届けて、大八は部屋を戻り、錦の装束をまとっています。「殿のお召しでございます」錦を迎えに来ました。障子が開くと、そこには艶やかな錦が座っています。錦返事をして、しとやかに歩き田沼の待つ大広間へ・・。 小兵ヱ達は盗んだ物をやっとの思いで塀の外へと出したところに・・越坂がいたのです。宴席に錦がやってきました。田沼「今宵はまた格別に艶やかじゃのう」酔って田沼が錦を見つめます。錦は、視線を田沼から外します。田沼「どうじゃ、予の意に従う気持ちには、まだならんか」 よい返事をしない錦に、錦以外の女には目もくれない証拠にと、贈り物のおかんの首をはねるというのです。無意気の殺生でなく、錦に対する心意気だ、と田沼が言います。おかんを庭に連れ出し切ろうとしたとき、戻ってきたお才が、そして越坂が助けに入ります。そこへ、家臣が、金色堂が大変だと・・田沼は慌てて金色堂へ向かいます。その様子を見て、錦はこの表情です。 (「ざまあみろ」という感じですかしら。)おかんとお才を助けた越坂がお才に、「お前の稼業は、昼は口入屋、夜になると狐の面を被るのか」といい、「狐の面は勤皇の厚い志と聞く、それに面白そうじゃ」仲間にいれてほしいというのです。田沼の屋敷から娘を連れだされたこと、金色堂が荒らされたことで、町方の動きが厳しくなりました。ある日の田沼の居間。「入門控」を隠しているところを覗き見していた文江が見つかってしまいます。誰に頼まれたと尋問します。田沼「申せ、錦に頼まれたか」文江は偶然通り合わせただけと答えていた所へ、錦が来ました。 (助けに来たのです)こんな所で何をしている、と錦が文江に言います。田沼「錦、その方こそ、ここへ何しに来た」(雲行きがおかしくなってきました。錦に不審を抱いたようです。)文江に所要を頼んだが遅いので見に来たのだ、と。文江は覗き見などはしない、許してほしいと錦が頭をさげます。田沼「そなたの心次第では、許さぬものでもない」(どういうことでしょう、意味深ですね。錦さん気をつけてね、折角いつでも敵を討てるところにいるのだから。)(錦はどういう事かというような表情をしますが、「なんでしょう」というように柔らかい表情になり田沼の顔を見ます。) 錦の表情を見て、文江は許され部屋を出て行きます。ここからしばらくは、橋蔵さまの錦と進藤さんの意次のやりとりになります。言葉一つ一つに、表情一つ一つをご覧ください。作品を見てほしい。そして、田沼のことばに対しての感情を目の動きで表現する錦をずっと追って見てください。田沼は錦に、心願の成就叶うまでは男に近づかないと言い張っているが、どういう訳だと聞いてきます。錦が黙っている様子を見て、田沼「言い訳としてはまずいのう、錦」錦、はっとします。すると田沼は錦の腕を取り、田沼「こう腕ずくに出たらどうする」錦 「お許しくださりませ」 (錦我慢です)田沼「あっはっはっは、そのしおらしさ、よく今まで続いたのう」錦 「何と仰せられます」田沼「どうじゃ、とことんまで争ってみるか」錦「なりませぬ・・お放しなさいませ」田沼「いいや離さん。この手この骨組み、これが果たしておなごのものか、あくまでも体に聞くのじゃ」 大老までになろうという男だ、目蔵ではない。初めのうちは騙されはしたが、合点のいかない数々、男であることにいつまでも気がつかないと思っていたのか。田沼「今日こそはとっくりと仔細を聞こう。その方、何ゆえあって当屋敷に女と偽り屋敷に住み込んだ、真の名前を申せ、何ものじゃ」 (田沼に見破られた錦ですが、我慢に我慢して、本性は表しません。(普通だったらこのあたりで「分かっちゃやってられねえ」とか言っちゃうのですが。弁天小僧ならもろ肌脱いでいなおっちゃいますよね。)錦の細かい眼の動き、我慢をして、ここまできても男ということを白状しません。)進藤英太郎さんは重みがあるにくたらしい役がうまいですね。橋蔵さまとのこのような場面は見ごたえがあります。橋蔵さまの目の動きが綺麗に細かく動きます・・目が田沼の言葉に対する錦の心情、感情の込みあげをてき面に表しています。画面も橋蔵さまのアップです。完全に橋蔵さまの、語れる目での演技になっています。錦が何も言わないので、家臣に、田沼「容赦はいらん、体に聞け」その言葉と同時に、錦の体が動きます。振り切って逃げようと抵抗しますが・・(無理) その時、西の丸様(徳川家基)が立ち寄られた知らせを受け。錦を牢に監禁しておくよう言いつける。徳川家基を歓迎しての席、腰元文江が家基の目に止まり、田沼に文江を差し出すように言います。そのころ、家臣たちが慌ただしく動いていました。牢に入れた錦がいないのです。天井が開いていて、着物が脱ぎ棄てられています。大八の女装錦の艶やかさをたっぷり見せてくれた場面でした。錦はどこへ行ったのでしょうか。目指すは同じ田沼、、大八、越坂、文江、お才はこの後どのようにかかわるのでしょう。 続きます。