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テーマ:政治について(20228)
カテゴリ:原発のこと
‥‥(前文略)‥‥ 津波でなく 地震動でやられた 福島第一原発の深刻な事故は、想定(5.7m)を、はるかに超える14~15mの大津波(地震の約1時間後)によって、非常用発電機がすべて動かなくなり、炉心と使用済み燃料プールの冷却ができなくなったからだといわれている。 原子力安全委員会の‥‥強震動地震学者の入倉孝次郎氏も、‥揺れに対しては大丈夫だったという認識を示している。 しかし、これは重大な誤認である可能性が強く、日本(ばかりでなく、全世界)の既存原発の耐震安全性の議論にとって、非常に危険だと思われる。 田中三彦氏は、福島第一原発1号機について、原子炉圧力容器内の水位・圧力と格納容器内の圧力の時間変化、および水素爆発‥の発生状況の分析から、激しい地震動によって、配管の破断ないし破損が起こり、津波や全電源喪失の前に、重大な≪冷却材喪失事故≫‥が発生したと推測している(『世界』と『科学』の5月号) また、2号機でも、地震動によって、圧力抑制室の破損が生じて‥圧力抑制室付近の水素爆発につながったと考えている。 地震の揺れが原発に重大な損傷をもたらした可能性は、地震の記録からも推測できる。‥‥現段階で、基準とした地震動が過小評価であり、したがって耐震安全性が確保されていなかった疑いがきわめて濃厚なのだ。 東北地方太平洋沖地震はM9.0の超巨大地震で、震源断層面の長さが約450km、震源域で地震波を出し続けた時間が約180秒もあったから、各地で激しい地震動(揺れ)が非常に長く続いた。 福島第一原発の地震動の全貌は、まだ明らかにされていないが、周辺の地震記録からみて、原発でも3分近く激しい揺れが続いたと推測される。 この非常に長い震動(とくに、そのなかでの3回くらいの激しい揺れ)が、建屋や機器・配管や圧力抑制室などの最重要な施設に損傷を与えた可能性は十分に考えられるのである。 福島第一原発は、2006年に改定された「耐震設計審査指針」‥に照らしても、安全上重要な【止める】【冷やす】【閉じ込める】機能が確保される旨を、東電が、5号機を代表例として、原子力安全・保安院(保安院)に報告し、2009年に保安院と安全委がこれを認めている。 ところが、1号機では【冷やす】機能が失われ、2号機では【閉じ込める】機能が失われた可能性が大きいのだ(東電は5号機以外でも3つの機能は確保されると報告していた)。‥‥ なお、東電が、保安院の審議会で委員から指摘された869年貞観地震津波を無視したことが津波の想定を甘くして、重大事故の原因になったという論調が強い。 しかし(津波が事態を悪化させたことはあるにしても)前述のように、津波以前に過酷事故が起こったと推定されるから、この論調は不適当だし、津波に話を限っても事実とやや異なる。 その説明と、この問題にこそ、日本列島に原発を建てることの危険性が見えているという指摘を『世界』5月号に書いたので、参照されたい。 地震列島における 原発の安全性とは 『原発と地震』の問題を考える際には、つぎの4点をあらためて肝に銘じる必要がある。 (1)原発の安全性は、莫大な放射能を内蔵することから、ほかの施設よりも格段に高くなければならない。 (2)ところが原発はまだ完成された技術ではない。 (3)いっぽう、地震というものは、最大級になると本当に恐ろしい。 (4)しかし、人間の地震現象に関する理解はまだきわめて不十分で、予測できないことが沢山ある。 これら4点を、虚心に受け止めれば、地震列島の海岸に50基以上の大型原子炉を並べることがどんなに危ういことか、人としての理性と感性があればわかるはずだ。‥‥ ‥‥福島原発震災によって、世界的に原発の安全性に対する不安が広がっているという。 たしかに、制御されている安全が何らかの原因でいったん崩れると、放射能災害はきわめて深刻だから、これは当然のことである。 しかし、例えばフランスの原発は、日本の原発とは、根本的にといってよいほど異なる。 日本の原発が特に危険なのは、ひとえに日本が地震列島だからである。 このことをはっきり認識しないと、日本の原発の問題点が曖昧になってしまう。 日本列島では、原発の「本質的安全」を確保するために、原発を無くすべきなのだ。 今後 どうするのか 保安院は、福島第一原発の大事故が津波によって引き起こされたとして、3月30日に電力各社に、全国の原発の津波に対する緊急安全対策の実施を指示した。 各社は、津波で全電源喪失が起こった場合に備えて、電源車や可搬式ポンプや給水タンクを高所に配備するなどして、原発の運転を続けるとともに、定期点検中の原子炉も、順次、運転再開しようとしている。しかし、これは常軌を逸した行為というべきだろう。 全電源喪失が起こって、電源車や可搬式ポンプに頼らなければならないという状況は、まさに福島第一原発がそうであるように、とんでもない大災害である。そんな大災害を想定すべき場所で、原発の操業をおこなうというのは、正気の沙汰ではない。‥‥ ‥‥したがって、日本列島のすべての原発は閉鎖されなければならず、新・増設もありえない。 もちろん、いきなり原発を全廃するのは、非現実的だろうが、つぎの原発震災を引き起こす可能性の高い原発を全国から抽出し、運転を停止するという作業を急いでやらなければいけない。 今世紀中頃までには発生すると予想される東海・東南海・南海巨大地震の前後まで、大地震活動期が続くと考えられていたが、東北地方太平洋沖地震の発生によって、日本列島全域で(いたるところというわけではないが)大地震がいっそう起こりやすくなった可能性がある‥。 したがって、この作業は本当に急を要する。 真っ先に考えられるのは、想定東海地震の震源断層直上の浜岡原発や、大地震発生の可能性があって、活断層も多い若狭湾の原発群(とくに運転歴40年超かそれに近い日本原子力発電敦賀原発1号機、関西電力美浜原発1、2号機、同 高浜原発1号機)、2007年の地震被災後の健全性が不確実で、直下の余震発生の恐れが否定できない柏崎刈羽原発だが、‥‥ ‥‥核燃料サイクル事業に合理性はないから直ちにやめるべきで、六ヶ所村と東海村の核燃料施設と高速増殖炉「もんじゅ」も閉鎖する。 六ヶ所村と「もんじゅ」は、活断層の真上に位置していて危険性もきわめて高い。 建設中の電源開発 大間原発(青森県)、東電 東通原発(同)、中国電力 島根原発(山口県)、建設準備中の 中国電力 上関原発(山口県)は、当然、中止である。 原子力政策と原子力安全行政のあらゆる局面は、最終的な脱原発に向けて抜本的に再編成すべきである。‥‥さもないと、今度こそ「日本沈没」にも匹敵するような最悪の原発震災が起こってしまう恐れが強い。 運転を続ける原発はあるわけだし、閉鎖した原発の長期にわたる安全管理も非常に重要だから、原子力安全行政や技術者が不必要になるわけではない。 むしろ安全な撤退のために、優秀で意欲のある技術者が多数求められるだろう。 指針類も、原発の新・増設を想定したものは、もはや必要ないが、「仕分け」のための合理的基準や、閉鎖前(稼動中)および閉鎖後の施設の安全確保のための指針類は、厳重なものを早急に整備しなければならない。 【付記】:4月21日の東電のプレスリリースによると、同社は、柏崎刈羽原発に大津波を想定した新たな防潮堤を新設する計画だという。 前述のように、そういう措置をしなければならない原発は、存在が否定される。 そもそも柏崎刈羽原発は、2007年、新潟県中越沖地震(M6.8)で、全7基が大きな被害を受けた後、【耐震偽装】によって4基の運転を再開した欠陥原発である。
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最終更新日
2011年05月05日 08時05分31秒
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