父の涙
突然家に父が来た。孫の顔見たさにである。父は信じられないくらいまずいお菓子を買うのが得意だ。砂糖そのまま舐めたほうがさっぱりしてるんじゃないの?ってくらい甘い、じゃりじゃり砂糖コーティングされたドライフルーツとか、カカオの味が全くしないチョコレート色したチョコレートケーキとか。だから、手土産はいらないといつも懇願する。にもかかわらず、孫でも食べられるだろうと芋ようかんを持ってきた。だ~~か~~ら~~~今まだ離乳食だって言ってるのに~。しかし、赤ん坊が手を出してぱくっと食べてしまった。そして嬉しそうにもっとくれくれと愛想を振りまいている。味覚音痴の遺伝、受け継いじゃってたのね。ここはきっちり文句を言おうとしたとき、なんと父が私に背を向けて目頭を押さえている。部屋にかけてある鏡にうつった父はなんと泣いていた。父の涙をみたのは、母の葬式以来。そんなに孫ってかわいいのかしら。なんだか切なくなった。