A TENT FOR THE SUN
少し前に、ミュージック・ストア・ジャパンで開催された恒例のバーゲンセールで買った一枚。 ダニエル・ケロッグ、カーター・パンという二人のアメリカ人作曲家の2007年から2009年にかけて作曲された作品集です。どちらも1970年代生まれで、パンが38歳、ケロッグが34歳と若いです。全部で4つの作品ですが、みんな長い曲で、「A Tent For The Sun」がライブ以外はセッション録音です。 アメリカの作曲家の作品で、コープランド風の作風なので、抵抗はなかったのですが、最初聞いた時は、あまりいいとは思いませんでした。ところが、何回か来ているうちに、その佇まいが心地よく感じられるようになりました。そもそのこのアルバムを購入した動機は「A Tent For The Sun」でタカーチュSQが共演していたからでした。タカーチュSQと言えば、突然解散し、その後別なメンバーで再結成したような記憶があるのですが、私の思い違いでしょうか。wikipediaで見たらやはり第1バイオリンとヴィオラが替わっていました。もともと、団体名の名前は第1ヴァイオリンの名前から取ったので、その第1ヴァイオリンがいなくなったからには別な名称を名乗ってもよさそうに思います。。。この曲では主役を演じることがなく、何のために弦楽四重奏団を入れたのか理解に苦しみます。この曲は2008年に2週間滞在したコロラドの山々の美しさとそこに降り注ぐ太陽から触発された作品です。第1曲「Form the End of the Heavens」では弦楽四重奏は旋律らしきものがなく、常に4つの楽器がなっていて、それも長い音符がだらだらと続く様な展開で、全く面白くありません。バックもテュッティーの部分がなく、室内楽的な使い方です。静かな第2曲「The Sound of the Sky on Fire」では冒頭、弦楽四重奏のみの部分があり、菅もアンサンブルとしてやっと出て来ます。こうでなくっちゃと思いつつ、やはり弦楽四重奏の扱いに不満があります。クラリネットと弦楽四重奏の部分はなかなか雰囲気がいいです。第3曲「How Powerful the Glorious Sun」では弦楽四重奏の精力的な動きが全曲にわたって続きます。吹奏楽と弦楽四重奏という珍しい組み合わせですが、それだけに終わってしまったような作品でした。 カーター・パンの「吹奏楽のためのセレナード」はなかなかいい作品です。 親しみやすく、夢見るような旋律ときらびやかなサウンドがとても魅力的です。ケネス・ハスケスの「ディアギレフ・ダンス」のサウンドと雰囲気にとてもよく似ていると思います。作曲者が意図しているとは思いませんが、何故かクリスマスに聴くのにピッタリの音楽のように思えてきます。ただ、終わり方がいまいち中途半端です。 3曲目はパンのピアノ協奏曲「コンチェルト・ロジック」。 作曲者のノートによると、古今のゲームに触発された作品だそうです。色々な作風が楽しめるなかなか面白い作品です。1曲目が古代エジプトのゲーム「犬とジャッカル」、2曲目がルービック・キューブ、3曲目の短いピアノのカデンツァに続く4曲目はチェスです。作曲者はここ10年間すっかりチェスにはまっていて、多額のお金と時間を費やしているようです。そのせいか、第4曲が最も精彩があります。目まぐるしく変わる色彩と、スピード感、賑やかなお祭り騒ぎと突如やってくる静けさなどがごちゃ混ぜになって、聴く者を楽しませてくれます。所々聞かれるクラリネットのグリッサンドがとても効果的です。パン自身のピアノは大変うまいです。特に、第3曲目のめまぐるしいスピードで展開するラグタイム風のカデンツァは見事です。 ケロッグの「ピュラモスとティスベ」はシェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」第5幕をマーク・オドンネルが一人の大根役者?のために書きなおした台本によるシアターピース。 もとのギリシャ悲劇のあらすじは次のようです。ティスベが町はずれで恋人のピュラモスを待っていました。その時ライオンがやってきて、ティスベは逃げました。その時ヴェールを落としてしまいます。あとからやってきたピュラモスがそヴェールを見て、ティスベがライオンに食われたと思い、自害します。あとからティスベが来て、ピュラモスの亡骸を見て自分も自害してしまいます。ロメオとジュリエットなどに見られる典型的なお話を一人の俳優がナレーター、壁?、月、そしてピュラモスとティスベに扮してユーモアたっぷりに演じます。あらすじを知ってから聴くと、そのユーモアたっぷりの音楽がかなり面白いです。原曲は管弦楽で2007年3月にスラトキン指揮のナショナル交響楽団により初演され、吹奏楽版は同年の夏に作られました。是非生で見たい作品です。役者の力量に左右されますが、どこかでやってくれませんかね。。。A Tent For The Sun(KLAVIER K 11179)1.Carter Pann: Serenade for Winds2.Daniel Kellogg: A Tent for the Sun I. From the End of the Heavens ) II. The Sound of the Sky on Fire III. How Powerful the Glorious Sun5.Carter Pann:Concerto Logic: I. Dogs and Jackals ) II. Erno Rubik's Magic Cube ( 6:50 ) III. Rondo Capriccio: Rage Over a Lost Pawn ( 2:16 ) IV. Dancing with Caissa ( 7:21 )9.Daniel Kellogg: Pyramus and ThisbeTAKACS STRING QUARTET(2-4)CARTER PANN(5-8)PATRICK MASON(Actor)UNIVERSITY OF COLORAD WIND SYMPHONYALLAN McMURRAY(cond)Recorded live 1-2 March 2009 in Grusin Music Hall,Imig Music,University of Colorado,Boulder(A Tent for the Sun)18-21 April 2009 in Mackey Auditorium,University of Colorado,Boulder