桑原あい:Somehow,Someday,Somewhere
桑原あいの新譜を聴く。ハイレゾで出ないかチェックしていたらOTOTOYから配信されたことを知り早速購入した。価格は\3000でCDより\300高いが、音がいいので許容範囲以内。今回は、スティーブ・ガットのドラムス、ウイル・リーのベースとのトリオ。前作は最近は聞いていなかったので、どのような演奏かは覚えていないが、今回はゆったりと死した曲が多いが、だれることはない。ミッシェル・ペトルチアーニ(2),バーンスタイン(3),ビル・エヴァンス(6),ボブ・ディラン(8)の他は桑原のオリジナル。バーンスタインの「somewhere」はイントロのシングル・トーンのとつとつとした語り口が印象的だ。この曲の別の側面を知らされたような感じだ。トリオになっても、饒舌感はなく、イントロからのムードが一貫している。面白いのは5曲目の「All life will end someday, only the sea will remain」。バックでスキャットが聞こえる。女性と男性が交互にスキャットするという趣向だ。これがなんともクールだ。データーがないので、なんとも言えないがトリオのメンバーだろうか。オリジナリティーがあり、面白い試みだ。「Home」はペトルチアーニの演奏よりは大部テンポが速いが、あまり重くならずに原曲の良さを出している。「B minor Blues」はビル・エバンスの名盤「You must believe in Spring」に収録されている曲だが、こちらはエヴァンスの演奏とは逆にゆったりとした演奏。適度な間が何とも言えない詩情を感じさせる。桑原の作品では、「Never Neverland」が洒落ている。女性らしい感性が感じられるし、何処と無く川上さとみの作品に通じる味わいも感じられる。最後の「The Back」は2015年のモントルーでのクインシー・ジョーンズとの思い出から触発された曲。日本人が書いた曲とは思えない、カントリー風の味わいがいい。因みにタイトルの背中とはクインシーの背中のことだそうだ。キャッチコピーをみると、このアルバムはスティーブ・ガッドの参加が目玉らしいが、演奏を聞くと、ウイル・リーの存在感が大きい。スティーブ・ガッドのプレイは最近のドラマーに比べると、古臭いと感じる。これがいいと思う方もいらっしゃるとは思うが、年をとっても進化し続けるミュージシャンが好ましい。たとえばこの間取り上げた、デイブ・ホランドはそのいい例だ。ディストリビューターのキャッチコピーで「2017年のベストアルバムはこれで決定!と言ってしまいたくなるほどの大傑作です!」とあるが、少し言い過ぎか?音はハイレゾだけに素晴らしい。ダイナミックでS/Nが良く、立体感も感じられる。CDにダウンコンバートして、車で聞いているが、こちらもかなり音がいい。残念なのは、和田誠氏の素晴らしいイラストを拝めないこと。ブックレットを含め、この部分の改善を是非お願いしたい。ファイルにすればいいだけなので、どうしてやらないのか不思議だ。怠慢といってもいい。日本人の仕事とは思えない、と言ったら言い過ぎだろうか。これは他の配信業者も同じだ。同じことを感じている方は少なからずいらっしゃる。因みに、こちらの方の意見は説得力がある。ブックレット付きで配信されている音源も有る。国内盤だと例えば『Symphonic Suite AKIRA 2016(ハイパーハイレゾエディション)』ブックレットを手に入れるために、CDも購入することを想定しているとしたら、あこぎな商売としか思われない。音楽を聴く場合、演奏者の名前、使われている楽器、録音日時などのデーターはすごく大事だ。特にジャズの場合サイドメンが分からないと、楽しさが半減する。知るためにユーザーに調べさせるというのも本末転倒だ。このアルバムも、未だに録音日時、ロケーションは分からずじまいだ。MV桑原あい:Somehow,Someday,Somewhere(T.o.m. Records) 24 bit 96kHz WAVE1.Somehow It's Been a Rough 2.Home3.Somewhere4.Never Neverland5.All life will end someday, only the sea will remain6.B Minor Waltz7.Extremely Loud But Incredibly Far8.The Times They Are a-Changin'9.The Back桑原あい(p,e-p))Will Lee(b)Steve Gadd(Ds)