Toku In Paris
少し前に、ジャズ批評のジャズ・オーディオ・ディスク大賞のノミネート作品を聴いているという話をした。その中で、フランス人のサラ・ランクマンという女性歌手の歌が気に入って、何枚かqobuzから購入した。その中の「À Contretemps」(2018 Star Prod)というアルバムに男性ヴォーカルとのデュオが入っていてい、なかなか渋い声だなと思って、確かめたら、なんとTOKUが歌っていてびっくりした。その後、先月号のJazz Japanに彼のアルバムのレビューが載っていて、例によってspotifyで聴いたところ、なかなか良かったので、Qobuzからロスレスをダウンロードした。リリース元はランクマンとジョバンニ・ミラバッシが興した、Jazz Elevenというレーベル。彼女とミラバッシのデュオ「Intermezzo」もここからリリースされている。tokuは全11曲中、共作を含め8曲を作曲している。ランクマンも共作を含め3曲を提供している。どちらもいい曲を書いていて、とても楽しめる。スタンダードは「シェルブールの雨傘」のみ。編成はトランペット、アルトサックスにリズムのクインテット。一番気言ったのはインスト物の「Be Careful」速いテンポでアグレッシブな進行が気持ちがいい。日野皓正あたりの曲といわれてもおかしくない。これも自作の「Still In Love With You」のトロピカル・ムード満点でほんわかした演奏も悪くない。ランクマンも「シェルブールの雨傘」に参加している。少し、どすの利いた声だが、うまいことは確か。2コーラス目の二人の自由な歌唱が素晴らしい。tokuは全体的に渋い喉を聞かせて悪くない。ただ、巻き舌英語がキツすぎて、言葉が不明瞭になり、重くなってしまう。日本人にはよくある現象で、共演しているランクマンの巻き舌でない英語の方が言葉がはっきりしていて、軽い。なので、今のところテンポの遅いじっくりと聴かせる歌が適していると思うし、彼自身もそこはわかっていての選曲だろう。バラードの「Blue Smoke」はミラバッシとのデュオで、ヴォーカリストとして本領が発揮された名唱。トランペット、フリューゲルは柔らかい音で、気持ちがいいが、時には鋭いバリバリと吹く場面も聴きたくなる。ピエリック・ペドロン(1969-)はパーカー系のアルト奏者で、きれいのいいアドリブを展開している。ミラバッシは安定感のあるプレイだが、普通の出来だろう。ドラムスのアンドレ・チェッカレはピアニストのピエラヌンツイと長年の盟友だそうだ。安定したプレイぶりだが、ちょっと単調で他の楽器とのバランスも悪い。このプレイだったら、もう少しおとなしくしてほしかった。ドラムスはもう一人いて、ミラヴァッシのトリオのメンバーであるルクミル・ペレスが3曲に参加している。多彩な技と活気のあるプレイで、全曲彼が参加していたら、一段といい出来になった気がする。録音はバランスがよく、ヴォーカルの音像も適切。ということで、tokuの傑作であり、日本人のジャズ・ヴォーカルものとしても、最上位にランク付けされるだろう。youtubeToku In Paris(JAZZ ELEVEN JZE11005)16bit 44.1kHz Flac1.Shanti/TOKU: Love Is Calling You2. Srah Lancmann:She Comes Back Again3. Srah Lancmann:After You4. TOKU:Strollin' In Paris5. I Think I Love You6. TOKU:Nuageux7. TOKU:Be Careful8. Michel Legrand:I Will Wait For You9. TOKU:Still In Love With You10. Srah Lancmann/TOKU:Blue Smoke11. TOKU:ClosingToku(vo,tp,flh)Pierrick Pedronas)Giovanni Mirabassi(P)Thomas Bramerie(b track 1,7,9)Laurent Vernerey(b track 2-6,8,11)Andre “Dede” Ceccarelli(ds track 2-6,8,11)Lukmil Perez(ds track 1,7,9)Sarah Lancman(vo track 8)Recorded 1-7 July,2019 in Paris