Alan Pasqua:Milagro
以前から気になっていたピアニストのアラン・パスカがポストカードに残したアルバム2枚をBandcampから購入。アルカディア・レコードから2022年にリリースされたもので、今年も新しいアルバムがリリースされたがそちらは未購入。今回はそのうちの「Milagro」を取り上げたい。CD自体は1993年にポストカードからリリースされていて、彼の初リーダーアルバムだった。wikiによるとジャズというよりはロック畑での活躍が目立つ。今回のアルバムはボブ・ディランやサンタナとの共演を経て後の録音だが、それらの経験の影響は全く感じられない。41歳という遅い年齢でのデビュー・アルバムだからこそ、満を持して自分のやりたいことをやったという印象を受ける。ビル・エヴァンスやハービーハンコックの影響を受けているそうだ。録音は1993年とほゞ30年前だが、古臭さは皆無。全体に柔らかいムードが漂い、気分がいいアルバムだ。例によってロス・レスなので、192kHzにアップコンバートして試聴。コール・ポーターの「I Love You」と最後のトーマス・ウェステンドルフの「I’ll Take You Home Again, Kathleen}以外はパスカのオリジナルで、佳曲揃いだ。基本ピアノトリオで、ベースのデイブ・ホランドとドラムスのジャック・デジョネットという重量級のメンバーが参加している。4曲でマイケル・ブレッカーのテナーがフィーチャーされていて、その中の2曲はホーンが補強されている。ピアノ・トリオは隙のない演奏をみせる。パスカもデビュー作とは思えない落ち着いたプレイ。サウンドのエッジが立っていないため、特にゆったりとした曲で聞ける、しっとりとしたテイストがいい。速いテンポで驀進する「The Law of Diminishing Returns」は推進力があり、ハンコックの演奏を思い出させる。ブレッカーは円熟期直前で、曲にもよるが耽美的なプレイが目立つ。ホーンを補強した2曲での中ではロジャー・ローゼンバーグのアルト・フルートの起用がはまっている。「Twilight」はホーンのハーモニーに乘って流れるピアノが幻想的な雰囲気を醸し出し、実に心地よい。「Heartland」はラテン的だが落ち着いた演奏で、アルト・フルートの速いパッセージがいいスパイスになっている。スタンダードでは疾走する「I Love You」のキース・ジャレット張りのスタイリッシュな解釈がとても新鮮に感じられた。ベースとドラムスの喰いつきもいい。録音は広がりこそあまりないが、ノイズのないサウンドで古さを感じさせない。ということで、心温まる演奏の好アルバムだった。パスカはリーダー・アルバムが十数枚あるので、折を見てチェックしたい。Alan Pasqua:Milagro(Arkadia Records 7710022)16bit 44.1kHz Flac1.Alan Pasqua:Acoma2.Alan Pasqua:Rio Grande3.Alan Pasqua:A Sleeping Child4.Alan Pasqua:The Law of Diminishing Returns5.Alan Pasqua:Twilight6.Cole Porter:All of You7.Alan Pasqua:Milagro8.Alan Pasqua:L’Inverno9.Alan Pasqua:Heartland10.Thomas Westendorf:I’ll Take You Home Again, Kathleen (for my Kathleen)Alan Pasqua(p)Dave Holland(b)Paul Motian(ds)Michael Brecker(ts track 2,4,5,8)Roger Rosenberg(as tack2,a-fl track5,9)Jack Schatz(tb,b-tb track 2,9)Willie Olenick(tp,flh track 5,9)Roger Rosenberg(as,fl track5,9)Jack Schatz(tb,b-tb track 5,9)John Clark(Hr track 7)Dave Tofani(bcl track 7)Recorded on October 10 and 11, 1993 at Sound Sound, New York City参考