便利屋はドラマ
同じ便利屋を始めた方がいらっしゃいました。ちょうど同じころ ちらしが入り驚きました。大きな荷物の処理や修理などは この方を紹介しようと思いました。そんなこともあってか 彼から 助っ人を頼むと依頼がありました。家の下に投げてあるごみを引き上げるということでした。使い捨ての手袋を何枚も持ち、簡単に洗えるような衣類を身に着けて出かけました。少し町から山に向かった 閑静な住宅街でした。行ってってみると 確かに広くて立派な家の西側は 市の竹林。6,7メートルのがけです。下には竹の中に真っ白にごみが落ちていました。どういう人じゃい 自分のごみを よそに投げちゃうなんてと内心 思いながら 紐で下から吊り上げて片付けていました。お豆腐のトレイ イカのお菓子の包装紙 新聞紙 牛乳パック 石鹸の空き箱植木鉢 タバコの箱 おなべ フライパン・・・そのうち オーブン お皿 座布団などが上がってくるようになりました。これは ちょっと何か事情があるなと思っていると依頼された方が帰って来られました。どろどろになっているごみを見て恐縮されてご自分から積極的に片付けを手伝ってくださいます。話をしながらやっているうちに次第に事情がわかってきました。市や区長さんから 捨てたごみを何とかしてくれといわれていたけれどこの高さでは手も足も出ず 頼むにも頼めなくて・・・やっと頼む方が見つかった ということでした。わたしも たいていのことは やってしまいますが6メートルもあるがけを降りることはできません。もう一人の便利屋さんは 実は 腕相撲の先生ロッククライミングも得意 腕や体全体を常に鍛えばりばりぃ!です。ロープをフェンスにかけ、ロッククライムよろしくするすると降りて行きました。「東さんじゃなきゃ こうできませんね。」実はこの家に住んでいらしたのはお母様。 去年の11月に、亡くなって3日目で、発見されたのだそうです。鎌倉から越して来られて十二年、 3年前にご主人をなくされてお一人暮らしだったそうです。一人になって ご主人との思い出の物に囲まれているのがたまらなかったのでしょうか。ごみの始末に困ってしまったのでしょうか。たかがごみ されどごみそのつど まめに適切に始末しないと大変なことになります。住む人を失って3ヶ月経たないという家の中はがらんとして何もなくきれいで売りに出す前のリフォームにすぐ取り掛かれる状態でした。「弟と子供孝行だよね。と慰めあったんです」とおっしゃるとおりごみを拾い上げるくらいしなくちゃと思いました。どんな思いで 好きな花や お料理を手放していかれたのでしょう。拾い上げた植木鉢をひとつだけいただいて いいお花を植えて供養させていただくことにしました。実のなる万年青(おもと)か夏風にそよぐ風知草を植えようかと思っています。お会いしたこともなく また娘さんにもこれからお会いすることもない家族でしょうが3時間一緒にお母様をしのびながら仕事すると他人と思えません。お母様のご冥福と ご兄弟のお幸せをお祈りしました。便利屋はドラマを垣間見まする。