亀田家のボクシングと言えばKOが魅力の一つ。ライトフライ級からフライ級へ転向した亀田興毅の試合が先日行われたが、「3回で倒す」と言った強気の発言とは裏腹に3-0で判定勝ちを収めたものの、本人に笑顔は戻らなかった。それもその筈で、ランダエタ戦で培ったスタイルは影を潜め、単調な一直線のボクシングに戻ってしまった。口先だけなら何度でもKOは出来るが、それが的外れに終わってしまった時、悔しさと同時にファンの期待も色褪せてくる。昨年の夏、八百長試合と罵られ、精神的にもダメージを受けた彼であるが、それをばねにしチャンピオンベルトを返上してまでフライ級に臨んだわけであるが、最初の試合としては苦いスタートとなったに違いない。ノンタイトル戦という事もあり、場合によっては試合に臨む気持ちのあり方に左右される面もあるだろう。全力を出し切って相手を倒しにかかり、結果的に怪我などしても詰まらないという消極的な面が背景にあっただろうとも思われる。相手の選手もおそらく練習代わりの試合くらいに軽く見ていたかも知れない。将来チャンピオンの座を掛けて戦う相手にもなり得る訳で、自分のボクシングスタイルを相手に見せてしまっては分が悪い。70%程度の力で自分の実力を相手に見せず、様子を伺う試合とも言える。ノンタイトル戦のマイナス面は試合に緊張感が見られないことだろう。だがプロであればタイトルに関係なく自分のスタイルを貫き通すのが一流のファイターでもある。観衆を納得させる試合の難しさ、こと一対一のような格闘技であればなお更である。