カテゴリ:韓国映画
マラソン(2005年韓国)
7月2日公開からずっと気になって見に行きたかった映画。 やっと観に行ってきました。 *ネタばれありです* 自閉症という障害をもちながら、19歳でチュンチョン国際マラソン大会の42.195kmを2時間47分という最年少の記録で完走したペ・ヒョンジンさんという実在の方がモデルとなった映画だ。 身体は20歳だが、精神年齢は5歳のチョウォン。 障害ゆえに、外出をしてもなにかとトラブルが絶えないが、なかなか障害をもっていることを周囲から理解されず、世間の風当たりは冷たい。 そんな中でチョウォンの母・キョンスクは、この障害をもつわが息子を守れるのは自分以外他にいないという強い気持ちで、チョウォンを育ててきた。 「チョウォンより1日長く生きること」これが彼女の願いだ。 そんな母に口答え1つせず、素直で純真なチョウォン。 他の誰にも入り込めないほどの母と息子の関係。 チョウォンの父は居場所のない家庭が原因か、障害児をもつ親という立場に耐えられなかったのか、家にほとんど帰らない父親だった。 また、高校生のチョウォンの弟は、母と兄の関係に孤独感を感じ、心を閉ざしてしまっていた。 チョウォンでいっぱいいっぱいのキョンスクには、夫やもうひとりの息子が何を考えているかなんて、考える余裕がなかったようだ。 障害児をもつ家庭の家族1人1人の苦悩や葛藤がよく描かれていた。 障害を持っているけれど、チョウォンには優れているところもある。 好きなことには、並外れた記憶力を発揮する。 そして、走ることが好き。 走っているときは、他の青年と変わらない。 喜怒哀楽の感情を表すことさえままならないチョウォンだけど、 母だから、わが子が走っているときの目を見ればわかる と、キョンスクは言う。 そして、マラソンを始め、メダルをもらう喜びや達成感を味わわせてあげたいと奮闘することとなる。 キョンスクは元ボストンマラソンの優勝走者・チョンウクにコーチを依頼する。 チョンウクは過去の栄光はみじんもない、飲んだくれの怠惰な男で、コーチの件も報酬目当てに嫌々引き受けた。 しかし、一緒に時を過ごしていくにつれ、純粋に走り続けるチョウォンのことを気にかけるようになり、男同士のつきあいをするようになる。 本格的にマラソンを教えるだけでなく、一緒に酒を飲んだりもした。 コーチとチョウォンの息があってきた頃、キョンスクはコーチを解任したいと言い出す。 自分の知らないところで、チョウォンが自分の知らない世界を覚えてくることが、たまらなくなったのだ。 しかし、せっかくやる気になっていたコーチは、 チョウォンにマラソンをさせるのは親のエゴだ。 彼は楽しくて走ってるわけじゃない! と、強くキョンスクに言う。 チョウォンの育て方に急に自信がなくなるキョンスク。 さらに、次男にも、兄のことばかりで自分をこれまでぞんざいに扱ってきたことに対して攻撃される。 そして、かつて、チョウォンが幼かった頃、育てる自身がなく動物園で彼を捨てようとした、その遠い記憶をチョウォンが覚えていたことにもショックを受け、胃に穴が開いて倒れてしまう。 病床でのキョンスクの言葉も忘れられない。 最初はチョウォンのために… と、必死だったことが、いつのまにか自分の夢となり、生きがいとなっていた。 もうマラソンはさせない。 それからというもの、チョウォンとキョンスク親子の生活から「マラソン」という言葉は消えた。 しかし、チョウォンは忘れていなかった。 走るということ。 そして、10月10日、チュンチョンマラソンの日を…。 コーチからプレゼントされた靴を履いて、誰にも知らせずひとり、マラソン会場行きのバスに乗った。 チョウォンがいないことに気づいた家族とコーチはマラソン会場へ向かった。 キョンスクはチョウォンに走ることを激しく止めたが、やがてスタートを知らせるピストルの音が鳴る。 チョウォンははじめて母に反抗し、自分の「走りたい」という意志で母の手を離し、走り始めた。 そこからはもう、家族、コーチ…。 どこかゆがんでしまっていたみんなの心が、ひたすら走るチョウォンと一緒にまっすぐゴールへとひとつになっていく感じがして、ひたすら涙、涙だった。 もちろん、42.195kmの距離はハンパなものではなかった。 途中ヘタばってリタイア寸前の危機にもなった。 でも、チョウォンが子供の頃から母に教えこまれてきた1つ1つの経験。 コーチにつきあってもらったマラソンの練習で体で感じたこと。 すべてが彼の支えとなり、チョウォンは立ち上がりまた走り出す。 最後に雨が降り、雨の中を嬉しそうに走りすぎるシーンがとても美しかった。 そして、ゴール! 完走した後、「笑う」ということばの意味がわからなかったチョウォンが、はじめて最高の微笑を浮かべた。 チョウォン役のチョ・スンウ、最高でした。 最後のカットの笑顔がさわやかすぎて、しかしながら意味のこもったスマイル…。 本当に演技派の俳優さんです。 この役のために、実話の自閉症の青年とも親しくなり、マラソン大会では一緒に走ったとのこと。 チョ・スンウ作品、実は色々見ている。 「ラブ・ストーリー」、「フーアーユー」、「ワニ&ジュナ」・・・ チョ・スンウの名前をレンタル屋で見つけるとなんだか気になって、その作品を借りてしまっているという不思議な魅力を持っている。 母親のキョンスクはキム・ミスクが演じた。 ドラマ「サラン」で年下の男、チャン・ドンゴンと恋に落ちるがやがて不治の病にかかる、子持ちのキャリアウーマン役だった。 今回の役は母一徹。家庭に対して逃げ腰で全く支えになってくれない夫を諦め、1人でチョウォンの問題を抱え込んで生きているたくましさと、時々抱えきれなくなってしまう痛々しさ、それでも一生懸命に生きている姿が迫真の演技だった。 障害児を抱えるお母さんの気持ちや苦労は私には測り知れないものがある。 しかし、私はこの映画を見ながら、すっかり母の気持ちになってチョウォンを見ていた。 障害あるなしは関係なく、母として、6歳のわが息子を片隅に思いながら見ることもできた。 だから、もう、なんでもないシーンでも泣きっぱなしで…。 特に母の手を少しだけ離れて、コーチと一緒にいる中で、また走ることを通して、ゆるやかではあるが、ちょっとずつ成長していくチョウォンの姿から目が離せなかった。 あっ!こんなことができるようになった!こんな新しいことも…! がんばれ!! と、物陰からこっそり我が子を見守る母のような思いだった。 誰よりも我が子を思っていても、どんなに一生懸命でも、それが空回りして、子供の心を傷つけてしまうこともある。 母だって完璧な人間はいないから仕方がない。 でも、キョンスクがずっとチョウォンを支え続けてきた気持ちが、チョウォンにもなんとなく届いたからこそ、彼は自分の意志で走り、完走することができたのだろうと思う。 やりたいと思っているのにできないこと。 または大好きなこと。 何かを理由にして、何かのせいにしてやらないよりは、やれるだけやってみようよ。 そんな気持ちになります。 また、奇跡と思っているようなことも現実に変えられることがあるんだなと 希望や夢を与えてくれる映画でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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