カテゴリ:ヘンリーナーウェン
おとぎ話と異なり、このたとえ話はハッピーエンドで終わらない。それどころか、人生でもっとも困難な霊的選択の一つに、私たちを直面させる。それは、すべてを赦す神の愛に信頼するか否かという選択だ。その選択ができるのは自分しかいない。 イエスはパリサイ人と律法学者らの「この人は罪人たちを迎えて食事まで一緒にしている」という不満に対し、帰郷した放蕩息子を持ち出すだけでなく、憤慨した兄息子も持ち出して彼らに対抗した。それは決まりごとを順守する宗教家にショックを与えたに違いない。彼らはそこで、自ら述べた不満に直面させられ、罪人たちへの神の愛にどう応えるか、選択せざる得なくなった。 かれらはイエスがしたように、罪人たちと食事を共にしようとしただろうか?それは今も昔も熱心な宗教家にとり、わたしにとり、さらには恨みに捕らわれ、不満一杯の生活に惑わされているすべての人間にとり、真のチャレンジとなる。 自分の中にいる兄息子について思い巡らすほど、現実にそれがいかに深く根をはっているかまた家に帰ることがいかに困難であるか認めるほかない。私の存在ものもっとも奥深くに根を下ろす冷徹な怒りから逃れて家に帰るより、快楽に溺れた生活から逃れて家に帰ることのほうが、ずっと優しいと思われる。私のうちにある恨みは、容易に見分けがついたり、理性的に対処できたりするしろものではなく、はるかに致命的なものだ。それはわたしの美徳とされるものの底に癒着している。 従順で、真面目で、法を忠実に守り、懸命に働き、自己犠牲をいとはないのは、善いことではないだろうか?そうであるにしても、こうした称賛に値する態度と、私の抱く恨みと不満は不可解な結びつきを持っているらしい。この連結によってわたしは絶望させられることが多い。わたしは自分が持っている、もっとも寛容な心から話そう、あるいは行動しようと思う瞬間、怒りと恨みに捕らわれてしまう。まるで、もっとも無私でありたいという願いに、人から愛されたいという思いが取りついているかのようだ。 私が最善を尽くして課題を成し遂げようとするとき、なぜ他の人々は自らを与えないのか、と疑念を抱く。自分はこの誘惑を克服できると考えるその瞬間、誘惑に身をまかせた人々を思って妬む。それはまるでわたしの美徳が存在するところに必ず、恨みに燃えて不満を漏らすもう一人のわたしがいるかのようだ。 ここで、わたしは自分の真の貧しさに直面させられる。わたしには自分の中の恨みつらみを根絶やしにする力がまったくない。それを抜き取ろうとすれば、自分が破壊されてしまうかもしれない、それほどまで、私の内的自己の土壌に、あまりにも深く食い込んでいる。そうすれば恨みの念を、自分の美徳を根こそぎに除去することができるだろう。・・・ 私の内なる兄息子は家に帰ることができるだろうか?弟息子が見出されたようにわたしも回復できるだろうか?不平不満で自分を見失い、嫉妬に駆られ、服従と義務に生きることに奴隷のように捕らわれている時、どうしたら立ち返ることができるだろう? 自分ひとりの力で、自分を見つけられないことは明らかだ。弟息子としていやされるより、兄息子として癒されることのほうがわたしを怖気させる。ここにいたって、自分で自分を購うことが不可能であることを突きつけられたことで、今こそ私はイエスがニコデモに言われた次の言葉の意味を理解する。 「あなたがたは新たに(上から)生まれなければならない」とあなたに言ったことに、驚いてはならない。」ヨハネ3:7 確かに、自分自身で起こし得ないことが起こらなければならない。わたしは下から新たに生まれることはできない。つまり、自分の持てる強さで、自分の思いで、自分の心理学的洞察でそれを実現することはできない。わたしはこのことに、一つも疑いを差し挟まない、というのは、私は過去、自分の抱いた不満を自分で癒そうとひたすら努力しては失敗し、・・・・また失敗し・・・・・そして失敗してきた。ついには、まったくの感情的な破綻ぎりぎりの所まで来て、体の激しい消耗を招いた。私は上からもののでしか癒されない。神が手を差し伸べて下さらなければ、それは起きない。わたしにとって不可能なことも、神には可能だ。 「神には何でもできるからだ」マルコ10:27
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「私の美徳の存在する所に、必ず恨みつらみが存在する。」ということがものすごく伝わってきた。自分にとって善いこと、正しいことに粘着しているこれらの感情は、いつでも顔をのぞかせる。なんといろんな不純物に自分は満ちているんだろうと思う。 しかし、イエスキリストのゆえに感謝します!この方と共に死に渡されたという真理に! ここまで書き綴ってくれたヘンリーナーウェンと、主に心から感謝します。
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