イエスの喜びと満足のために☆

 いまや、兄息子の帰郷は、わたしにとり、弟息子の帰郷以上とは言い切れないが、同じくらい重要なものになっている。兄息子が自分の抱えた不満から自由にされ、怒り、恨み、嫉妬から解き放たれたら、どのような姿を呈するだろうか。たとえ話はそのことについて何も語っていない。そのためわたしたちは、父に聴き従うべきか、自己拒否に捕らわれたままでいるかという選択の前に立たされる。　

　しかし、わたしがその選択について思い巡らしながら、イエスが語り、レンブラントが描いたこの物語全体はわたしの回心のためだと気づいたとき、この話を語られたイエスご自身こそが、弟息子であるだけでなく、兄息子でもあることが、わたしにもはっきり見えてきた。

　イエスは、御父の愛を明らかにし、恨みつらみという束縛から解放するためにきてくださった。イエスがご自身について語ることはすべて、ご自身が愛されている子、すなわち、父との完全な交わりの中で、生きる息子であることを示している。その両者の間に、どんな隔たりも、恐れも、疑いもない。

 　たとえ話の中の父の言葉「子よ、おまえはいつもわたしと一緒にいる。わたしのものは全部お前のものだ。」は、子であるイエスとの真の関係を表している。イエスは一貫して、父に属するすべての栄光が、子にも属していることを同意なさっている。「父がなさることは何でも、子もその通りにする。」（ヨハネ５：１９）「私と父は一つである」（ヨハネ１０：３０）とあるように、そこにはいかなる分裂もない。「御父は御子を愛して、その手にすべてをゆだねられた」（ヨハネ３：３５）とあるように、その御業はいかなる分断もない。「父から聞いたことをすべてあなた方に知らせたからである。」（ヨハネ１５：１５）とあるように、いかなる競争もない。「子は父のなさることを見なければ、自分からは何事もできない」（ヨハネ５：１９）とあるように、いかなるねたみもない。

　父と子の間には、完全な一致がある。この一致は次のイエスのメッセージの中心がある。

　「わたしが父の内におり、父がわたしの内におられると、わたしが言うのを信じなさい。」（ヨハネ１４：１１）イエスを信じるとは、いえすのは御父から遣わされた方であり、その存在を通して、御父の愛があますところなく示されていることを信じることである。（ヨハネ5：24、、６：４０、１６：２７、１７：８）

　このことはイエスご自身が語った、「悪い小作人の話」の中でドラマチックに表されている。畑の所有者は収穫の分け前を受け取るために、何人かの僕をぶどう園に遣わしたが、無駄に終わった。そこで、「愛する息子」を遣わすことに決めた。小作人たちは、彼が跡継ぎであることを知り、相続財産を手に入れようとして、彼を殺した。この物語は、父に従い、奴隷としてではなく、愛されている息子として、父と完全な一致の内に父の意思を成し遂げたまことの息子を描いている。

　このようにイエスは、御父の兄息子である。父がイエスを遣わされたのは、恨みに捕らわれたすべての子供たちに、神の辛抱強い愛を示し、家に帰るための道としてご自身を差し出すためである。イエスは不可能を可能とする道、～闇に打ち勝つ光をもたらす神の備えられた道である。恨みと不満は、いかにそれが深刻であろうと、光を満面に輝かせた神の息子、イエスの顔に接して、消え去る。

レンブラントの描いた兄息子にふたたび目を向けると、その顔を照らす冷たい光は、深みのある、温かいものへと転じつつ～すっかり彼を変容させながら～彼を本来の姿に変え得る光であることに気づく。すなわち、「神の愛する子、神の心に適う者」へと。