カテゴリ:ヘンリーナーウェン
「フライング・ロッドレー」という空中ブランコ芸人は、シモネバルムというドイツのサーカスで芸を見せています。二年前にこのサーカスがフリーバーグに来た時に、友人のフランツとレニーがそのショーに父と私を招待してくれました。その芸人たちが空中を飛び回り、華麗なダンサーのようにお互いを飛ばしたり、掴んだりしているのを見た時、その光景にとり付かれたことを忘れられません。翌日、私はもう一度彼らに会うためにサーカスを訪れ、彼らの絶大なファンの一人として自己紹介しました。彼らの予行練習に招いてくれたり、招待券をくれたり、一緒に食事に招いたりしたほかに、いつか一週間ほど彼らと旅をすうrことも勧めてくれました。私は招かれるままに一緒に過ごし、親しい友人となりました。 ある日、私はその一座のリーダーであるロッドレーと一緒にキャラバンの中に座り、空中を飛ぶことについて話していました。 「飛ぶ者として、私は自分を掴んでくれる人を完全に信頼しなければならないんです。観客は私を空中ブランコの曲芸の偉大なスターだとおもっているのかもしれませんが、本当のスターは私を掴んでくれるジョーなのです。ジョーは秒刻みの正確な決断を持って私をく空中で掴み、私は安心して長いジャンプをするのです。」 「どうしてそんなにうまくいくのですか?」 と私は尋ねました。 「その秘密は、飛ぶ方の人はなにもせず、掴まえる人がすべてをするということです。ジョーに向かって飛ぶ時、私は腕と手を伸ばして、彼が私を掴み、握り棒の向こうの張り出しに安全に引っ張り込むのを待つだけなのです。」 とロッドレーは言いました。 「あなたは何もしないのですか?」 と私は驚いていいました。 「何もしません」 とロッドレーはもう一度言うのです。 「飛ぶ方の人がする最悪のことは、掴む人の手を掴もうとすることですよ。私はジョーの手を掴まえてはならないのです。私を掴まえるのは、ジョーの責任なのです。もしも、私がジョーの手を掴んだならば、それを折ってしまうかもしれないし、反対に彼が私の手首を折ってしまうかもしれない。そうしたら、二人はもうおしまいです。飛ぶ人は、飛ぶだけ。掴む人は掴むだけ。そして飛ぶ人は腕を伸ばして、掴んでくれることを信頼してとぶのです。」 ロッドレーが確信を持ってこう話したとき、イエスの言葉が頭をよぎりました。 「父よ、あなたの御手に私の霊を委ねます」 死ぬと言うことは、掴まえてくれる人を信頼することです。死に向かっている人に対して言うことは「恐れてはなりませんよ。あなたが神の最愛の子だということを思い出してください。あなたがその長いジャンプをする時に、必ず神はそこにいてくれます。彼を掴もうとしてはなりません。神があなたを掴んでくれるのですからね。ただ腕と手御伸ばして信頼しなさい。信頼です。信頼するのです。」 空中ブランコがあのように美しい、優雅な弧を描くことができるのは、バーから手を離して飛ぶことに、パートナーのしっかりした手が必ず自分を掴んでくれると信頼しているからです。そして次の段階に移れるのだと分かっているのです。キャッチしてもらうためにはそうしなければなりません。何も無い空間に、勇敢に身を投げ出さなくてはならないのです。 *☆*――*☆*――*☆*――*☆*――*☆*――*☆* これは死に際してだけのメッセージではありません。 信仰の秘訣であり、人生の一こま一こまの中で、経験する十字架の死も同じなのです。 掴んでいるバーを手・放・す・時、あなたの手を受け止め、しっかりと掴んでくれる御手を経験します。 さらにナーウェンは語ります。 ☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆ いろいろな面で物事を思い通りに操作しようと執着し、自分の人生を握り締めようとすればするほど、私たちは喪失という現実を否定せざるを得なくなり、自分の人生に対する態度は、より作り事めいてきます。必要なものはしっかり握っているべきだという信念は、苦悩を生み出す大きな源のひとつになります。しかし、所有物や計画、人々への執着を手放すなら、すべてにリスクは伴うものの、新しい、期待を超える人生に踏み出すようになります。 では、どうしたら前向きに手放すことができるでしょうか。嘆きが踊りに変わるためのステップを、いま一歩踏み出すためにすべきことは何でしょう。それは、自分の所有物を握り締めるのでなく、休息できる安全な場所を守ろうとするのでもなく、、自分や他の人の人生に振りつけようとするのでもなく、愛してくださる神に服従し、従うということにかかわってきます。神は、私たちを信仰へと招待するために、物事を操作しない経験をするようにと招いておられるのです。
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最終更新日
2008年10月14日 11時02分50秒
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