イエスの喜びと満足のために☆

　　ところで、癒しの奇跡をどう考えたらいいでしょうか。目の見えない人は見え、ハンセン病を病む人は清くなり、中風の人は歩けるようになり、夫を亡くした女性は息子がよみがえるのを見たのではないですか?それは意味あることではないのですか?神は神であり、この方が私たちを本当に愛しておられることを証明することではないのですか?

　私たちの実用主義に細心の注意を払いましょう。イエスが人を癒されたのは、彼の憐れみからでした。彼はご自分の神性の証明とか、人間に感動を起こさせるためとか、納得させるために癒しを行われたのではありません。そのいやしは、彼が私たちの神であることを示す自然な表現なのです。

　この神の愛の神秘は、私たちの苦痛をとり除くことではなく、何よりも望んでおられるのは私たちと共にそれらを分かち合うことなのです。この神の連帯から、新たないのちが生まれてきます。人間の苦痛によって、その存在の中心から揺り動かされたイエスの存在そのものが、実は新しいいのちへ向かう動きなのです。神は私たちの神であり、生きている者の神です。その神の胎内で、いのちは常に繰り返し生まれるのです。この偉大な神秘は癒しではなく、むしろ、それらの源となる限りない憐れみなのです。

　私たちはあわれみの心からなされたのではないいやしとはどんなことか、知る過ぎるほど知っています。再び歩けるようになったり、見えるようになったり、ものが言えるようになった男女を見てきましたが、その人たちの心は暗く、陰鬱なままです。その人のことを本当に思うからではない癒しは、光ではなく闇へと導く、偽の癒しであることもよく知っています。新たないのちへの近道があるかのように自分をだまさないようにしましょう。

　福音書の中に記されたイエスのたくさんのいやしは、彼が、私たちと共にいるという事実から決して切り離すことはできません。それらは、イエスの神としての憐れみの限りない豊かさを立証すると同時に、わたしたちの状態と連帯した美しい実りを示しています。真の福音とは、神が遠くはなれた神ではなく、恐れられ、敬遠される神でもなければ、復讐の神でもなく、私たちの苦痛に心を動かされ、しかも、人間の苦悩に全面的にかかわられる神であるということです。福音書の中の奇跡的治癒は、私たちの誠の慰めであり安らぎでもある、希望に満ちた喜ばしい、このよき訪れを思い出させるものなのです。

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　何よりも望んでおられるのは、私たちと共にそれらを分かち合うこと・・。私たちとの深いかかわりの中にまで降られる神。

　神が神として、苦痛を取り除いてくれればいい、という私たちの自分中心の思いとは、なんとかけ離れていることだろう。それらを分かち合うという、同じ痛みの中に降りてきてくださった、それはへりくだられ、仕える者の姿をとられた主のご性質そのものなのです。ただ単に苦痛を取り除いてあげたい、助けてあげたいという思いは、私たちと同じ所にいるのではなく、こちらとあちら、というへだたりがある言葉なのだということを気づかれないでしょうか。

主の名は「インマヌエル」と語られました。それは私たちの同じ痛みの中に、同じ苦難の場所に、いえ、私たちの痛みと一つに溶け合ってしまうところまで降りてこられたという、へりくだられた神の名、そして、同じところにということ以上に、

全く同じ場所に共にとどまることを通して、全くの無力さの内に共・に・とどまり、十字架の死が働くその場所へと共・に・導き、新たないのち、キリストと共・に・新たないのちの領域へ、復活へと導いてくださる。主がすでに成し遂げてくださった霊的事実の中へと共・に・導いてくださる。その名が「インマヌエル」と信じます。

　私たちにお与えくださった「インマヌエル」という名に込められた神の愛の決心、へりくだり、深さ、またゆえに苦悩を感じ、驚嘆します。

　すべてのことの中に、共にいてくださる。共にいてくださるということの意味をなんと上っ面に捉えてきたことかと思います。

　今の生活の真っ只中で、妊婦が胎の子のいのちを感じ取り、いのちの成長を喜ぶように、主のいのちが内に胎動している、そのいのちを感じることの喜びに導きいれてくださる。

「自分を捨て、自分の十字架を負い、そして私についてきなさい。」との呼びかけは、いのちの深みへとみちびく神からの招きであると確信します。