私は、大胆に、キリストを信じますと、大声で告白できなかった。
そうだ、私は、自分がクリスチャンであると、告白すべきだった。
今、セントヘレナにあって、もはや遠慮する必要はない。
私の心の底に信じていた事実を告白する。
私は、永遠の神が存在していることを信じる。
その方に比べると、バートランド大将よ、貴方はただの元首に過ぎない。
私の天才的なすべての能力をもってしても、このお方と比較する時、私は無である。
完全に無の存在である。
私は、永遠の神キリストを認める。
私は、キリストを必要とする。
私は、キリストを信ずる。
私は、今セントヘレナの島につながれている。
一体誰が、今日私のために戦って死んでくれるだろうか。
誰が、私のことを思ってくれているだろうか。
私のために、死力を尽くしてくれる者が今あるだろうか。
昨日の我が友はいずこへ。
ローマの皇帝カイザルもアレクサンダー大王も忘れられてしまった。
私とて同様である。
これが、大ナポレオンとあがめられた私の最後である。
イエス・キリストの永遠の支配と、大ナポレオンと呼ばれた私の間には、大きな深い隔たりがある。
キリストは愛され、キリストは礼拝され、キリストへの信仰と献身は、全世界を包んでいる。
これを、死んでしまったキリストと呼ぶことが出来ようか。
イエス・キリストは、永遠の生ける神であることの証明である。
私ナポレオンは、力の上に帝国を築こうとして失敗した。
イエス・キリストは、愛の上に彼の王国を打ち立てている。