『冬の終り春の初め』
昔、ワタシの知り合いが、ライヴに行くなら、出演者が多いバンド(ユニット)を聴きたいそのわけは、音の調和とかバランスとか、とにかく音が多ければそれを楽しむことが出来るからだからソロとかデュオとかトリオとかはツマラナイのが多いというニュアンスのことを言ってたことがあった。あえて反論はしなかったが、同意することは絶対に出来なかった。今日みたいなライヴが世の中に存在する限り。青木タイセイさん(tb,pf,pianica,e-bass,bamboo-flute)と内橋和久さん(g)の初顔合わせ。それは下北沢LadyJaneでのできごと。基本的にこの店はジャズ・バーなので、飲み屋さんで日曜日だけライヴ、というカンジなのだが、ライヴタイムはとても大切にされてて、しかも出演者との距離もめっちゃ近く、それこそ少人数のライヴにはうってつけ。小さくて繊細な音もきちんと聴こえる。座ったところが内橋さんかよく見える位置だったから、ここぞとばかりに内橋さんの手元ばっかり見てた(笑)。滅多に見られないものぉ(笑)。様々なエフェクツを使って次々に音を重ね創り出していく様は、まるで魔法使い(笑)。7年ぐらい前、初めて生でアルタード・ステイツ(内橋和久・ナスノミツル・芳垣安洋)を聴いた時にも、「すげー!魔法みたい」と思ったなぁ。ワタシはそんなに詳しくもないし、さほど多くのギタリストを知らないけど、エレクトリック・ギターがこんなに表現豊かなものなのか、ギターってここまで出来るのか、ってことを思い知らされる数少ない日本人ギタリストだと思う。貫禄というか余裕というか…あらためて思うけど、インプロヴィゼーションって熟練の職人技なんだなぁ。タイセイさんもエフェクツや小道具(!?)を使い、たくさんの楽器で音をどんどん編みこんで曲という形にしていく。内橋さんのギターと交ざるととてもキレイ。トロンボーンの音がとても優しかった。冒頭とセカンドセットの1曲でのフレーズに新鮮な部分あり。(泣けてしまいそうなフレーズでした・笑)いつものエレベともうひとつ、初めて見るベースギターの音色もキレイ。初めてのDUOとは思えないほど勝手知ったる…といってもプロのミュージシャンならフツーなのかなぁ(笑)?それにしてもカッコイイよ。おふたりの(ふたりだけとは思えない)重ねられた音の数々は、今夜だけの儚い数曲になり、なにかの映像とか景色とかがアタマの裏に見えてくるようで、しかも自分がその中にいるようで終わった時には、夢から覚めたときの感覚にとても似ていた。