カテゴリ:とにかく印象が鮮烈☆
最終行の壮絶さに、言葉をなくしてしまう。 この一文に、作者である三島由紀夫の最期を思い浮かべてしまう人は 少なくないのでは…と思います。 もしも転生することが叶うなら、 人は「決して同じ過ちだけは繰り返したくない」と望むのではないかしら。 転生したといっても前世の記憶を持って生まれ変われるわけではないし、 育つ環境や受ける教育によって、性格すら以前と違うものになる 可能性もあるけれど。 それでも、魂の根本的な部分だけは変わらずに、何度も何度も 同じものを望んでしまうなら…それは何て残酷な仕打ちだろうと思う。 『春の雪』の松枝清顕が自身の理想とする恋に殉じたなら、 『奔馬』の飯沼勲は自身の理想とする志・その果てにある死を ただまっすぐに欲していく。 考えを同じくする同志達と共に政府・財界の要人を暗殺した後は 自刃して果てたい…そんな勲の心情に、自己陶酔の気を感じないといえば 嘘になるけれども、その思いが純粋であろうとすればするほどに どんどん深みに嵌っていき…前世と同じ轍を踏もうとしている様は哀しい。 それはただ一人、転生の秘密を知る本多繁邦の無念にも重なって 読んでいて歯痒くなってくるほどです。 彼を救いたいと思えば思うほどに、彼は巧みにその思いをすり抜けて 自らの理想に殉じていってしまう。 鮮やかな印象だけを記憶に残されて、ただ観察者・傍観者としての 役割しか与えられないということに(読者を含め)、虚しさを覚えない人間が 果たしているんだろうか。 悔しさと、羨望と、嫉妬のない混じった気持ちのまま 物語は「豊饒の海 第三部『暁の寺』」に進みます。 うううう、年内に「豊穣の海」四部作を読み終わりたいなあ。 10月29日からは映画『春の雪』が公開になります。 『春の海』を読み終えた直後は 「三島由紀夫の文章との隔たりを観るのは何だかな~」と思っていたけど 『奔馬』を読み終えた今は 「見届けてみたい」という気持ちに変わりつつあったりして…。 ちょっと公開日が待ち遠しかったりします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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